第5話 出場競技決定!(またまた新キャラです)
今日は体育祭の出場する競技決めの日だ。もう当然かのように、今日も宇佐美に起こされて学校に行く準備をする。
学校に着くといよいよ出場する競技決めがあるからか、教室内は少しざわついていた。そんな空気を見て、俺も緊張し始めてしまった。俺結構緊張に弱いタイプなんだよな…
荷物を置こうと、自分の机に向かって歩いていると、竹内は俺の前に腕を出して、進ませないようにして、笑顔で声をかけられる。
「選抜リレー、出てくれるよね〜?」
「まぁ…」
こんな時にもしっかり最終確認をしてきた。竹内は体育委員なので、ちゃんと仕事をしていると言えるだろう。雰囲気はふわふわしてんだけどな〜…なんか面倒になってきた…でも今更断るのは竹内達に迷惑をかけてしまうので、昨日OKしてしまった以上責任は取るしかない。それに宇佐美が個人的に応援してくれるらしいし。
体育祭は同じ学年のクラスで、1位を争い合う形だ。俺たちの学年は1年が6クラスあり、それを色んな競技で競って順位を決める。
朝のホームルームの時間になり、体育委員の竹内と佐々木が前に出て、出場する種目を聞いていく。やはり借り物は、あまり運動が得意では無い陽キャ寄りの女子や、男子が多かった。綱引きもあったのだが、これには普段あまり色んな人とは喋らない、運動が苦手な陰キャ寄りの女子と男子が多かった。
確かに借り物は運動する系では無いが、知らない人に声をかける可能性があるし、そう考えるとハードルは高い…俺もリレーに出なかったら、負けても責任は何十人かで分け合える綱引きにしているだろう。
そして応援合戦は、クラスでも特に陽キャ寄りの人達がやる事になった。
そして肝心の選抜リレー。俺はここまでどの競技にも立候補していないので、これに出るしか無い。
「最後にクラス対抗選抜リレーね〜。一応聞いとくけど、出たいって人は手挙げて〜」
ゆるい雰囲気の竹内が念の為確認を取るが、教室内は静まり返った。そりゃそんな大舞台に自分から出たいと思う人は少ないだろう。
「じゃあ私が事前に声をかけた人、手を挙げて」
竹内がそう言うと、男子からは佐々木や田中も挙手をした、佐々木はサッカー部、田中は野球部で勿論運動が出来て足も速い。他には佐々木と同じサッカー部の伊東と、陸上部の川野と木下。そして俺だ。ん?なんかどの部活にも所属してない奴が居るな。
そんな事は置いておいて、男子の中で足が速い順は、1位:
恐らく川野がアンカーをするので、俺は途中の脇役だ。アンカーというだけでかなり注目されるので、アンカーはやりたく無かったが川野が居てくれて良かった。
女子からは、竹内、伊織、橘の3人がやはり挙手をした。そして他には竹内と同じバスケ部の鈴木美桜と、橘と同じバレー部の長谷川寧々。そしてソフトテニス部の斎藤静香。
うちのクラスの女子の中で、陸上部に入っている人は居なかったが、さほど心配はしていない。そもそも1年の女子陸上部が4人程しか居ないらしく、足が速い人が2人しか居ないのだ。そしてその2人のタイムは竹内とほぼ同じ。
女子の足の速い順は、1位:
そして重要な走る順番についてだが、足の速い人を最後の方に持っていく事に決まった。男子の次は女子、女子の次は男子という風に交代で走る。
そして最終的な順番が、アンカーを男子にする為に女子が最初になり、1番目が
俺は橘からバトンを受け取って、竹内にバトンを渡す形になった。
これでクラス全員の出る種目も決まり、あとは本番に向けて練習をするだけだ。体育の授業で動きの確認等をするらしい。応援合戦、綱引き、借り物、リレーの練習は実際にはやらず、入退場の練習や、流れの確認だけの様だ。前日のリハーサルでだけ、競技の練習は出来るらしい。そしてたまに全体練習で、全学年合同で開会式と閉会式の動きの確認をする。
