第2話 新要素と新発見

プレイヤー・トウマ


「集合は確か……ハイサイの噴水前か。」

 とりあえず、クランメンバーとアップデートの確認をする予定だ。


「ヤッホー、トウマ。今月のノルマはどうだ?」

 こいつはアキト、少しお調子者だが悪いやつでは…ないかもしれない。

「まだまだ、かかるよ。というかそんな話をゲームの中でまでしないでくれ。」

「ハハハ、悪いって。」

「さっさと行こうぜ。」

 こいつは加糖ぱん。名前の由来は糖尿病だかららしい。

「あれ?枝豆次郎は?」

 俺は最後の一人の所在を聞く。

「あいつは、装備を整えるんだと。だから魔の森前の門で集合だ。」

「そうか、了解。」


 その後無事に枝豆次郎と合流し、モンスターが出現する森を警戒しながらアップデートについての話を始める。

「それにしてもリリースから半年でやっとアップデートかぁ。遅いと言えば遅いよな?」

 アキトがあきれ気味に声を出す。

「まぁ、言われればそうだが……」

「そろそろ、お前のパイニヤーに対しての株を少しは下げても良いんじゃないか?」

「そうだよ、俺達の青春を彩ってくれたからと言っても今では他に有名なところなんていっぱい出てるしさ。」

 加糖、続いて枝豆が諭すように話しかける。

「良いんだ、俺はこの会社のゲームが好きなんだ。」

 

「ま、どうでも良いけどさ。

 それより、モンスター全然出ないな?」

「なんか変わっ…!」

 枝豆の目付きが変わり先を見ると、適度な大きさの岩に腰掛ける人影が見えた。

「敵か?」

「……いや、NPCっぽいな。」

 マッピング担当の加糖ぱんが言う。

「む、そうか。じゃあ、俺が話しかける。」

「よろしく、リーダー。」

「ああ。」



「こんちわ。」

「おや、旅人さんかね?」

 白髪の男性が優しい笑みを浮かべてきた。

 これがアップデートのやつかな?

