第7話 楽観と悪巧みと特攻

プレイヤー・カイヒノキ

 陣営・コトナリ南門


「もうすぐだねぇ。」

 コトナリで買ったコロッケを食べながら私は呟く。

「少しは緊張感を持ちなさい、ヒノキ。」

 ユーランがやれやれと言った感じで私の肩をたたいてきた。

「でもぉ、戦うの苦手だしぃ。」

「良いの?ヒノキがサボったらコトナリの美味しい料理店が失くなるかもしれないのよ?」

 なんだって!?

「それはダメ!」

 ここには美味しいお店がいっぱいあるのに!

「じゃあ、頑張ろうね。」

「そうだね!」

 お店は私が守らないと!

「やる気を出してくれて何よりよ。

 ………………そろそろね。」



「来たぞぉぉぉ!!」

 他のプレイヤーが叫ぶと、遠目からでも分かるような土煙が起こる。



「うひゃぁぁ!どうしよう?」

「落ち着いてヒノキ。あなたは冷静に攻撃をして。私が全部抑えるから。」

「わ、分かったよ!」

 ユーラン、かっこいい!


 

 モンスターがやってくると、ユーランは持っている大盾でモンスターの攻撃を防ぎつつ押し返し、モンスターの体勢を崩すように立ち回る。

「あ、私も戦わなきゃ!」

 私はスキルの土魔法を唱える。

「ロックガン!」

 地面にある小さな石を操って一つの、拳大の石にして、勢いよく射出する。

「当たった!」

「ヒノキ!続けて!」

 ユーランが笑顔でサムズアップをしてくれた。

「分かったよ!ロックガン!!」

 お店とユーランのためにも頑張らないと!











プレイヤー・ゴルマッチョ

 陣営・コトナリ西門


「来たか……ペーパー、ランポ、ゴル、準備は良いな?」

 リーダーあおざかなが号令をかける。他のクランのプレイヤー達も気合いを入れるように叫ぶ。

「戦闘はいつも通りで良いな?クラン鹿馬行くぞ!」

「「「おう!」」」



「ペーパー、補助ナイス!」

「ランポ、もっと魔法をぶちこめ!」

「ゴル、攻撃よりもヘイトを優先で!」

 あおざかなは流石リーダーと言える活躍をしていた。指示をしながら槍を使って牽制と攻撃とヘイト管理を同時に行っていた。



「なんか全然強くないな!このモンスターの群れ!」

「ゴルやめろ!フラグに………」

「………なったみたいだねぇ。」

 ランポが呟くと、前からノシノシと重厚な音が聞こえるような足音をたてて、モンスターがこちらに向かってやってきた。

「あんなの見たこと無いぞ?」

「【従属の雷鳴・トュファ】?雷ブッパなしてきそうだな。」

 ペーパーライスの言葉にリーダーあおざかなが顎に手を当てて、考え込む。


「クラン鹿馬、退避!」

 現状を見たあおざかなは俺達に逃げるよう声を上げた。俺達も死にたくはないのでこれ幸いとばかりに走って逃げた。

 後ろ目に見たが、トュハァに突っ込んでいったプレイヤー達が消し炭にされていた。



「どうする?あおざかな。」

「どうもこうもなぁー」

 ペーパーの問いに頭を抱えながら呟く、リーダーあおざかな。

「他のクランに任せちゃーう?」

「うーん……でもそれはなんか勿体無いよなぁー!」

 それはそう。絶対レアドロップがあるって俺の筋肉が訴えてるからな!

「やっぱ……漁夫る?」

 俺が即座に提案する。

「漁夫るか?」

 ペーパーも同意した。

「……漁夫りますか!」

「「「おう!!」」」

 楽しくなってきたねぇー!












プレイヤー・アータッキー

 陣営・コトナリ北門


「なぁ、ワテトラ。今何デス?」

「今三デス。」

「一緒やん。」

 俺とワテトラでグータッチをする。

「にしても、あれ頭おかしいだろ。ぜってぇ、調整ミスだって。」

「確かに、言えてるわー。」

 あれ…突如として現れた【従属の暴風・ファオン】が来てから北門の防衛はほぼ詰みだ。広範囲の風魔法攻撃、スカされる物理攻撃、魔法を当てても怯まないボディー。北門にいたプレイヤー百十三名による玉砕覚悟での戦闘がずっと続いている。この手のゲームで珍しく、この場のプレイヤーが損得無視して、あのモンスターを倒そうとしている。



「行くか?」

「……行くか!」

「「せーの!」」

 掛け声と共に岩影から姿を晒し、有効な攻撃を使う。

「セイントランス!」

「フレイムアクス!」

 ワテトラが槍の形をした光魔法を、俺が斧から射出した炎の塊をファオンに向けて打つ。


 だが、それが当たる前にファオンが出した風魔法で俺達ごと攻撃が切り刻まれた。

 一撃で俺とワテトラのHPバーがゼロになった。


「「………おかしいって!」」

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