第22話 エーデからの手紙

「ミリーナは、お前の部隊を壊滅させた張本人だ。どうだ恨んでいるだろう」


 魔王リヴィーネは挑発するように、こちらを見る。

 確かに、ミリーナを恨んだ時期もあったが、そんなのとうの昔に終わらせた。


「何を言っているんだリヴィーネ、オレはそんな子どもじゃない」

「なんだ、その口振りだと、初めから知っていたのか」


 リヴィーネとの会話は無駄に時間を浪費するだけ——、オレが返事をしないと、ハイ爺が前に出る。


「それじゃあ、殺し合いと行こう」


 瞬時にハイ爺の前に黒い球体が現れる。無詠唱魔法。これは魔法を極めた者にだけ扱える魔法。ハイ爺は、ナタリー先生の師匠。そして、この世界で最も偉大で最強の魔法使い。

 ただ、魔王リヴィーネもすかさず同じ魔法を繰り出す。

 その魔法が接触した瞬間、大爆発が起きた。


「あっぶね」


 オレは当初の手筈通りに、爆発の瞬間、ミリーナを抱き抱え、窓から外に逃げた。状況を理解できないミリーナはオレに抱き抱えられたまま、喚いている。


「え、ザイガー、リヴィーネと戦うんじゃ」

「いや、戦わないよ。戦っても勝てないもん」

「え、それじゃあ、あなたの師匠やエーデはどうなるの?」

「足止めをしてもらうんだよ。ハイ爺はこの世界最強の魔法使い。彼なら魔王を殺せはしないが、足止めぐらいはできるよ。エーデは、まあ、補助役だね」

「そんな、止まって、私たちも戦わないと」

「いや、だから無理だって、よいっと」

「え、これって自動人形?」


 オレはミリーナを自動人形に押し込み、そして自分もコクピットに乗り込んだ。

 一応二人乗り用自動人形だが、久しぶりに搭乗すると狭いな。エンジンを起動し、自動人形を動かす。


「え、運転できるの? まさか、さっきのリヴィーネとの会話……、あなた、私が昔暴走した時に部隊にいたザイガーと同一人物?」

「おお、やっと気づいたのか。もうてっきり気づいているかと思っていた」

「そ、そう、やっぱりそうだったの——。あの時は、ごめんなさい。私、自分の魔法を制御できなくて、みんなを殺してしまった」

「おいおい、湿っぽいのは後にしてほしい、それに、オレはミリーナを恨んではいない。あんな小さな子にコマディアンをさせた王国が悪い。そうだろ」

「そう、だけど、実際に殺したのは私——」

「いいから、そうだ、こうしよう。この危機を無事に乗り越えたら一発ビンタをする。それでいいだろ」

「それだけでいいの?」

「ちなみにビンタをするのはオレではない。リリーだ」

「え? リリー?」

「あいつはシーカの妹だ」

「シーカって、私の部隊にいたシーカ? じゃあ、ミカも?」

「そういうことになるね」

「だからシーカは私のことを破壊姫と呼んでいたんだ。恨み節だったってことね」

「あいつまだそんな呼び方してたのか、一応注意はしたんだけどね」

「いや、いいの、その方がいい。私は全てを破壊してしまったのだから」

「あと、これ、エーデからの手紙をあづかっている。ここに全てが書いてある。今読んでくれ。中身はわからないけど、多分大体今の状況がわかると思う」


 エーデからの手紙をミリーナに渡すと、ミリーナは真剣に手紙を読み始める。





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