「そうです。どうしてこんなところに?」

「実はここ数日でこの魔の森から魔物が減ったのよ。だから、今までは交流がなかった魔の森の先の街と交流が楽になってのぉ。旅人さん達も準備が出来たら行ってみなさい。」

「そうか、ありがとうお爺さん。」

「ホッホッ、礼には及ばんよ。」



「…て、ことらしい。」

「へぇ~、今度はハイサイよりも広いマップだと良いねぇ。」

「いやいや、半年も掛けたんだ。それなりの物でないと満足できないね。」

「とりあえず行ってみよう。話はそれからだ。」

 俺達四人は少し早足で森を歩いた。









「お、そろそろか。」

 森の中の魔物は、前よりも弱体化しており、出現割合もかなり低くなっていた。



「すごい……」

「うっひゃあ、立派な門だなぁ!」

「確かに、グラフィックというか細部の作り込みがハイサイとは全然違うな。あれはチュートリアルみたいな物だったってことか。」

「まぁ、所詮最初の街だし。」


 俺達は感想もそこそこに門に向かう。

「うわぁ、近くで見てもすげぇ!」

 アキトがはしゃいでいるがその気持ちは分かる。俺も内心興奮していた。

「おや、新しく来た旅人の方達ですね?こちら大陸の地図を渡しておきます。」

「あ、ありがとうございます。」

 加糖ぱんがそれを受け取り、一先ず落ち着ける場所を探す。

「お、あそこのカフェ良いんじゃないか?」

「そうだな。」


「おぉ、今回から食味も体験出来るって書いてあったけど美味しいな。」

「うん、確かに。」

 ただのアイスコーヒーだが、味が分かるという興奮で更に美味しく感じられる。他のゲームでは既に取り入れられているが、好きなゲーム会社でされるというのが一塩なのだ。

「さて落ち着いた所で、さっきもらった地図見ようぜ。」

 加糖ぱんがワクワクした様子で提案する。

「よし、見るか。」

「待ってました!」

 地図を広げると、ハイサイと書かれた街の周りにたくさんの街や森があった。ハイサイの街が東京だとしたら地図全体が中国並みにでかい。

「へぇ、魔の森ってアズーラの森って言うんだ。」

「この街は……プライムっていうんだな。」

「とりあえず、武器防具を見ようぜ。どれくらい性能が変わるのか確認しないと。」

「よし、観光がてら装備の調整に行くぞ!」

「「「おぉー!」」」













プレイヤー・カイヒノキ


「んんーー!このケーキ美味しい!味覚の導入ってこんなにすごいんだね!」

「そうだね。味はそこそこだけど。」

「ちょ!そういうのやめてよぉ。」

 友達のユーランがズバッと切り捨てるように言葉を放つ。

「それよりも、外に出てモンスターを倒すのはいいの?」

 ユーランがブラックコーヒーを持ちながら聞いてくる。

「んーとりあえずは観光が優先かなぁ。私達はそこまで攻略優先ではないでしょ?」

「そうだね。でも、ヒノキはなんでこのゲームを始めようと思ったの?私はヒノキに誘われたからだけど、ヒノキは違うでしょ?」

 不思議そうにユーランが尋ねる。

「それはね?

 まだ小さい頃にね、お父さんがやってたゲーム古いゲームがあってね?それをやらせてもらってたんだ。で、そのゲームがこのゲームの開発社だったってわけ。お父さん丁度、仕事が忙しくなっちゃってさ、悔しそうにしてたの。たがら私がプレイしてお父さん教えてあげるんだ!」

「出た、ヒノキのファザコン。」

「ち、違うもん!」

 そりゃ、お父さんのことは好きだけど、それを認めたら負けな気がするよ。





「ふぅ、食べた食べた。」

「次は……ねぇ、あれってクエストじゃない?」

「確かに、青いマークが出てるからそうだね。」

 私とユーランは目を合わせる。

「「行こう!」」




「すみません、何かお困りですか?」

「え?どうして?」

「えぇ?いや…えっとぉ……」

 うわ!どうしよう、不審者になっちゃうぅ!

「勘ですよ、勘。」

「そうでしたか。実は困っていたんで、助かります。」

 ナイスアシスト!ユーラン!

 持つべきは友だね!

「それは良かったです!何でも言ってください。」

「それは心強いです、僕の名前はカイン。実はアズーラの森である物を落としてしまったんです。」


 お使いクエストっぽい?

「ユーラン、いい?」

「好きにして。」

 

「手伝わせてください!」

「ありがとうございます。」

【クエスト・カインの落とし物】





「とりあえず、アズーラの森に来たけど……どこだろうね?」

「本人が分からないって言ってたんだからどうしようもないでしょ。」

 うーん……こうゆうのって深い方にあるとか、モンスターが持ってってるって感じだろうけど……何も言ってなかったし探せばあるかな?


「でも、モンスターが弱くなってくれて助かったね。私達あんま強くないし。」

「レベルも低いしね。」

 二人で喋っていると、少し先のマップに光を放つ場所があった。

「これ……かな?」

「これ……だね?」

 何はともあれ行ってみよう!



 そこはかなり雑草が生い茂った所だった。

「ここから探すのぉ………」

「さっさと行こ。」

「うぅ……」


 探し始めて一時間程、ようやく見つけることが出来た。それは、刀身に何かが彫られた短剣だった。

【真鍮の短剣・刻印】

「この刻印って何だろー?」

「さあ?戻ろ。」

「ちよっとぉ急かさないでぇ。」






「見つけてくれたんですね?ありがとうございました。」

「いえいえ、とんでもない。」

 すごいなぁ。ハイサイではこんなに表情が動かなかったのに……アップデートってすごい!

「お礼と言っては何ですが、ここを真っ直ぐ行って左に行くと鍛冶屋があるんです。そこの店主は気難しいんですが、私の名前を出せば利用することが出来ると思います。」

「それって、刻印ってやつも?」

「そうですね、詳しくは鍛冶屋で聞いてください。」


【クエストクリア】

「おぉ!やったぁ!」

「ヒノキ、どうする?鍛冶屋に行く?」

「んーー疲れたから甘いもの食べよう!」

「………………そう。」

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