第21話 ラッキースケベとは

宇佐美を部屋で寝かせた後、アニメを見ているとラッキースケベのシーンが流れてきた。ラブコメなんかにありがちな展開で、主人公の不注意やヒロインが部屋に居るのを、主人公に報告するのを忘れて起こる事が多いやつだ。


基本的には着替えてる最中に主人公がドアを開けて見てしまったり、転けた拍子に胸に手が言って揉んでしまったりするあれだ。


個人的にラッキースケベはまだ分かるのだが、それに遭遇した後地蔵の様にその場に固まって、ヒロインからの制裁待ちをするのが多いのは何故なのだろうか…


例えばドアを開けたら下着姿のヒロインが居るというラッキースケベなら、すぐにドアを閉めればまだマシになると思うのだが…俺ならすぐに閉めるだろう


そんな事を思っていると、宇佐美とそういったラッキースケベ的な事が起きていない事を思い出す。


宇佐美は毎回浴室を使う時は一声かけてくれるし、着替えや洗濯物の下着類とかは自分の部屋で干してくれている。


俺も気をつけていて、リビングとかに宇佐美が居なくて浴室の扉を開ける前は必ずノックをするし、一人暮らしになってからトイレの鍵は、他に誰も居ないのだからとしていない時期があったが、今は気をつけている。


(あ、服…洗うか)

アニメを見ているとふと思い出した。今日は体育もあったので体育着を洗わないとだ。俺は洗濯する服が入ったカゴを洗濯機の前まで持っていき、服と洗剤を入れて、横に並べられた同じ会社の、色んな種類の柔軟剤の中から気分で1つ手に取る。


「今日はこれにするか」


すぐに柔軟剤のキャップを回して、洗濯機に表示された分を注ぎ始めると、傾け過ぎたのか一気に飛び出てきて、勢い良く出てきた柔軟剤は少しキャップを飛び越えて指にかかってしまった。


(あ、やべ…指についた…)

柔軟剤の少しベトベトした感覚が指に着いてしまい、思わずティッシュを探すが脱衣室には置いてなかった。


ティッシュを取りにリビングに向かおうとすると同時に、浴室の扉が開く。宇佐美が俺に気づくと、すぐに柔軟剤が手に着いているのに気づき、何か見てはいけない物を見たかのような反応をし始めた。


今までなかなか見ない宇佐美の表情で、困惑なのか、照れているのか、すぐに耳を赤くして扉をまた締めた。


「あ…ごめん……わざとじゃない…///」


(ん…?そんな謝る事か?)


お互い別に見られて気まずい状態じゃ無いはずだ…当然服はちゃんと着てるし、洗濯機を回しただけだし、それは単なる日常。いつもの事以外があるとしたら、柔軟剤が指についた事?


白い液体が指にかかって……あ…


気づいてしまった。何も知らずにこれを見たら、あれに見間違えてしまうのは、可能性として有り得る。柔軟剤のケースも既に置いてたし、柔軟剤の事だと分からなくても不思議じゃない…


俺は急いで宇佐美を追う。リビングには居ないし、宇佐美の部屋だろう…俺は初めてノックもせずにドアを開けて、ベッドで掛け布団を被って寝たフリをして隠れている宇佐美に慌てて説明する。


掛け布団を引き剥がそうとするが、宇佐美が掴んでいて引き剥がせない…


「違う違う!!これ柔軟剤だから!!ほら、嗅いでみたらわかる!!」

「分かってるから…!そういうのしたくなるのは分かるから…///気にしないでしてて!」

「違うって本当に!柔軟剤だから!ほら、匂い嗅いで!!」

「わ、分かったから!!もう分かったから!!」


そう言いながら柔軟剤(宇佐美からすれば精〇)を宇佐美の顔に近づけているのに気づいて、1度距離を取る。


(どんなプレイだよ…指にかかった匂い嗅がせるって……いや柔軟剤だよ!?)


「……ティッシュ貰っていい?」

「……良いよ」

「本当に違うんだよ…柔軟剤零れて指について…」


そう言いながら柔軟剤を拭いたティッシュを宇佐美の部屋のゴミ箱に捨てようとしたが、1度勘違いしたものを拭いたティッシュが自分の部屋で捨てられるのは嫌だろうと思い、自分の部屋に行ってゴミ箱に捨てる。


また宇佐美の部屋に戻ってくるとある程度落ち着いたのか、ベッドから起き上がっていた。


(風邪引いてるんだよな…宇佐美)

「ごめん宇佐美…変に勘違いさせちゃって」

「私こそごめんね……なんか風邪で頭回んなくて」

「一応言っとくけど本当に柔軟剤だから…」

「……じゃあ嗅がせて」

「え…あぁ…」


(良いのか…?なんか急にダメな事してる感じしてきた…いや柔軟剤だから…)


そう言い聞かせる様にして、柔軟剤が着いていた指を宇佐美の鼻に近づける。宇佐美はすんすんと空気を吸うと、少し微笑んだ。


「……風邪で鼻詰まってて分かんない」

「コントのオチ?」

「ふふ、ごめん。でも柔軟剤なのはちょっと匂いしたから分かった…」

「とりあえず誤解が解けて良かった…」

「うん…お風呂、私が先に入って良い?」

「うん、良いよ。俺がお湯溜めるから休んでて」

「ありがと…」


俺は宇佐美の部屋から出て、お風呂のお湯を溜める。お湯が溜まった音楽がなってすぐに、宇佐美は脱衣室へ入っていった。


俺も自分の部屋に戻って溜まった息を吐く。

「はぁ…なんかまた疲れた…」


(あんなラッキースケベ回避不可能だろ…ていうかあれはラッキースケベなのか?)


その後はもう疲れてしまい、宇佐美がお風呂から上がってからシャワーだけを浴びて、髪乾かしたり、歯を磨いたりしてすぐに寝てしまった。

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学年1の美少女は俺の同居人〜気づいたら俺好みになっていた〜 Reraiado @Reraia

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