勇者の系統
第14話 破壊姫
「おいおい、お姫様が今度のコマディアンか、もっぱら有名だぜ、破壊姫」
ドワーフ前線基地司令所に配属されてすぐに、司令所の一室で、部隊の部下たちとの対面することになった。私と対面してすぐに悪態をついたのは、以前スラム街で対峙した女の子だった。
それにもう2人、男の子が席に座っている。
「これ、コマディアンに向かってなんだその態度は」
「へいへい、それはすみませんでした。全く運がねえぜ、今度の上司は破壊姫だとは」
司令所付きの中佐の諫言にもかかわらず悪態を吐き続ける少女。
「すまんな、ここ最近彼らの仲間が大勢死んで気が立っているんだ」
「そ、そうなんですね」
「それでは少尉、自己紹介を」
私は、前線に送られるにあたり、一時的に軍属に入ることになり、最初の階級は少尉となった。
「初めまして、私はミリーナ・パウゼ、今日からあなた方を指揮することになりました。大学では一応基礎を学んできました」
沈黙が流れる——、やれやれと言いながら中佐が今度は部隊員達に挨拶するようにと促し、ここまであくたいを
「へいへい、コードネーム ジョッジだ」
「ジョッジ? それはお名前ですか?」
「は? 名前? コマディアン様に名前を教える必要はないと思いますが、どうせ私たちはすぐ死ぬわけですし、家畜の名前を聞いてどうするんですか?」
「い、いや、あなた達にも名前があるでしょう。あなた達は家畜ではありません、人間です。少なくとも私はそのようにあなた達を扱います」
「は? 偽善者が。だったらあんたが、自動人形に乗れば?」
「それは——」
「できないでしょ。だったら偽善者ごっこはやめてもらえる?」
ジョッジは私に近づき腕を掴むと、そのままいとも簡単に私の体を押し倒した。
「おい、お前上官に何をしている」
中佐がすぐに拳銃を抜き、ジョッジの頭に突きつけた。
「お遊びですよ。中佐殿」
「度が過ぎている」
「はいはいすみませんでした——¯それにしても、少尉は腕に可愛いアザをお持ちのようで」
「こ、これは生まれつきのアザです」
「ははは、こんなお嬢さんを前線に送ってくるなんて、私の部隊も舐められたものだ」
「私の名前は、ミカ・ストレイよ」
「おいお前、いいじゃない減るもんじゃないし、別に私はミリーナと対立しようとは初めから思っていないし、ちなみに隊長のジョッジの名前は、リリー・ストレイよ」
「おい、勝手に教えるなよ」
もう一人の女の子ミカが、笑いながらリリーの名前を明かした。この子達はザイガーが昔助けた姉妹だった。
「俺はギーズ・コース。それで、こっちの一番小さいやつがバンディー・スワイプ」
「ちっさい言うな!」
ギースに揶揄われたバンディーは自分より一回り体格が大きいギースに文句を言う。
「みんなの年齢は?」
「そんなことまで聞くの?」
「いいじゃない、リリー、私たちはね、今年で13くらいよ」
「くらいって、正確な年齢はわからないの?」
「そうね、私たちは孤児だったし」
「そう、なのね」
———「警報——、敵数500、ユルンゲル地区に進行中、接敵までおよそ50分、ドワース地区部隊も援軍に向かわれたし」
突然、司令所内に警報が響き渡る。その瞬間、先ほどまでの雑多な雰囲気が一蹴され、各々、自動人形へと乗り込む。
「さあ、少尉、初仕事ですよ。しっかり私たちに魔力を送ってくれよ、それと指示はしなくていい私が全ての指示をする」
「え、でもそれでは私の役目は——」
「少尉は、ただの充電器みたいなものですよ、私たちと一緒の使い捨てのね。真面目な話、素人みたいなあなたがしゃしゃり出てくると、部下が死にかねない。お願いだから大人しくしててね、破壊姫」
それだけ言うと、リリーは自動人形に乗り込み戦場へと出撃していった。
「全く、せっかく戦闘が少ないと噂のドワース地方に配属されたのに、今度は味方の援軍に駆り出されたばっかだぜ」
ギースが、自動人形間でしか通信できないようにかってに改蔵した通信機で他の3人に話しかける。
「まあ、仕方ないわよ。圧倒的に自動人形に乗る人間が足りないのだから——そろそろ、魔法電池が切れるわね、早く魔力を送ってくれないかしらあのお姫様」
自動人形には魔法電池が備え付けられており、ある程度は電池で自走できる。魔力を供給する魔法使いがすぐに準備ができなくても出撃できるためである。ただ、長時間動き続けるためには、魔法使いが魔力を注ぎ続けなければならない。
「やっときた。おおっと、この魔力量さすが、破壊姫、こんな魔力を注がれ続けたら、そら壊れるよね。にしても噂じゃ、供給量は不安定だって聞いていたのに、意外に安定しているじゃん」
バンディーが素直に感心する。
「そりゃ、成長と共に魔法も成長するんじゃないか? 俺は安心してるぜ、噂通りだったらどうしようとヒヤヒヤしていたところだ」
ギースは、自動人形でアクロバットしながら嘲笑する。
「はい、お話はおしまい、接敵するよ」
男どもの与太話に終わりを告げたミカは、目の前のディスプレイに表示された敵の数に固唾を飲む。だんだんと戦場が近づくにつれて、仲間の悲鳴や救助を求める声が時より雑音と共に通信に乗って聞こえてくる。
「さあ、クソとの殺し合いを始めようか」
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