第47話 自己紹介(委員会編)
「皆さん初めまして。央成学院東校生徒会会長――
私が委員会を進行させていただきますね。よろしくお願いします」
僕たちに着席を勧めてくれた先輩の自己紹介に、遅まきながら驚く。
……この優しそうな先輩が、央成学院の
精霊保有量の最盛期が来る学生。
世界ではそんな学生たちを中核として、国家の指針が決定され、社会人たちは決定された指針に沿って国家を運営するシステムが一般的になっている。
学生たちは学ぶべきことも多い。
しかし、身に着けた実力の分だけ自身で国を動かすことができる。
央成学院はそんな日域国唯一の国立精霊機関だ。
日域国内に東西の二校存在し、東西間で勝利した方が国の代表として他国の精霊機関と争うことになる。
そしてその結果を基に、今後の日域国と他国の力関係が変化していく。
つまり央成学院の進退が、国の行く末と直結していると言っても過言ではない。
生徒会長ということはつまり――日域国の方針を決められる立場。
故に、生徒会長は一般的に国王と呼ばれている。
現生徒会長は、国王としての権限を央成学院西校の生徒会長と二分しているとの話だが――
柔らかそうな物腰に、鈴の転がるような声。
少しウェーブがかった髪色は濃い緑。
顔立ちは美人というよりも可愛らしい。
纏う精霊は木と風。
穏やかに精霊たちが流れ出す様子は、大河を思わせる。
……本当に
現生徒会長の戦いぶりからついた二つ名。
敵対する相手に対して、圧倒的な強さで蹂躙していく様からつけられたと言われているけど――
……本当なのかな?
疑ってしまうほど、生徒会長は柔和な振る舞いをしている。
「といっても、今日は顔合わせだけだから1年生たちに自己紹介してもらうだけなんだけどね」
花が咲くような可愛らしい笑顔だ。
まさに「温和で面倒見のいいお姉さん」が具現化した存在と言ってもいいだろう。
控え目に言って、結婚して欲しい。
……殺気⁉
身の危険を感じるとともに、太ももをつねられる。
「痛いよしんか! どうしたの⁉」
「何となく」
不満気な表情だ。
頬を少し膨らませているのが、子どもっぽくて可愛らしい。
「じゃあ、1年『い組』からお願いできるかしら?」
生徒会長の言葉をきっかけに、左端に座る小柄な女の子が席を立つ。
長めの髪は緩やかに波打ち、濃い青色に染まっている。
しかし彼女の体からは、背中を見た通り、やはり精霊が放出されていない。
「1年『い組』委員長――朽縄らんです。先輩方お見知りおきを」
涼やかな振る舞いは、深窓の令嬢といった様子だ。
「同級生の皆さんもよろしくお願いします。皆さんのご迷惑にならないように頑張りますね」
そう言って微笑む彼女の目。
彼女の瞼は
彼女は生まれつき
しかしそれを感じさせない、流暢な言葉と仕草。
一通りの挨拶を終えると、彼女の顔が僕に向けられる。
「よろしくお願いしますね」
柔らかい言葉と笑顔は、魅力的の言葉に尽きる。
「次は私だな」
青の少女が着席すると、僕の隣の筋骨隆々の男が立ち上がる。
「1年『ろ組』委員長――玉桜たつやだ」
茶と金の入り混じった短髪。
同色の瞳には、強い意志が垣間見える。
精悍な顔立ち。
紡がれる言葉は、乾いた響きを伴っている。
……土の精霊たちが凄いな。
一言一句に呼応して輝きを増している。
精霊からの好かれ方は、ひょっとするとしんか以上かもしれない。
彼は名乗ると、すぐに席についてしまう。
意外と控え目なのだろうか。
座席の順番的に次は僕の番だ。
「僕――」
「1年『は組』委員長――
「しんか! なんで僕を飛ばすのさ⁉」
……座席の位置的にしんかよりも僕が先でしょ!
「ごめん。ちゃんとする」
しんかは謝ると、改めて室内の皆に向きなおす。
「こっちは召使い兼私の友だち兼委員長――
……違う! 召使いとして紹介して欲しいって意味じゃない!
満足げに胸を張るしんかの様子に、許してあげたくなるけど、そうじゃない。
既に紹介の終わった「い・ろ組」委員長たちが、怪訝そうに見てるじゃないか!
「1年『は組』委員長兼しんかの召使い――黒白きょうえいです。よろしくお願いします」
咳払いをして、ちゃんと委員長としての挨拶をする。
やはり役員決定戦での契約は、召使い引退にすべきだったかもしれない。
友だちは契約しなくてもなれただろうし。
「『は組』は今回アクシデントもあって、委員長二人体制になっていますね。
お二人共よろしくお願いします」
委員長二人の
素晴らしいお姉さんだ。
「きょうえいはお姉さんが好き」
「やめてしんか! 人前でそんなこと言わないで!」
否定できない辺り、質が悪い。
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