第1話①
−−もしこの世に天帝と言う者がいるのなら、とうの昔にこの王達の治政を嘆き見切りをつけていただろう。
東方に『春の國』。西方に『夏の國』
互いに肥沃で広大な平地を持ち、山河山水緑豊かな富を国を与えておきながら、住まう者には殺戮と恐怖と飢えしか許されないなど、馬鹿げている。
しかし、それが現実なのだから目も当てられない。
隣の芝生は青く見える。
誰が言い出したのか、言い得て妙である。
互いに互いの国の豊かさを妬み嫉み、奪ってやろうと戦いに明け暮れ早千年。
いつしか国は血と涙で穢れ、天帝とやらが住まう北の最果ての
民子を攫って行くようになった。
餌になって喰われたか、はたまた境遇を哀れんだ天帝の慈悲の使者か。
分からないが、1人減ったら2人増やせば良い。
そうして雪だるま式に増えた民子を束ねる一握りの王族…
東は『
西は『
千年続いた怨念の系譜に、新たな王の戴冠を告げる玉音が木霊する。
−−春日に
−−即位。
と…
−−果たして。
北が天帝の棲む宮なら、南に住まうのは
此れ即ち
南の島…『
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