天使とプレゼント~小悪魔を添えて~(2)

~水曜日・放課後~




(今日は放課後に千春さんと冬華さんが教室まで迎えに来てくれるって言ってたよね…?)


実はもう学校が終わってから20分以上経っていた。


流石に不安に思い始めた時廊下を走ってくる音が聞こえた。




「ふぅ~春宮さん遅れちゃってほんとごめんね!あのバカ2人が私たちに間違った待ち合わせ場所伝えててあなたがいなかったらもしかしてと思ってきたら本当はここにいたのね。」


「あの2人は後でしっかり懲らしめておくから。本当にごめんね、春宮さん。」


2人は半分息を切らしながら謝っていた。




「大丈夫ですよ。それよりわざわざお手数お掛けしてすいません。」


桜は2人に深々と頭を下げた。




「大丈夫だよそんなにかしこまらなくて!これも何かの縁だし、これからよろしくね!そういえば自己紹介まだだったね。私は月瀬千春つきせちはる、趣味はコーディネートでよく近くのショッピングモールにいるから周りから変人って言われてるのよね~」




高速で喋る千春に気圧されてしまって桜は思わず黙り込んでしまった。


そんななか助け舟を出してくれたのは冬華だった。




「もう千春、もう少し気を遣いなさいよ!桜ちゃんが困っちゃってるじゃん。ごめんね桜ちゃん、うちの千春が迷惑かけちゃって。私は柚月冬華ゆづきとうか、千春の友達兼世話役よ。これからよろしくね!」




(秋戸さんの言った通りこの2人は陽キャだけど特に柚月さんの方は面倒見が良さそうですね。)




「2人ともよろしくお願いしますね!そういえば私自己紹介まだでしたね。春宮桜です。縁があって夏目さんにお世話になっています。」




「ねえ春宮さん、春宮さんのこと桜ちゃんって呼んでいいかな?」


千春が眩しいほどの笑顔でこちらを見てきた。




「ええ別にいいですよ、千春さん。」


正直苗字で呼ばれようと名前で呼ばれようとどっちでもよかったので快く許可することにした。




「ありがとー!!桜ちゃん」


千春はこちらに向かって抱きついてきた。


「だから千春…?桜さんに迷惑かけるのはやめなさいよ?まだ目的地に向かって出発すらしてないからね?」


「はぁーい、ごめんなさい。とりあえずショッピングモールに行きますか!」




(気持ちの切り替え早いな…陽キャって呼ばれる人はこんな感じなのかと思ったら少し怖くなってしまいました。)




「そのショッピングモールっていうのは学校の近くの今見えているバス停からバスに乗って行くのですか?」


普段学校と優希との買い物以外は外出することはあまりないためあまり位置関係が把握出来ていないのだ。




「そうだよ~もうそろそろ来るみたいだし。あと桜ちゃんは敬語使わなくていいよ?堅苦しくなっちゃうし。」


千春は桜に敬語を使われることによって少し接し辛さを感じていたのだ。




「普段からこれなので…できるだけ頑張ってみますね。」


優希と普段家で話す時でさえ敬語が主な桜にとってタメ口というのは相当難易度が高いものであった。




バスに乗り、揺られること20分。3人は目的地のショッピングモールに着いた。




「私はここに来ると安心するよ。第2の家みたいな感じだし。」


「本当によくそんなに高頻度で来れるよね。私は多分行けって言われても行けないから。」




「これどこに向かっているんですか?」


目的のお店に向かって歩いていく2人の後を桜はついて行きながら聞いた。




「着いたよ~ここは雑貨屋だね。優希君はいつも鍵とかバラバラに鞄の中に入れてよく探してるから革製でチタンの金具のキーホルダーがいいんじゃないかなって。彼ああ見えて金属アレルギー持ってるからね。」


冬華が理由と共におすすめのものを教えてくれた。




(そういえば、優希君の家にはチタン製の製品が多かったのはそれが原因だったのね。)




続けて冬華はこう言った。


「それに、優希君は大人しい子だから千春のような小悪魔が送るような派手なものとか、いつも目に付くようなものはあんまり好まないんじゃないかな?」




「何よ~私そんなに小悪魔って言われるほどあざといの~?」


千春は不服そうにして冬華の方を見ている。


「そういうところよ?少しは自覚したらどうなのよ」


そう言われて千春はしゅんとしてしまった。




「今日は色々なアドバイスありがとうございました。お陰様で夏目さんにいつもの感謝を伝えるためのプレゼントを買うことが出来ました。」


腕には最初に冬華が言っていたキーホルダーの入った袋が掛けられていた。




「私も桜さんと買い物出来て楽しかったです。もし今から時間があればあそこのカフェで少しお話しません?」


冬華がそう提案してきた。




「今日は時間もありますし、お2人が良ければ行きましょうか。」


桜はこの2人と話すことに少し楽しさを感じていたのであった

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