寮の夜 2
「…もし、もし…? 華園です」
「あ、華園くん? 急にごめんねぇ、今大丈夫?」
「うん、何もないから大丈夫だよ」
今風呂に入るところだよー、なんて野暮だろう。
風呂位いつでも入れる、楽しみとは言え。
「それでどうしたの?」
「あぁー…うん。あのねっ、華園くんのグループに…その、米田くん、いるじゃん? あの子、私の事何か言ってた?」
少し焦りを織り交ぜた声で言葉を紡ぐ青峯さん。
「いや…何も言ってなかったよ」
不審な物言いだが青峯さんだし流石に何もないだろうと踏んでとりあえず事実を伝える。しかし、青峯さんはそれで安堵することなく「朝! に…怖い…人に会ったとか…も?」と続け様に質問をした。
「え? あぁうん、青峯さんらしき人の話は…何だったらグループの中でも出てなかったよ」
「そう……なら良かっ…いやよくないなぁ。それはそれで良くない気がするぅ」
なんだ、青峯さんは一体何に困っている。
何を悩んでいる。
話の内容をつかめない俺は、取り敢えず状況確認と思い「米田くんと何があったの」と問いながら風呂場のドアに寄りかかって座る事にした。
お尻が少し冷たい、廊下用のカーペットも欲しいな。
「ーーいやぁそれがねっ」
青峯さんは俺の問いがまるで高級釣り餌だったかのような食いつきで声を上げた。
「朝の話なんだけどね! いや。えっとまず私ね、すっごい朝弱いんだ」
「そうなんだ、まぁ朝って起きるの辛いもんね…」
今はもう起きてしまえば目が完全に冴えるようになってしまったが、この習慣が身につくまでは毎回じっちゃんに殴り起こされていた。
どんなに強い眠気があって抵抗しても、昨日の疲れが残っててぐっすり眠っていても、何がなんでも起こされる。
それで機嫌が悪くなればそれこそ手痛い暴力が降ってくる。
理由を聞けば「朝に微睡むと怠けが続くからだ」だ、そうだ。
まぁその言い分は、今まで日が沈みかけるまで眠りこけていた日々を思い返すと確かにそうだとしか言えなかった。
とは言え辛いものは辛い。
ほんとに年単位で慣れるのに時間がかかった。
慣れるまで辛かったから強烈にこの辛さを覚えていて、だからこそ青峯さんの辛さには酷く共感していた。
「そう、本当に辛い。けど、その起きる時の辛さの反動? ダメージが私普通の人より凄くてさ」
「うん」
「なんて言うかなぁ、ほんと性格が180度変わるって言うか、凄く荒々しくなっちゃうんだ」
「うそ、全然想像できないや」
何と言うか、青峯さんの雰囲気は今もそうだけど少し活気がありつつ楽しそうな感じ。優しさもあって全然粗野な姿が思い浮かばない。
まぁ初日、会ったばかりだから別に変じゃないか、とも思うが。
「いやほんとほんとっ、私家族に寝起きの写真撮ってもらったことあるんだけどこうっ、がおー! って眉間に皺よってて目がほっそいの! メチャクチャ睨んだ感じでっ、後ほぼ無口!」
「想像する感じほんとに青峯さんか疑わしいんだけど」
少しおかしくて、軽く笑いながら返す。
すると青峯さんは少し悩む様に唸り声をだしてすぐ「いいや送っちゃえ!」と思い切った声色を上げた。
「今ウィコネに私の写真あげたからみてー」
そう言われて着信のあったウィコネを開き、画像を拡大させる。
「……んー…」
朝食の並ぶ食卓。
トーストにサラダ、スープ。
4人分の食器を跨いだ先に、後頭部を描きながら猫背のまま歩く青峯さんの姿があった。
端正な顔立ちとミディアムヘアの灰色髪、背丈は青峯さんで間違い無いだろう。
着込んだ寝巻きはかわいい色味の物。
肩にはベージュ色でモフモフなブランケットを羽織っている。
俺が知ってる青峯さんが着ていればそれはとても似合っていると思えるんだけど、この画像に映る青峯さんには合っていない。
敢えて例えるなら、寝巻きがデフォルメのクマ。
青峯さんの顔は野生の熊だ。
