第24話 魔王リヴィーネ
リリー達の死闘のおかげで、ガイザーと私はなんとかハミルトン王国内に入った。
国境を越えると途端に無人人形が少なくなった。ザイガーがいうには、もともと無人人形は勇者の墓をリヴィーネから守るためにヨーク地区に重点的に設置されていたらしい。しかし、最近になって、リヴィーネが何度もヨーク州を襲い、それに無人人形が反応して、俺らを敵認定した結果、シュバール王国に攻めてくるようになったらしい。
「ついたぞ」
遂に、勇者の墓に着いた——。目の前には、予想していたより、小さい、普通のお墓がポツリと2対建立されている。
『ナタリー、勇者エルガーと共に、永久に眠る』
「先生、死んでるじゃん。結局、親友の魔王クレディは助けられなかってわけか。一度くらい紹介してくれても良かったじゃないか。これじゃ、結局魔王クレディが本当にいるかも分からずじまいだ」
ザイガーが目に涙を溜めながら墓跡を見る。そこには、ナタリーここに眠ると刻まれていた。ナタリーの墓跡は、ナタリーが死ねば自然に何かが刻まれるようになっているという、リリーとの会話が思い起こされる。
「ザイガー」
「悪い、感傷に浸ってしまった。今はそれどころじゃないな。ちょっと待ってて。
ザイガーは直進魔法を勇者の墓に向けて放つ。固そうな墓石が砕かれ、中に骨はなく杖が置いてある。
「勇者は、リヴィーネに食われちまったから骨はないんだ。代わりに杖を入れていた」
「これが永久の杖なの?」
「そうだよ。これがナタリー先生が、自分の夫、勇者の形見として後生大事に保管していた永久の杖。かつて勇者は、この杖を持ってリヴィーネに単身挑み死んだ。先生は後悔していたんだ。なんであの時、一人で行かせてしまったのかと。お腹にミリーナを宿していたとはいえ、一緒に行くべきだったと」
「そう、なんだ」
「ただ、俺はそう思わない。ナタリー先生はミリーナを守るべきだし、人魔協定締結まじかのあの時しか、リヴィーネを倒すチャンスはなかった。それと、勇者は十分勝てる可能性があった」
「だけど、勇者は殺されたんでしょ」
「そうだ。つまり、リヴィーネはまだ、奥の手を隠している」
「私、勝てるかな……」
「勝てるさ、いや、勝たないといけない。このままでは人間は魔族に殺されてしまう」
「そうだね。勝たないといけないわね。絶対」
「来るぞ」
ガイザーがシュバール王国の方面を見据えると、黒い翼を生やしたリヴィーネがこちらに向かってくるのが見てとれた。
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