第20話 人形上がり
「やはり、お前は猫を被っていたか、エーデ。いつから気づいていた」
「初めからよ。こんなに臭い匂い、魔族以外ありえない。それに、私の娘を殺した魔族を私は決して見逃すことはない」
「はは、わしの失敗は、ナタリーを殺した時に痕跡を残しすぎたことか」
全然話が見えない、エーデおばさんは一体なんの話をしているの?
「エーデ、お前の孫が、状況を理解できていないようだぞ。あ、孫だってことは話していないんだっけか」
私が、エーデおばさんの孫? どういうこと?
「ミリーナ、目の前のハルト王子は、本当にハルト王子だと思うか?」
おばさあんに問いかけられ、もう一度ハルト王子を見る——、すると、先ほどとは雰囲気が変わり、どすくらい臭い匂いが辺りを埋め尽くしている。
「
おばさんは間髪入れずに、
「ミリーナ、よく見なさい。あれが魔王リヴィーネ。我々の敵よ」
魔王リヴィーネ、その名前は何度も聞いた。人魔協定の立役者。そんな魔王がなぜここに、それにハルトに変装していたの?
「じゃあ、ハルトは、ハルトはどうしたの?」
「ハルトか、ハルトは食ったぞ、数年前に」
「え、食った?」
「そうじゃ、魔法量が多くて美味だった。だから、ミリーナお前を食うのも楽しみだったんだ。だけど、昼間はゴミどもと一緒に行動し、夜は強固な結界で守られた小屋にいる。わしの手出しできるタイミングがなかったから、お前を食うまでに数年を要してしまった」
こ、こいつは何を言っているんだ——、人を食わないと人魔協定でそう決めたはずなのに。
「エーデ、それでお前に勝機はあるのか? お前では俺には勝てない。ナタリーですらわしに勝てなかったのに、どうしてお前がわしに勝てようか」
「そうね、その見立ては正しいわ、リヴィーネ、私一人だけならね」
「おやおや、いつの間にお仲間が増えていたんですね。さすがナタリーの師匠と弟子、ハイグルとザイガー、2ヶ月ぶりぐらいですね。ミリーナを食うにあたり邪魔になると思い、あの日確実に殺したと思ったのですが、やはり生きていましたか」
3対1にもかかわらず、余裕綽々なリヴィーネ。どこから此の余裕が生まれるのか。
「やはり、ハルトはもう死んでいたか。お前は、あの時殺しておくべきだったか」
「ザイガー、あの軍のパレードの時の話じゃな、あの時は少しヒヤリとした。わしを人間と認識しているはずなのに、本気で殺しにかかってきたのじゃ。さすがナタリーの弟子だと思ったぞ」
こう着状態が続くが、ここにいる魔法使いは歴戦の魔法使い。小さな所作だけで、数十手の読み合いが行われている。
「そうじゃ、ザイガー、殺し合う前に良いことを教えてやろう」
「クソ野郎から聞く話はない」
「そう言わずに、冥土の土産じゃ。人形上がりのお前は一つ疑問を持っているだろ。あの時、自動人形を暴走させた魔法士は一体誰かと」
人形上がり——、ザイガーは自動人形乗りだったの? そんなこと一度も聞いたことがなかった。
「そんな昔話を持ち出して、オレを動揺させるつもりか? 愚策だな」
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