そんな感じで体育祭についてはっきりと決まり、クラス全体が優勝に向けて練習し始めた。
「ねぇ梅野」
「ん?」
昼休みになると、竹内に声をかけられた。どうやら放課後に、リレーのバトン渡しの練習がしたいらしい。一瞬出るか迷ったが、選抜リレーに出るからには、責任を持って練習をしておきたい。俺が承諾すると、そのまま流れで橘や伊織達と一緒に昼飯を食べた。
放課後になったので、佐々木や田中と更衣室に向かう。念の為宇佐美に一言連絡を入れておく事にした。
『今から選抜リレーの練習するから、先に帰ってて良いよ』
俺はメッセージを送った後、すぐにスマホを置いて体育着に着替え、校庭に移動した。なんとも驚きなのだが、選抜リレーに出る12人全員が、竹内の招集により既に来ていた。
「すげ〜全員居るわ」
「私、凄いでしょ〜」
「優香マジ凄いわ〜」
「うわめっちゃドヤ顔してるよこの人」
その後は何回かバトン渡しの練習をして、16時半頃には練習も終わり解散になった。他のクラスの人達もバトン渡しの練習はしていて、各クラス6人程は居たが流石に全員来ているのは俺達のクラス以外居なかった。
更衣室で着替えるより先に、宇佐美の返信が来ていないか確認する為にスマホを開くと、宇佐美から1件ずつ時間を空けて返信が来ていた。
『おっけ〜!!夜ご飯はカレーで良い?』
『もうカレーに決めた!!』
練習で返信出来なかったので、俺の返信が来なかった事により少し怒っているのか、プンプンした表情の絵文字も付けて1人で勝手に決めていた。宇佐美のそのメッセージは、女子高生特有の可愛らしさがあった。
『分かった。ありがとう』
とりあえず返信をして、今日は竹内と橘と伊織、そして俺と田中と佐々木で駅まで向かった。他の人達は別の駅に行くらしく、また近い内にバトン渡しの練習する事を約束し、そのまま学校で別れた。
18時頃に家に着いて、玄関で靴を脱いでいると、カレーの良い匂いが漂ってきた。
「すげぇ良い匂いする」
「あ、夜ご飯勝手に決めてよかった?」
「全然いいよ。ありがと、ご飯作ってくれて」
そして家について30分もしない内には宇佐美の作ったカレーが完成し、一緒に夜ご飯を食べる。宇佐美の作ったカレーは、お母さんが作るのとはまた違った美味しさがあった。
「そういえば宇佐美は体育祭何に出るか決まった?」
「私は借り物競争!梅野は選抜リレーだけ?」
「うん、選抜リレーだけかな。女子だと竹内とか橘とか伊織とか出るよ。樋口は選抜出るの?」
「奈央選抜出るよ!女子の最後!!」
「マジか、なら竹内と対決じゃん」
「優香と一緒か〜どっちが勝つんだろ」
「楽しみだな」
「ね!!」
宇佐美は体育祭が楽しみなのか、少し上機嫌でカレーを食べている。やはりこういった事は好きなタイプなのだろうか。
「そういや体育祭は宇佐美のお母さんとか来る?」
「あ〜…どうだろ…後で聞いてみる!!」
宇佐美の母親が体育祭に来る事は、もしかしたら嫌かもしれないと言う心配があったが、それは杞憂に終わった。宇佐美はあまり否定的では無く、むしろ少し来てほしそうな感じもしていた。宇佐美の母親には、宇佐美が学校で友達が出来てきた事も知って欲しいので、俺としても是非来て欲しい。
2人とも夜ご飯を食べ終わり、食器を洗っていると、宇佐美が壁からひょこっとスマホと顔を出して覗いてきた。
「お母さん来るって!!」
「お、そっか良かったな」
「あと、茂雄さん…?も一緒に連れてきて良いかだって」
茂雄さんとは、宇佐美の母親の再婚予定の相手だ。体育祭という特別なイベントを茂雄さんにも見せたいのだろう。それにあれから数日が経っているので、また改めて会わせたい気持ちもあるのだと思う。
「宇佐美的にはどうなんだ?」
「う〜ん…梅野と一緒なら…」
「そっか、俺は全然良いよ」
「分かった!!ならOKするね!」
