第4話 緊張と変態
???・カイン
うわぁ……集まってるぅ~
胃がキリキリしてきたぁ~
プレイヤーとは話したけどこんな大勢来るなんて…アップデートの反響で少しはアクティブが戻ったのかなぁ?うぅ…こんな底辺ゲームに来なくて良いのに…
吸ってぇ……吐いてぇ……吸ってぇ……吐いてぇ…
「皆、来てくれてありがとう。
知ってるかもしれないけど、僕の名前はカインだ。
実はここ数ヶ月で、この大陸に災害のような存在が多数発見されたんだ。
そこで、無理を承知で頼みたい。君達旅人にその災害を倒してくれないだろうか?」
僕は頭を下げる。この時に、緊張を緩めて顔を解す。プレイヤーの皆には目の前のウィンドウにクエスト受注の表示がされてるはずだ。
このイベントは今まで根気よく我々のゲームをプレイしてくれていた人達への我々なりの感謝である。
レベル10というのはアップデート前からプレイしていれば大体は到達する。逆にアップデート後だとハイサイのモンスターの弱体化と経験値量減少により到達できないように設定している。
卑怯とか言わないでね?
……緊張でプレイヤーのボイスを最小限にしてるからよく聞こえないが、盛り上がっているのは分かる。
どうやら全員(条件を満たしていない者は除く)が受注したようだ。合計で二千弱か。
……さあ、ここからだ!
「皆、引き受けてくれて嬉しく思う。
本当に……ありがとう!」
僕は手を天にかざし、台本通りにいくことを願う。
頼むよ!オーディール、社長!
プレイヤー・サスマタ
受注受注と。
どっかの誰かがハイサイはチュートリアルとか言ってたけど、そうなのかもな。ワールドクエストなんて初めて聞いたし、これからもっと面白くなりそうだ!
へッへッへ、金を貯めて真鍮の刺股二本持ちになれたし、怖いもの無しだぜ~。
「皆、引き受けてくれて嬉しく思う。
本当に……ありがとう!」
お?まだなんかイベントがあるのか。
カインが手を天にかざすと、周囲が白い靄で包まれる。
おぉ、夜の戦闘で【暗視】のスキルを取っといたのにそれでも見えないってことはやっぱイベントか。
そろそろ晴れてき……た?
「さぁ、皆の力を見せてくれ!」
目の前には黄色いドラゴンがカインの声で喋った…………つまり、カインってドラゴン!?
「ちょっと待て!カイン!どういうことだ!」
お、代弁者は…トウマ………あぁ、春イチバンていうクランのリーダーか。このゲームで一番のトップランカーだったはず………多分。
「う……………そう、だね。説明するよ。
皆、今まで黙っていてごめん。僕も一応、この大陸に現れた災害の一人なんだ。
けど勘違いしないで、僕は君達の味方だ。ここは僕が作ったフィールドで、どんなに暴れても周りに被害は無いよ。今の皆がどれだけ強いのか、災害がどれだけ強いのか、分かると思ったんだ。
先に言っとくけど、僕は災害の中でも最弱だよ。
準備が出来たら声をかけてくれ。」
えぇー、いきなりボスイベ?強さが分かるって絶対ヤバイじゃん。
「ちょっと良いか?」
「なんだい?トウマ。」
「デスペナとかはどうなっている?」
「心配ない、このフィールドならデスペナもないし、フレンドリーファイアの心配もないよ。それと、体力がゼロになったら身体が半透明になって戦闘に参加出来なくなるだけだし、僕との戦闘が終われば元に戻るから安心して。」
「そうか、ありがとう。」
トウマってやつ、トップランカーだけあって行動力がすげぇな。
「ここにいる皆では、束になっても勝てないだろう。だからこそ協力してダメージを稼ごう!」
「けどよぉ、協力ったってなぁ?」
あれは…アラータかよ。あいつもソロ好きだよなぁ俺も人のこと言えんけど。
「カイン!ダメージ量によって報酬が増えるとか、ないか?」
「んーーーそうだねぇ。一番ダメージが多いって言ってもあれだしぃ……そうだ!
この戦闘の制限時間を五分にする。五分間生き残れれば今回限定のアイテムを上げよう!
そして、最も攻撃を当てたものと最もダメージをガードしたもの、更に最も体力を回復させた三名にはそれぞれ今回限定のそれに適したアイテムをあげよう!
これでどうかな?」
「……分かった。」
「すまない、先程は協力と生温いことを言ってしまった。謝罪する。我々春イチバンは全てのアイテムを狙わせてもらう!」
やっぱそーなるよねぇー!
ここにいる人達でソロなのは俺と…アラータだけか。あいつと協力……はないな。どっちもアタッカーだし、攻撃当ての報酬で被るから…ライバルだぜ?
