鬼道検知ナイケンDK FREEDOM
澄岡京樹
2Hell DK
ラブラブカップルのツヨシとカヨコは、同棲するための内見をハシゴしていた。
「さっきの部屋よかったな、カヨコ」
「うん。ただの2LDKじゃなかったのが特によかったね」
「なにせ2LDKWだもんな。そう来たかって思ったぜ」
だが二人の表情はやや翳っていた。理由はこちらで語りません。二人の会話を見てみましょう(英語の教科書)。
「でもさ、さっきのとこ、異様にゴージャスすぎた上にたぶん内見ハシゴを警戒されたんだよねあれ」
「ああ。『ここの大家はガンバレル! 敷金礼金ゼロキャンペーン!』だったが、代わりに一週間お試しが即座に始まるとはな」
どうにも、二人の同棲生活はすでに強制的に始まってしまったらしい。闇の太っ腹キャンペーンだったのかもしれない。
だが二人は諦めずに何度でも内見をしてやるぞという思いで普通に二件目の物件にやってきた。
「お待ちしておりました。こちらが今回内見していただくお部屋となっております」
目が笑っていないのが特徴的な、妙な不動産屋であったが、ツヨシもカヨコもお互いに【キミしか見えない】とかいうバフなのかデバフなのかわからない特殊状態になっているため、特に気にしていなかったが、部屋に入ろうとドアを開けたところ、そこには闇と血と悪鬼羅刹の類が跋扈していた。
「カヨコ、どうやら俺たちは騙されたようだぜ」
「何これ、ドッキリ?!」
「敷金礼金Zeroに釣られちまったぜ……」
二人は謎の超常現象を前に、逆に冷静だったのだが、不動産屋、もとい地獄商人-ヘル・セールスマンが狂気の笑みでこう語る。
「敷金礼金ゼロォ? シャバの尺度で語らないでいただきたいですねェ! 正しくは『屍鬼禁・霊禁・零』ですよォォォォォーーーーー!!」
読者の皆さんはよくわからないと思うので補足すると、屍鬼とか霊とかが寄らなくなる結界とかがあるんですけど、ツヨシとカヨコが内見に来た二件目のアパートは、それらの結界がゼロなアパートだったということです。こわいですねぇ。
突然のピンチに陥るツヨシとカヨコ。人間の恐怖の感情を貪り、あとなんかそのまま人類をムシャムシャしたくなりがちな地獄商人-ヘル・セールスマンは、その衝動を既に抑えられなくなっており、今にもツヨシとカヨコに襲い掛かろうとしている。地獄商人-ヘル・セールスマンは上級魔族らしく、背後の悪鬼羅刹の類は、彼に先んじて襲撃をかけるつもりはないようだった。
「ククク……やはりこうやってシャバで衝動のままに暗躍するのは楽しいですねェ……。
——さぁ! 早く私にその恐怖に歪んだ顔を見せてくださいヨォ! むしろ内見していたのは私だったのですよォォォォォーーーーー!!」
そう高らかに叫んで、
——だが。
「——バカな?
なんだ、その『武器』は……?」
顔を苦悶に歪ませたのは、地獄商人の方だった。
彼の腹部には既に、何かで貫かれた空洞があった。
その空洞は、強烈な熱線によるものだった。
ツヨシとカヨコは、二人で何かメカニカルなビーム砲を構えていた。
「ツヨシくん、意外と役に立つねこれ」
「ああ。部屋を見に行ったら要塞だった時は『は?』ってなったが、こうやってその一部を武装として持って来れるのは結構アドだな」
「バカな……それは2LDKW……敷金礼金ゼロだとしても……賃料はバカデカいはず……!?」
痛みと驚愕に表情を歪ませる地獄商人に追加で射撃の構えを取りながら、ツヨシは続けてこう言った。
「大家がガンバッてくれてな。無料お試し期間を設けてくれたんだよ。だからこうして俺は
Two《連装式》
Lightning《光反射型》
Drive《駆動》
Killing《殺戮》
Weapon《兵器》
略して2LDKWを装備することができたんだ」
「バカな、そんなバカなァァーーーーー!!」
放つ光、闇を照らす。
二人の放った愛の陽電子ビーム砲の光は、常世に増築された地獄を、元凶の地獄商人諸共粉砕した。
「でもさカヨコ」
「何?」
「これ国家予算クラスの物件だからやっぱ普通のアパートにしようぜ」
「賛成〜〜♡」
爆散した極小地獄に背を向けて、二人は笑顔で歩いて行った。
鬼道検知ナイケンDK FREEDOM、Fin
鬼道検知ナイケンDK FREEDOM 澄岡京樹 @TapiokanotC
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