トラブルメーカー

三島 瀧人


この学校でその名を知らない人はいない。三笠さんとは真逆の意味で。




そう、何を隠そう、この彼は、、、




学校一の「トラブルメーカー」だ。




***


今日も研究室に入り浸る。


もちろんレポートの期限も迫ってないのに、研究なんてするわけがない。


研究室で研究をしているように見せかけて先生の目から隠れ、こっそりとゲームをするのが目的だ。




最近はまっているソシャゲをチートを使いながらしようとか思っていると、厄介な2人が入って来た。


またあやつらか。。


「何の用だ、糸井と和達さん。」




糸井 輝、俺と一緒に研究をしているメンバーだ。


まじめな癖に成績が悪い。俺の面倒見役だとか勝手に言われている。




和達 茜、俺と幼稚園からずっと一緒の内部生。


糸井と共に、俺の面倒見役だと言われている。




「何の用も何も、おまえを引きずり出しに来た」


糸井が冷めきった目で俺のことを見て、俺の腕をがしっとつかむ。




「条件がなきゃ動かないぞ、今日こそ魔の最終ステージをクリアするんだ、、!」


必死に抵抗するが


「どうせチートをつかって、だろうが!!せめて自分の力でやれーーーい!!」


和達さんが叫びながらパソコンの電源をぶちっと落とした。


「うわ、何やってくれてんだよ!!」


和達さんに言ったつもりだったのだが糸井が反応した。


「こっちのセリフだわ、さ、研究するぞバカ」


「糸井だってバカだろ!」


「ああバカだ、だがおまえほどじゃあない」


糸井と言い争いになりかけたところで和達さんが待った、をかけた。




いつもよりも低く、深い、しずんだ声で和達さんが威圧をかけるかのように、不良のように話しかける。


「今日はなぁ、優しい優しい和達様と糸井氏が三島をわざわざ誘いに来たんだぜ、、、遠足のチームに」




遠足って、、あれか、毎年5月にある恒例イベント。


今回はバーベキューに行くことになったんだっけ。








俺は嫌われ者だ。


問題児、、トラブルメーカーだから。


ゲームばかりしていて頭は悪いし、運動もできない。




でもそんな俺でも、友達は大切にしているつもりだ。


糸井と和達さんは、果たして友達と言えるのかよくわからないが、もう見捨てられかけているこの俺にまだ更生する余地があるとして、こんなに気にかけてくれているあたり、友達と言っても過言ではないんじゃないかかと思う。




俺は本当に何もできない。


でもコミュ力、人脈、人間関係把握、ごまかすこと、あと英語に関しては、自信がありまくりだ。


そこに関してはいろんな人が現に認めてくれている。


だが、、、なんにせよ、嫌われているのはどうしようもない事実なので、この誘いはとてもありがたい。




「おけ、俺も入るわ、ちなみに他のメンツは、、?」


「えっとね、七瀬と羽生~」




天野 七瀬、和達さんの大親友だ。


俺は一応吹奏楽部なのだが全然行ってないので、吹奏楽部員には基本嫌われている。


要するに、、俺は彼女にだいぶ嫌われている。




羽生 昂輝、糸井の大親友であり俺や和達さんと幼馴染、幼稚園からずっと一緒だ。


少し不登校になりがちで、身長が高いのにゆるくて優しい男子だ。




「天野さんに嫌がられる運命が見えるが、、」


「私が懇願したらいいよって言ってくれたから大丈夫よ」


「ありがとう、これに関してはまじで感謝しかない」


すると黙ってみていた糸井がふっと言いながら横から割り込んできた。


「じゃあ、今日はゲームをせずに研究することだな」


「だが断る!」


「ちゃんとやれバカ」


頭を軽く殴られた。普通に痛い。




そんなバカやってるところに、三笠さんが通りかかった。


ぴたっと俺らの方を見て10秒ほど足を止めているようだったが、俺が気付いたからか、はっと気を取り直して歩きだした。




ふーん、なんかひっかかるな。


俺の人間観察眼が光った。


次の観察対象が決まった。




***


俺は次の日1日、三笠さんを観察してみることにした。三笠さんのスケジュールに合わすのは大変だったがすごい面白い考察がでてきた。観察結果に少しだけ付き合ってほしい。




観察開始


8時頃 


三笠さん登校。登校時間としては早い方だが、別にそこまで早くはない。




8時25分 


それまでずっと熱心に勉強していたのに糸井と和達さんが一緒に登校してきたのをまじまじと見つめる。鉛筆を落とす。(何かあるのか??)




8時40分頃 


朝の会終わり後、和達さんと天野さんに嬉しそうに話しかけに行く。


天野さんと三笠さんがたまに見つめあったまま固まっていた。(なぜ??)




1限終わり後 


神木さんに嬉しそうに話しかけに行く。


その時糸井と和達さんは見当たらなかった。茜ちゃんというワードが聞こえた。


神木さんは少し塩対応のように見えた。(なぜ??)




2限終わり後 


移動教室をするとき、同時刻に前方を歩いていた長谷川さん、和達さんのもとへ駆け寄りに行き、今日は寒いねと嬉しそうに話しかけに行く。


だがなぜか2人とも無視。(なぜ??)




三笠さんは気にしないように駆け抜けていったが、少し寂しそう、というかショックを受けているようだった。遠目から見てもわかるレベルのショックを受けているようだった。




12時10分頃 


ご飯を神木さんと共にゆっくり食べる。せっかちなのに食べるスピードはゆっくり、、?




あ、これは関係ないな。




掃除後


教室に戻る際、糸井と七瀬と和達さんを見かけて、歩くスピードを速める。


が、少し後ろのポジションまで距離を縮めて、スピードをゆるめる。


話しかけに行くことはなく、ただ様子を見て話を盗み聞きしているかのようだった。




放課後 


帰宅部エースの彼女にそんなものはない。彼女はチャイムの音と同時にちらっと和達さんの方を向いてからさっと神木さんと共に教室を飛び出していった。




観察終了




ふーん、、やっぱり、何かあると思った。


予想以上に面白い結果が得られた。




この内容から察するに、、








三笠さんは、和達さんが気になっているのではないだろうか、?










そして、ここではあえて言わないが、、その周りにも面白い関係が見えた。


1日でこれだけ関係を見抜いちゃうとは。さすが俺の観察眼。


和達さんに認められただけあるなと思った。


だが、あっているとは限らないし、もちろん自分でそうかな、と思うだけで、人には言わない。


トラブルメーカーとは言われるが、倫理的に間違ったことはしない主義だ。




あっているかわからない、が、もしあっているなら、、


俺のブラックノートこと、㊙人間観察ノートに書き加えようと思う。




誰も、このノートを奪いに来ようとしないので安心だ。


そもそもこのノートの存在を和達さんしか知らないからな。




俺は、和達さんの8,24事件の話も初恋の話もその他もろもろ全部知っている。


俺と和達さんはこのノートに関する秘密と彼女のその話とで、お互いに心に抱えた秘密を共有しあい、助け合っている。


だからこそ、チームに入ろうとわざわざ声をかけてくれたんだな、恩にきる。


彼女には本当に感謝しかないのだ。




そろそろ俺も恩に報いねばならない。恩は返す主義なのでな。




決心した。




まず、三笠さんの気持ちを確かめ、三笠さんの恋を応援する。


そうすれば、必然的に和達さんも恋ができるようになり、1番大きな彼女の悩みが解決される。




これだ!




恩に報いるため、彼女の悩みをなくすための明るい希望の糸が俺には見えた。


任せろよ和達さん、今に助けてやる。
















ブラックノート。


今、私が1番欲しい物。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る