そして野生の勘みたいなのが実際に働いているのか、カメラに気付いた様子。鋭い目つきでこっちを見ているのもポイントが高い。
獲物を見つけた冬眠前の熊を顔をしている。
「ぁーうん……。確かにこれは…」
端正で綺麗目な顔立ちも、こんな風になる事もあるんだと驚愕している。
「ね、やばいでしょ」
「やばいねこれ、確かに青峯さんだけど別人すぎる。…ごめんちょっと怖いまである」
「あはは! 正直でよろしい!」
快活に笑う青峯さんの声は、親指を立てて言ってくれている様に思えるほどだった。でもすぐ言葉の様子は落ち着いて「けどね…」と言葉を綴った。
「ほんとこれ嫌なんだよねぇ…正直早く治したい…。将来シワになっちゃうし、こんなの彼氏とか旦那さんに見られたらもう私生きていけーーって違う違う。あのねそれでね私こんなんになるんだけど、これが治るのって起きてから1時間くらいかかっちゃうの」
「うんうん」
「けどぉ…ちょっとぉ今日ー、朝寝坊しちゃってさっ。実は緊張して眠れなかったんだぁ昨日」
「そうなんだ」
わざとらしく言い訳をする青峯さんにクスッと笑いが溢れる。
「青峯さんってなんか雰囲気とか、俺の面倒見てくれたりとかしてくれたからさ、俺からしたらもうお姉さんって感じするんだよね。だからそう言うので緊張してるのすっごい意外」
「ひゃっ、そんなお姉さんとかしっかりしてるとかかわいいとか言葉並べて言わないでー、恥ずいジャーン」
「そこまでは言ってないけど取り敢えずわかった、もう言わない」
「あ、いやちょ、華園くん聞き分けいいんだけどなんかっ、こうっ、ねっ」
「……ん?」
「いやぁあのっごめん! 全然言ってください欲しいですお願いします!」
「んー……お願いされてするもんじゃないとは思うから…いいや」
「あれ、華園くんって案外Sなの?」
「S…?」
よく知らない言葉が出てきてしばらくの沈黙が漂う。お互いキョトンとしたまま、時計が指す時間だけが過ぎていく。
「え?」
少しずつ変になっていく空気。
青峯さんは「な、なんでもなぁい!」と空気を変えようと声を大きくしていった。
「それでなんだけどね! まぁ目つきも雰囲気もワルワルのワルの状態で通学したわけ。その途中に曲がり角があったんだけど、ちょーど! ほんっとにたまたまちょーど歩いてきた米田くんとぶつかっちゃったの。それで米田くん突き飛ばしちゃって」
「あらら…。青峯さんは…その感じ大丈夫だったのかな」
「うん! 私はね! あの時はほんとにこう、ドーン! 米田くんだけゴローン! 私ババァァアアン! みたいな感じだった」
擬音が酷く多いが言わんとしてる事はよく伝わってくる。
「体幹強いんだね」
「はい…体幹強い…みたいです。体幹強過ぎてみんな私のことゴリラより強いって言ってくるんだよね…ほんと困っちゃ……あ。でもあれだからね! ほんと私か弱いから! 乙女だから!」
必死に弱さを主張する青峯さんだが、面白い話、朝の様子の青峯さんを見てからというもの、か弱さの主張が受け入れにくくなってる。
「なんか、ごめんね」
「なんで謝るの! え、なんでなの! え、認めてくれない!? 私乙女!」
「うん。認めてるよ。乙女でありたいってとこが1番乙女なところだと思うし」
「流石我が信徒、まるでギャルゲーの選択肢にありそうな肯定の仕方」
おじいさんのように声を太くしながら青峯さんはそう言った。ギャルゲーがなんなのかわからないが、まぁいいやと思い「ごめんね話逸らしちゃって」と続きの話を促して。
「うんん、全然」
耳を傾ける。
「……まぁ、その時の…米田くんを突き飛ばした時の状況的にね、私が曲がり角を曲がってそのまま米田くんの背中に激突した感じ。曲がる時にミラーの確認とかしないまま進んだから100%私が悪いの。で、普通さそうなったら手を貸して謝ったりするじゃんっ」
