ダメなのに。
★過去編
三笠さんの話2です。
はやく諦めないと。
ーズキッ
ダメなのに。
ーズキズキッ
涙が止まらない。
ーズキズキズキッ
***
家に帰ってからも、学校でも、ずっと、ずっと、和達さんのことが、頭から離れない。
彼女のことを見かけたら、絶対、急いでいようとも足を止めて、遠目から観察してしまう。
前なんて彼女のことを見るのに夢中になるあまり先生との約束に初めて遅れて、怒られるどころか、
何があったの?と心配されたことがあった。
みょうに突き刺さる、心からそのまま出たような言葉、
優しいように見えてクールで鋭く、時に憂愁の美を漂わすきれいな目、
高くもなり低くもなるその独特な声、
独特なオーラ、、。
不思議だ、、本当に不思議だ。不思議ちゃんってああいう人のことなんだ。
見れば見るほど、興味深く思えてくる。
これが恋愛対象としてか、人間としてか、と聞かれるとまだ答えるにはデータが足りない。
***
データ集めのため、和達さんの観察を重ねて、1年が経った。
中1が終わり中2になって、はやくも先輩となった。
私は1年間、あの日、和達さんと会って以来、毎日、暇があればずっと、長期休暇期間中でさえ彼女のことを考えていた。あの日以来実際に直接話すことはなく、疎遠になっているのに、考えてしまっているのだ。
「ねぇ神木、どう思う?」
「しらんわぁ」
「え、ひどくない?」
「だって、私、別に、同性のこと恋愛対象として見たことないもん、、、、、異性もだけど」
「実際私もそうなんだけどねぇ、、」
この話をしてから、少し神木の様子がおかしい。いつもより6割ましぐらいでどんよりしている。
幼馴染だからなんとなくわかるのだ。
相談相手をしくじった。
ここはそれなりにもててると噂の宇崎君あたりにするべきだったか、いや、でもそこまで仲良くないな。
今年はクラス違うし。
「ねぇ神木ー誰に相談したらいいかな」
「私らの身の回りにそういう経験のある人いなさそうだもんねぇ、、」
「でもさ、結構本気で、これは恋なんじゃないかって、思うの」
「1回しか、しゃべってないのに、、?」
神木が少し青ざめた顔で恐る恐る事実確認をしてくる。
そんなことあるのってかんじだよね、私も相談される側ならそういう反応になる。
「私、もっと和達さんのこと、、、茜ちゃんのこと知りたいなぁ、、て神木、聞いてる、、?」
神木はおでこに手を当てて目をつむり、少し苦しそうな表情をしていた。
ように見えたが、、具合が悪いのだろうか、わざわざこんな相談に付き合わせて悪かったなと反省した。
好きなんだよね、やっぱり、これが好きという感情‥
これが恋‥
そう思うとそんな気がしてくる。
そう思えば思うほど、想いは強くなり、、
その繰り返しで私は、気づけば、
彼女のトリコになっていた。
明確な未来は全く見えない。
一緒にデートするぐらいまでの未来なら見えないこともない。
だけど‥
私の初恋は始めから脈ナシなんじゃないかって思ってしまう自分もいる。
それは茜ちゃんだから、かもしれないし、
同性だから、かもしれないし、
こんな私だから、かもしれない。
こんな恋ダメなのに‥
はやく諦めないとダメなのに‥
気づけば、
私は神木にそうつぶやきながら涙を流していた。
神木は、私の顔をじっと見つめ、ただ一言。
「恋にダメなんてない、恋は自由だと思うけど」
そうかもしれない。
確かに何も頑張らずに諦めるなんて私らしくないし、普通に諦めたくない‥!
諦められそうにない。
私は決心した。
中学生の間に、必ず落として見せる。
氷河が和達さんを好きに、、?
別に彼女が誰を好きになろうと私には関係ないのに、
他人がどんな恋をしようと自由なのに、、。
、、心が痛む。
この気持ちはなんなのよ。
私だって聞きたいよ。
恋だと認めたらつらくなるから、私はまだこの気持ちが恋だなんて、認めていない。
***
へー、なるほどねぇ、、?
そんな食堂横のスペースでそれなりに大きい声でしゃべられたら、自然に聞こえてくるじゃないか。
俺以外周りにはいなさそうだったのが幸いだと思う。
和達さんが三笠さんに与えた衝撃、がまさか恋だったとは。
でも三笠さんの恋は8,24事件レベルに酷く砕け散るだろう。。
そう思った瞬間俺に酷い自責の念が降りかかってきた。
俺のせいだ。
和達さんが恋できないのも、三笠さんの恋がこうなってしまうのも。
俺たちまわりの元友達のせいだ。
彼女も、うまく感情をコントロールできなかった。
けど、うまく俺らがサポートしていれば。。もう少しましだっただろうに。
最悪だ、サポートどころか嘲笑して、8,24事件なんて呼んじゃって。
もし自分がその立場だったら、、
考えただけで身の毛がよだつ。
本当にごめん、せめて、
「せめて、三笠さんの恋を、、応援したいな、、」
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