第8話 絶望と絶望

ープレイヤー・ムニュルー

 陣営ハイサイ



「うわー!」

「逃げろ逃げろ!またあの火が来るぞぉ!」

ドオォォォォォン!

 ハイサイは最初の街だし、出入りできる門は一つだけ。だからこそ楽できる。そう思っていた時期が俺にもありました。

「おいおいおいおい、無理だろぉ!!!」

【従属の爆炎・メイトゥ】

 俺達がモンスターに対処していると、そいつは突然やって来た。そいつは攻撃が当たっても全く怯まず、地面に拳打ち下ろした衝撃で炎が走り、ハイサイの街は壊滅寸前だ。

 デスペナがないとは言え、死を覚悟であいつに特効する同士プレイヤー諸君には頭が上がらない。

 今のところ俺はメイトゥの観察や体力計算を担当している。これでも、リリース初日勢だ。ダメ計算は頭に入ってるぜ。



 ……っ!メイトゥの挙動が変わった!

 このゲームではモンスターの名前に"・"が付くモンスターはレアモンスターやストーリーモンスターと公式で紹介されていて、体力が半分になるとパターンが変わる。

「皆ー!メイトゥの体力が半分になったぞ!

 計算的に………体力は五万だ!」

「はぁ!?」

「ふざけんな!」

「クソゲーだろ!」

「何とかしろよ!」

「俺に文句言うなアホが!メイトゥに集中しろや!」

 俺が怒鳴り声を出した瞬間、さっきまで声を上げていた四人は燃えつきた。

「………やば!」

 俺はプレイヤーの中でも敏捷が高いのもあって、メイトゥのヘイト稼ぎもしている。今はハイサイの街の中を円になるように逃げている。ここから真っ直ぐ行かれてしまうと、NPCが非難している建物まで破壊されてしまうからだ。クエスト欄に、NPCは復活せず、その街のNPCが全滅した場合、その街は復興することが出来ず、地図から消えてしまうとかかれていた。

 さっきも言ったように俺はリリース初日勢。見慣れたこの街がなくなるのはなるべく避けたい。






「よし!良いぞ!メイトゥがスタンに入った!同士プレイヤー諸君!リンチだぁー!」

「「「「「「「おぉぉおう!!!!」」」」」」」

 俺も魔法でメイトゥに追撃する。


 そろそろだな。

「おぉぉぉぉぉ……………」

 メイトゥが崩れるように消えた。

「メイトゥ倒したぞー!」

「「「「「「おぉぉぉ!」」」」」」

「よぉーし!俺達も散開して雑魚をやるぞ!」

「おぉ!あいつらに任せきりだもんな!」

 メイトゥ討伐に参加していないプレイヤー達に楽をさせようと全員が四方に散る。

 こういう討伐は、クエスト終了のリザルトで報酬が分配される。メイトゥ討伐に参加できなかったプレイヤーへの申し訳なさから出る言葉だ。


「よし、俺も雑魚に………っ!?

 お前ら!……あぁ………」

 気づくのが遅かった。気づいた時には、さっきまでメイトゥにトドメをささんと群がっていたプレイヤーが全員チリとなった。

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「……悪夢かよ。」

 【従属の爆炎・メイトゥ】が復活した。






ープレイヤー・サスマター

 陣営プライム南門


「おん?アラータから連絡?」

 珍しいな。こんな機能があったこと自体忘れてたぜ。

「どうした?」

『サスマタ!お前今どこにいる!?』

「あ?プライムの南門だけど。」

『お前、今すぐ西門に来てくれ!頼む!防衛突破されそうなんだ!』

「なに?なんかやべぇのが来たのか?」

『あぁ!多分ディザスター絡みのモンスターだ!お前、レアモンスターには目がないだろ!早く来てくれ!』

 アラータはそう言って通信を切った。

「………しゃーねぇー、行ってみるか。」

 雑魚狩りも飽きてきたし。

 俺はカッコ良く【無頼のマント】を翻して駆け出した。


プライム南門→プライム西門


「は?なんだあれ?」

 遠目だが、プレイヤーが空を舞っている光景を目撃した。

 急いで近付いて現場に着くと、そのモンスターが目に映った。それよりもまずは、

「おい、アラータ!どこだ!」

「ん?お前あれの知り合いか?」

「お前は……?」

「俺はタクミナトウカイオーだ。」

「お、おう。それであいつは?」

「アラータってプレイヤーなら用事があるわっていって逃げたぞ。」

「…………あんのクソヤロー!」

「お前もあれと戦うなら気を付けろよー。俺は雑魚狩りしてくるから。」

「あ、ちょっ!」

 タクミなんちゃらは颯爽と走り去っていった。


「しゃーねー。」

 俺はそのモンスターを観察する。

 【従属の大波・オンメイ】か。

「とりあえず、近付いて攻撃だな!」

 俺は対峙しているプレイヤー達を掻い潜ってオンメイの後ろを取った。

「一気に決めるぜ!【刺股・高速突き】!

 …………なぁ!?」

 俺の刺股はオンメイの身体を突き刺すも、手応えはない。

「はぁ!?身体が水……ってことぉ!?」

 俺に気づいたオンメイは、拳を掲げて俺に振りかざす。

 ……あ、終わった。

バッシャアァァァ!!

 その音を最後に、俺リスポーン地点として更新されていたプライム西門付近で復活した。

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