第23話 「生きろ」



 誰も言葉が出なかった。

 突然の出来事に状況を理解する人間はロイただ独りだった。

 

 ――泣き言は無しだ。最後くらい文句言わずに、カッコつけるぜ!


 ロイは想像を絶する痛みに耐えながら、ゆっくりとコウキから離れて頬に触れた。

 じくじくと命が削れる感覚の後にほとんど目が見えなくなった。


 それでも、もう一度だけ親友の顔が見たい。

 確かめるようにコウキに手を伸ばす。


 ――ボクは、オマエを悲しませないために生まれてきた気がするよ。


 触れた指が小刻みに揺れる。


 ――きっとこの日のためにモナはボクを繋げたんだ。


 手の感触でコウキの驚く表情を知る。

 見えなくてもロイにはそれが分かった。


――バカみてーな顔だ。


「生きろ」


 言葉を残し、ロイは絶命した。

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