宇佐美の母親とは会ったことがあるが、茂雄さんとはまだ会った事が無い。それにまだ結婚してないとはいえ、1ヶ月泊まっている相手の顔は見ておきたいだろう。
だからと言って初対面の俺に、まだ結婚もしていない他人が、宇佐美を泊めている事を強く辞めるように言ってきたら、それは黒寄りになってしまう。
宇佐美茜を目当てに結婚しているのでは無いかと…そんな事あるはずが無いが、そういった心配は念の為しておいた方が良い。
◇ ◇ ◇
次の日はバトン渡しの練習が無く、すぐに家に帰ってきたので、宇佐美には連絡を入れ、体育祭に向けて体を動かす為に近くの体育館に来た。
18時までは誰でもバスケが出来るので、少しでも体を動かして動きを軽くしておきたい。
体育館に入ると、既に居るのは1人しか居なかった。しかも女の子だ。一瞬樋口かと思う様な黒髪のボブヘアだが、樋口は外巻きボブ。あの人はストレートボブだった。ていうかあの人見た事ある気がする。
俺がシュートを打ち始めて10分程すると、どこからか視線を感じた…いや視線を向けているのは1人しか居ないのだが…そしてすぐにその女の子は声をかけてきた。
「ねぇ、あんた梅野でしょ」
「そうだけど…なんで知ってんの?」
「私1ーCの
宇佐美の事を茜と呼んでいるし、宇佐美から俺の事を聞いているという事は、ある程度仲が良いのだろう。
「あ、そうなんだ!ごめん、まだ他のクラスはあんま知らなくて」
「良いよ別に」
「で〜…なんか用?」
「1on1してくんね?」
どうやら俺に話しかけてきたのは、相手が欲しかったからの様だった。というか、これまた近くで見ると可愛い女子だわ。かなりクール系な感じっぽい。俺の通ってる学校には可愛い女子しか居ないのだろうか…最近関わり始めた人みんな可愛い気がするが。
「別に良いけど…俺バスケ未経験だよ?習った事無いし」
「ほんとに?さっきから普通にレッグスルーとかしてんじゃん」
俺は念の為未経験だと言う事を伝えると、井上はかなり訝しんだ表情で見つめてきた。
「まぁ良いや、相手してよ」
「分かった。じゃあそっち先攻で良いよ」
俺は自分のボールを端に置いて、ディフェンスから始める。本当に習った事なんて無く、完全に独学の趣味でやっているので、ディフェンスのやり方や試合での動き方等は全く分からない。
そしてスリーポイントラインよりも後ろから始めた。井上は、何回かレッグスルーした後、右に一気にドライブして抜きに来た。その際に少し身体が当たってしまい、変に意識をしてしまって距離を離してしまった。そして井上はその隙を見逃さずにレイアップを決めた。
すぐにまた、井上の攻撃でまた潜り込む様にドライブしてくる。次は抜かれないようにちゃんとディフェンスをして、シュートモーションに入った井上のボールに向けて手を伸ばす。井上のシュートはリングに当たって外れて、次は俺の攻撃になり、スリーポイントラインまで下がって再開する。
何度かレッグスルーをして、右手に来たタイミングで左足を出して右側に1歩踏み込む。俺のフェイントにかなり食いついた井上を見て、そこから右手でバウンドさせたボールを、左手で持って右斜め後ろにステップバックの、スリーポイント。
俺の投げたスリーポイントは綺麗な放物線でネットを揺らした。
「ほんとに未経験なんだよね?」
「マジで未経験。中学の時にバスケ流行ってたから」
俺が中学の時には、近くに無料でバスケが出来る場所があったので、放課後遊ぶなら大体バスケだった。それを3年間も続けていれば流石にある程度上手くもなるだろう。
得点を決めたので、また俺の攻撃だ。井上はスリーを警戒してか、さっきよりも距離を詰めたディフェンスをしてくる。
レッグスルーで左手にボールが来たタイミングで、左手を浮いているボールの真横に入れて、右腕を曲げて俺とボールの間に入れる。そして、同時に顔を上げて膝を曲げた。井上はそれを見て更に距離を詰めて、右足を1歩踏み込んできた。