俺は目線を飛ばす。全然こっち見ないじゃん……一体何を……は!?
あの野郎!女子二人組にナンパして……………成功しやがったぁ!!!
このゲームでは性別を変えられないし、あの女子プレイヤーは盾持ちと魔法使い!噛み合っているぅ!!
もしかして………ソロって俺だけ?
結局仲間は見つからず、俺だけボッチ…辛いです。
俺はカインドラゴンの右斜め後ろに布陣する。場所はじゃんけんで決まった。
うぐぅ、右隣も左隣も現在の最大ギルド人数の五人だぁ、十人分の圧がすげぇ……
左斜め前に布陣する春イチバンのトウマが声を上げた。
「カイン良いぞ!」
「分かった。」
カインが返事をすると、目の前のウィンドウに戦闘開始の決定ボタンが現れた。
しゃーねぇーどんなに不利でもやってやらぁ!
【ディザスター・友愛交誼のカイン】
名前色々やべー、物騒と穏やかが混ざりあってる。
「さぁ、見せてくれ!」
……俺はとりあえず様子見だな。
そりゃ限定アイテムは欲しいけどよ?まず優先的には五分間の耐久だよな。やっぱ安牌が一番よ。
おーおー両隣のクランが競うように駆け出してらぁ。俺なんか眼中に無いってか、それで良いけどよ。
右のクランは近接が中心で、左のクランはかなりバランスが良いな。右のクランは考え無しに突撃してるけど、左のクランは剣士に攻撃を集中させてる。他は回復役とバフ役、盾役におぉ、更にバフ役か。後者のバフ役は盾役用かね?
いやーちょっと見ただけでも経験の差ってやつ?が出てるねぇ。
おっと、カインのしっぽが動いてる。しっぽの凪払いが来るかもな。
ビュオォォ!!
「え………」
やっば!風圧やっば!アップデート前じゃこんなの無かったじゃーん。流石、待たせるだけあるねぇ。
おや、右のクランは全滅で……左のクランは盾役と盾役用バフ役が後退して回復してもらってるな。
「んー左のクラン、やっぱ手慣れてるなぁ。」
そろそろ一分、動くか。
「せりゃ、とお!」
俺は刺股を右手、左手の順でカインに突き刺し、一気に後ろに飛び退く。さっきからヒットアンドアウェイを繰り返してるんだが、分かったことがある。
刺股はこの戦いにおいて最強であると。
何?根拠を言えって?
……フッフッフ、なら!教えてやろう!
カインは最も攻撃を当てたものと言っていた。本来なら剣を一回降れば一回だろうが、俺の刺股は一突きで二回、更に二刀流により一回の攻撃で攻撃が四回当たった判定になるのさ!
「あぁ、俺の刺股ちゃん!最高だよぉ!」
今のは自分でもちょっとキモいと思ったが、ゲーム内だし関係ねぇー!
ちなみに左のクランは盾役がスキルを使うためのMPが枯渇したところをやられてそのまま瓦解した。
今は右のクランと共にヤジを飛ばしながら観戦をしている。なんか、負け惜しみみたいで聞いててめっちゃ良い気分なのは内緒だ。
うし、後三十秒!二千人位はいたプレイヤーが半分位には減っている。それに、一回もダメージを受けずにいけてるのは俺だけじゃなかろうか?いやーそれでも報酬あれば良かったんだけど……後で聞いてみよ。
「良いね!なら、これはどうかな!」
カインが動いた!
おぉおぉ!あれはもしや、やっぱブレスだぁー!
やべー!範囲広すぎ!正面にいた奴ら絶対死んだな!まさか生き残ったプレイヤー全員でドラゴンのブレスとおいかけっこをする羽目になるとは!
くぅ、後二十秒か、アバターとは言っても精神的には疲れるもんで、何人ものプレイヤーが転ぶ度、ブレスに焼かれていく。
残り十秒、ブレスが止まった!
よっしゃあ、ヒット稼ぎじゃー!
こうなりゃ最後に残しておいたMP、全部使うか!
【刺股・高速突き】
これは突撃の性質を持った武器で使えるスキルで、一秒間に五回の突撃性の攻撃を二秒間行う。
俺はMPにスキルポイント振ってないからこれ一回分しかMPが無いわけよ!
「ふう、時間だ!」
ピーン
音の高い音が鳴ると、霊体になっていたプレイヤー達が元に戻っており、カインも人間の姿になっていた。
「それじゃあ、バトルリザルト!」
カインのその一言に生き残ったプレイヤーも霊体になったプレイヤーも結果が待ち遠しくて雄叫びを上げる。
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