第12話 拡張
オレはミリーナに連れられて、小屋の地下に降りた。小屋の地下にこれほど広大な広場があるとは知らなかった。
「元々ここは、私の訓練所なの。エーデおばさんは、人魔協定下の平和な世の中なのに、とにかく攻撃魔法だけ極めれば良いって言って、私がここにきた頃にはよくここで練習させられてたわ」
昔を懐かしんでいるのだろう——、目を細めて地下広場の奥を見る。
「攻撃魔法を練習しているなんてこと外にバレるわけには行かないから、こんなに大きな広場を作ったのに、私ったら攻撃魔法の才能がなかったの、すぐに魔法が制御できなくなって、暴走してしまい、現界させたい魔法がうまく出せなくなる。昔からそうなの」
「ちょっと見せてみて」
ミリーナは杖を出すと、魔法を放った。
「
まさかの
「ミリーナ、君は、
「えへへ、黙っててごめんね、実はエーデおばさんに教えてもらった魔法なの。こんな魔法使う人いなかったからガイザーがこの魔法を使うところを見たときは驚いたわ」
「オレも先生やハイ爺意外に、この魔法を使ってる人を見たことがない」
「ハイ爺?」
「あ、オレの育ての親みたいな、今一緒に暮らしてるおじいさん、先生の師匠みたいなんだけど」
「そうなんだ、じゃあ、エーデおばさんもその人と知り合いなのかな」
確かに、ハイ爺がここの家庭教師の依頼を持ってきたのは不自然だった。後で聞いてみよう。
「それで、私の攻撃魔法どうだった?」
「魔力量が多いから、すごい威力だ。ただ、出口が小さいみたいだから、魔力を効率よく外に出せていない。そのまま出し続ければ出口が壊れてしまい、暴走してしまう」
「そう、その通り、エーデおばさんも同じことを言っていたわ」
「私の魔力の出口は狭い。だから攻撃魔法には不向きなの」
「一概にそうとは言えないよ」
オレの言葉に、ミリーナは目を見開きながらこちらを見る。何か対処法があるの?と顔に書いてあった。
「僕が出口少しずつこじ開けるから」
「そんなことできるの?」
「うん、ただ無理矢理だよ」
「え、なんだかそれ怖い」
「まあ、最初は怖いよね、大丈夫優しくするから」
「え……、なんだかいかがわしい匂いが——」
「いや、変なことはしないから、はい、手をオレの手と合わせて」
「こ、こう?」
「そう、そして目を瞑って」
彼女の魔力回路を調べると、芸術とも言えるほど綺麗な魔法回路をしていた。これは天賦の才能、この回路を思う存分使うことができれば、魔王すらも倒せるかもしれない。ゆっくりと、出口を広げていく。時々苦痛でミリーナの眉間に皺がよるが、少しは我慢してもらわないと出口は大きくならない。
「終わったよ」
「ふう、結構痛かったわね」
「さあ、少し
「
「まだコントロールが効かないのは仕方ない。確か、前線に行くのは2ヶ月後だったよね。2ヶ月でどこまで伸びるかわからないけど、とにかく
「タングステン?」
「最も重い石のひとつだよ。これを打ち抜けたら、僕の家庭教師としての役目は終わりだ」
「わかったわ、ねえ、これができたら——」
「ん? どうかしたか?」
「これができたら、昔の勇者みたいに、私も強くなれるのかな」
「そうだな、なれるんじゃないか」
それから毎日、ミリーナは魔力を使い果たし、その場に倒れ込んでしまうまで
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