「うん」
「でも私その時更にイライラしちゃって、私なんかに吹き飛ばされるとか『お前ザッコ』って思っちゃって、そのまま口に出しちゃったんだ…。目つき悪いし姿勢もちょっと前屈みでポケットに手を突っ込んだ歩き方で、すっごい柄が悪くって…あぁ…! 私もぉ絶対ヤバいやつって思われてるー!」
「うん、思われてるね。少なくとも俺も今朝方そんな強烈な仕打ちに似たこと経験したから…うん」
そうあれは今朝のこと…赤毛の女は言いました。
『別にほっといて死んだらそれまでよ』
『は? バカじゃないの』
『マヌケね』
『メンタルが雑魚ね』
『死んだ方がいいんじゃない』
『ゴミね』
一部捏造の気色があるが本質はこれらに収束している。もはやこれは言葉の真意に組み込まれていた気持ちだろう。捏造ではない。
うん。
「ねぇお願い!」
「んぇっ、あ、はい。え、ごめん聞きそびれた。なにかな」
「米田くんの連絡先教え! 学園内じゃあ普通に振る舞ってるけど米田くんにとってその私って猫かぶってる私になっちゃってると思うのっ。誤解を解きたいの!」
どんどんボルテージの上がっていく嘆きはもう泣きべそに移り変わっていた。
「ねぇ助けてぇええ」
そんな懇願。
今日、青峯さんには助けてもらった。
いつかお礼すると言ったが早速お礼するチャンスだ。とは言え、それはなんか違う気がした。
だから、今からすることは好意への単純なお返しだ。
「いいよ。ただ、先に米田くんに連絡先渡していいか聞かせてもらえるかな」
「うん! うん! 全然!! 待つ! まつまつまつ! ありがとう華園くん!!」
「どういたしまして〜。じゃあまた後で連絡するね」
「うんわかった! 連絡待ってる!! あ! 私まだメモ送ってなかった! 送っとくね」
「ありがと、助かるよ。…じゃあ一旦切るね」
「うん! 本当にありがとうね! じゃあまた!」
コロンっと鈴が転がる様な音と共に通話は終了する。
(じゃあちょっと聞いてみるか……。あ、西条さんにも連絡しとこ)
俺は双方に連絡を送ってから、ホログラマーの着脱のために説明書に目を戻す。
(えー、鏡を見ながらコンタクトをとる…。鏡ぃ…は、もう脱衣所でいっか)
俺はその説明書の流れに沿ってまず手を洗い、そしてコンタクトに指をかける。
目に映るのは、大きくなっていく指先と爪。
眼球がそれを拒もうとするが、瞼を指で吊り上げて無理やり指を捻じ入れる。
そして、ピタッ、とコンタクトに指がつく。
少しの吸着。
それを合図に優しく引っ張ると簡単に取ることができた。もう一回同じようにすれば……。
「っし…」
ものの数秒で着脱終了だ。
(この調子でつけるのも簡単にいけばいいんだけど)
取り外したコンタクトは、使い捨ての除菌カップへ。中には洗浄液をいれており、コイン落としのようにゆったりとコンタクトは底へ向かって泳いでいった。
(今できることはそれくらいかな)
デバイスの充電は後回しだ。裸で彷徨くにはちょっと寒い。
「あ」
(でもあれだ、返信するのにまた使うんだ。うわしくじっためんどくさっ)
顔を両手に押し当てて膝を床に擦り付ける。
ため息が自然と溢れてきた。
多分これからも似たようなことを経験するのだろう。と、思うと少しめんどくさくなってくる。
(あーでも、そういやぁ…)
そんな時、ふと思い出すメガネ式のホログラマー。それの貸し出しもあったことを。
コンタクトは装着感はなく、裸眼と変わらないから普段使いには適していると思う。が、こう言うこともある、と言うのを体験した。
二つあればお風呂前をコンタクト、お風呂後をメガネと言った風に使い分ける事ができるようになる。
うん。明日相川先生に尋ねてみよう、そう決心して風呂場に俺は身を投じることにした。
ーーー