それを見て膝を伸ばす勢いをジャンプでは無く、前に行く力に変えて一気にスピードを上げて左側から抜かして、そのままレイアップで点を決めた。
「めっちゃ上手いじゃん。バスケ部入んないの?」
「あ〜…入んないかな。そこまで本気でやってる訳じゃないから」
「そっか」
その後俺はシュートを外して、お互い30分程1on1をしていた。流石に俺の体力が持たずに、休憩に入った。
「はぁ…っ…よくそんなに出来るね…」
「まぁ私、体力には自信あるから」
この体力をどうにかして、体育祭までにもう少しは上げておきたい。俺と井上は少し休憩した後、1度クールダウンがてらシュート練習をしていく。
「梅野ってスリーめっちゃ入るね」
「ん?あぁまぁね!!」
俺はスリーを褒められた事にめちゃくちゃドヤ顔で分かりやすく反応してみるも、井上は俺のドヤ顔を見ても何も反応してくれなかった。
「え…無反応?悲しくなるわ」
スリーポイントは綺麗に入ると、とても気持ちいい。俺はその快感を得る為にスリーばかり打っていると言っても過言では無い。その後は特に1on1等はせず、雑談をしながらシュートを打っていた。
「井上って…」
俺が雑談しようと話しかけるとすぐさま割って入ってきた。
「井上じゃなくて明里って呼んで」
「え…分かった」
いきなり名前呼びするのは少し恥ずかしさがあるが、すぐに名前呼びに変更する。
「明里ってバスケ部入ってるの?」
「入ってるよ。優香とか美桜とかとはまだあんまり話した事無いけど」
それならあの時、竹内が1ーCで明里を呼ばなかったのも納得は行く。そして俺は明里の事について少し知らなければならない。
「家ってこの辺?」
「そう。部活無い日はここに来てる」
ここから俺の家は、自転車で20分程と少し距離があるとは言え、明里の事は少し警戒しておかないと、俺と宇佐美が同居してる事がバレてしまうかもしれない。
気づけば18時になって、バスケが出来る時間が終了した。俺と明里は一緒に体育館から出て、自転車に向かうと、後ろから明里に声をかけられる。
「ねぇ、連絡先交換しよ?また一緒にバスケしたい」
「お、良いよ。俺も体育祭に向けて体力つけたいから」
「部活無い日とか誘っていい?」
「全然良いよ、また気軽に誘ってくれれば行くから。体育祭の放課後練習無ければ行けると思うよ」
「ありがと…じゃあ私はあっちだから」
明里はそう言って、徒歩で俺の家とは反対方向に歩いていった。
18時半頃に家に着き、玄関を開けると昨日の残りのカレーの匂いが漂ってきた。家に変えればすぐに可愛い宇佐美が出迎えてくれる。なんて幸せなのだろうか…俺はとりあえず汗をかいているので、シャワーを浴びてからご飯を食べようとする。
「ちゃんと髪乾かしてきて!」
「え〜…でも腹減ってるんだけど…」
「乾いてないのはダメ!!死刑!!」
「急にコハル来た」
とりあえず宇佐美に言われたので、ドライヤーで髪を乾かしてすぐに戻り、一緒に夕食を食べ始める。
「2日目のカレーも美味〜」
「2日目は美味しいよね〜」
「あ、そういえばさっき近くの体育館行ったら、宇佐美と同じクラスの明里居たよ」
「え?明里って
「そう、なんか行ったらたまたま居て、1on1とかしてた」
「そう…なんだ…ていうかなんで明里は名前呼び?」
「なんか名前で呼んで欲しいんだって」
「ふ〜〜ん…」
宇佐美はカレーを口に運びながら、ジト目で俺を見てきていたが、あえて何も言わずにカレーを食べる。
(なんか梅野ってすぐに女の子と友達になるなぁ…ていうか、明里は他の男子にもあんな感じなのかな…)
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