(いやぁいいお湯だった…。お湯で体洗うのってこんなに幸せなんだなぁ。時間かかったけど湯船も気持ちよかった……なんか毎日の楽しみになりそう)
想像以上の極楽に頬を緩める。
シワシワになった指先をみれば如何にお風呂から出たくなかったかが見えてくる。
とは言え流石に体もこたえているようだ。
「………」
ボヤァ〜っとする頭。
今まで冷たい水でしか洗ってこなかった弊害か、かなり温度が体を支配している。
入りすぎと言うのもあるんだろうが、いわゆるのぼせている状態が強く出ている。
こう言う時は確か水分補給…と、なんだっけ。
(取り敢えず立っとくのしんどいな…)
いそいそと体を拭き、着替えすら億劫だった俺は窓を開けるなりベッドにダイブした。
バフンっと跳ねるベッド。
俺の黒色の髪の毛もそれに合わせて優雅に空を泳いで落ちていく。
シーツには拭き残していた水の飛沫がポタポタと染みついていた。けれど「別にいいや」とボーッとした頭のまま枕に抱きつく。
枕はそれ以上に濡れてしまう。
だがこれも、別にいいやの範疇だ。
(なんかこのまま寝ちゃいそう)
睡魔がぐわっと襲いくる。
4月の夜。
窓を閉めれば寒くはなかったが、開けていればそれなりに冷気が舞い込んでくる。
段々と全裸に刺さリ始める冷え。
寒さのせいで朧げな視界は少しずつ鮮明なものに変わっていくが、脱力感が癒えることはなかった。
…眠い。
それだけが思考に残る。
しかしやらなくちゃいけないことはまだ残っている。
そう、連絡の返信だ。
そして、洗濯機はお風呂から上がる時に回したとこ。
中にはパンツとバスタオルとカッターシャツが入っている。入ってるものはそれだけだが、やらなければならない事のひとつで間違いない。
連絡のために脱衣所に足を運ぶ。
静かに回る洗濯機。回っていた。残り時間を見てみれば後20分もある。
横目で確認し終えてデバイスを起動。ウィコネについていた通知を開けてみれば米田くんからのメッセージだった。
『別に大丈夫だよ、連絡先交換してもらって。まぁ先に誤解とかはしてるつもりはないってだけ伝えておいてくれたら』
『わかった、ありがとう』
米田くんからオッケサインが出た。じゃああとは青峯さんに連絡……。
既読早っ。
『交換していいって。あと先に誤解は元からしてないよって言ってたよ』
『やぁああったぁああ! ありがとうありがとう! 本当にありがとう!』
『どういたしまして〜。けど…どうそっちに送ればいいの?』
ウィコネ初心者の俺は操作の仕方なんてよく分からない。だから面倒をまたかけるが指示を仰いでもらい、その通りにして連絡先を伝える事に成功する。
ウィーコネクト、便利なアプリだ。
『ほんっとうにありがとね!』
『うん。どういたしましてっ』
『学園でまた話そっ! じゃあまた明日っ』
『そうだねまた明日』
『おやすみ!』
『おやすみ』
最後に既読がついてメッセージの流れは完全に止まった。俺はお尻の下に手のひらをつっこんでクッションがわりにする。少し長いこと座っていたせいかあったかくなった地べた。
(じゃあ後は西条さんか…)
あー、でもヤバい。
目がしばしばする。
使い終わったら洗浄液につけなきゃだけど、つける前に意識が飛びそう。気だるい身体。ウトウトと左に傾き始めた体を慌てて戻して立ち上がる。
丁度洗濯物が上がったようだ。
(干さないと……。やばいな)
悪事も出てきたし頭が熱くなってきた。
この、ひどい睡魔に抗って無理やり起きている時に来る症状。正直とても辛い。精神が分離しそう。
取り敢えず無心で洗濯物を取りあげ、ベランダに刺した物干し竿に乱雑にかけて戸を締める。
外に出たら目が覚めるかなとか思ってたのだけれど、もうその段階はすぎたっぽい。
(だめだ)
寝た後なら微睡む事なく目を開けられる。
それは修行の結果身についた習慣だと言える。
なら逆は?
眠たくても起きていられるようになったのか。
それは勿論否だ。
むしろ朝に強くなった分、俺は夜にはとても素直になってしまう。相当な事がないと起きていられない。それに、たとえ相当な事であってもいずれ限界が来るもの。
それが今だ。
(西条さんにはすっごい悪いけど明日連絡しよう)
西条さんに言い訳の文章だけ送り、その返信を待つことなくホログラマーを取り外す。
コンタクトをまた洗浄液につけた後歯を磨く。ウトウトしていたせいで少し喉にぶつかった。ちょっと吐きそうになった。
「………」
もう、やる事は終わった。
キッチンで飲み干した2杯の水、歯磨きの後でも水なら問題ない。
ベッドの近くにはリモコンなど、使用頻度の多そうなものを置けるように小さな棚を置いている。だから、電気を消すのにベッドから起き上がらなくちゃいけない、なんてこともない。
冷たい毛布は徐々に熱を帯びていく。フワフワとした感触は森で手作りした布団なんかよりも格段心地よく暖かくなる。
森で作ったのなんて乾燥させた弦を編んで布団の形状にし、更に親指大の木の破片を樹液で沢山くっつけたものだ。
保温性能は高かったが布地の布団と違って固く、足元から隙間が出来やすかった。
それもあってあまり暖かくない代替品となっていた。
(それにしても…明日から学園生活が本格的に始まる。ちゃんと寝て、体力つけとかなきゃ)
今日一日でいろんな人と出会い、仲良くなった。
苦手というか嫌いな人も見つけた。
頭もよく使ったし、とても濃い1日だ。
これからもこんな色んな思いのできる日々を送れるのだろうか。もっと友達が増えていくのか。
もっと、嫌いな人が増えていくのか。
楽しみと不安、どちらも俺にはあった。
でも、ただ一つ言えることは、頑張って学園は卒業しよう、という事。
これが1番の目標だ。
学園ですることについて、事前情報は多少なりとも頭に入っているのだけれど全部を知っているわけではない。学園で学ぶことは多分普通の学校で学ぶ事とは違うはずだ。
だから尚の事座学の4〜6月は死ぬ気で食らいついていかないといけない。
今後の自分の身の振り方に直結する学だからだ。
疎かにする理由もなければ、全力を注がない理由もない。みんなの足を引っ張らない為にも俺はやっぱり勉強も頑張んなきゃだ。
それを考えると少し頬がこけてきた気がする。
小テスト、言葉だけでも嫌気がさしてきた。
それも2週間に一度、頻度多すぎないか?
それが明日から始まるってことか…。
ちょっとだけ明日が億劫だ。
でも、俺には友達がいる。
仲間がいる。
多分みんなはいい人だから俺が失敗しても責め立ててくる事はないだろう。なんだったら寄り添って一緒に勉強してくれそうまである。
と言うかそれが今日の話で決まった事だ。
(いい人達に巡り会えて……よかった…な……)
心地よい睡魔。
微睡がまとわりつく頭。
振り解く余裕も、意義も。もう、完全にない。
俺はただその誘いに呑まれるがまま、不透明な意識に溺れ落ちていった。
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