再会は必然‥?

またチャイムが鳴った。


つい先ほど何をするか決めたばかりなのに、もう早速HR企画が始まるらしい。




HR企画って何をするんだろうと、私も始めは少し興味があったが先生がなげやりになったあたり


(始めのほう)ですっかり興味がなくなり、、することもないのでただ虚空を見つめ続けていた。




「で、結局何することになったんだっけ‥?」


席の近い男子、若狭君に聞いてみた。若狭君は中1のころ結構仲良かったのだが、その頃とは違いサッカー部に入って垢抜けて、今はフレンドリーでよくネタにされる、面白い人キャラになっている。


昔は髪型をいじられてキノコと呼ばれていたのだが今は容姿ではなく声とか性格をいじられているようだ。




「あかねる聞いてなかったん?(笑)僕も忘れた」


「えぇっ、みんな聞いてなかったの、、?」


「冗談冗談(笑)なんか、誕生日を聞いてまわるやつやるらしい」


「わかった、とりあえず道行く人に誕生日聞いてまわっとけばいいのね、、?」


「いぇすいぇす、そろそろ始まるんちゃう?トップバッター僕にしなよ」


「おけ、そうするわ」


そう答えた3秒後ぐらいにさっきも仕切っていた竹達さんがちゃんと仕切り始めた。


「みなさん、用意はいいですかぁ、、!はじめますよ~カウントダウン開始!」




5,






4,




3,


2,


1,




「すたーと!!!」竹達さんの合図でしょうもないHR企画が幕を開けた。


「じゃあ若狭君、誕生日おしえて~」


「えっとね、僕の誕生日は、9月23日、学園祭の近くやねん」


「えぇやん!楽しいイベントが集合してるってことはやっぱり9月好きなん?」


「そやで!でも学園祭でみんな忙しくて僕の誕生日なんかそうそう祝ってもらえへんねん」


「それやったら私祝ったるわ!」


「まじ?ありがと~」




なぜか若狭君と話していると会話のキャッチボールをしつつ、明るいノリでしゃべれるので若狭君のコミュ力ってすごいなぁ、、と感心していた。


が、そんなことをしている暇はなかった、これは一応競争ならしいのだ。


聞いてなかったから何が景品かすら知らないけど。




「あ、えっとね、私の誕生日は、、」


「あ、あかねるの誕生日僕知ってるから大丈夫やで、急いでるんやったらほかの人のとこいってき?」


「え、知ってるん?じゃあなんで私に時間をつかって、、」


「僕あかねるの1番になりたいだけやから!んじゃまたあとで」


「、、なるほど、、?」


意味がよくわからなかったが、ほかの人のところへ行くことにした。


誰のところへ行こうかとさまよっていると、レモンちゃんが話しかけに来た。


「やぁ、君の誕生日はいつだい?」


「えっとね、私の誕生日は2、」


教えようとした瞬間ズバっと人差し指を顔の前につきつけてきた。


目をつぶされるのではないかと一瞬怖くなったが、背が低いのでそこまで指は届かなさそうだ。


私は驚いてしゃべるのをやめてしまった。




「よく考えたら知ってたわ」


「え、覚えてくれてるん?」


「数少ない友達の誕生日は覚えてるで」


彼女はちょっと横を向きながら当然でしょと、つぶやく。


「すごいなぁ、、私数字覚えるの苦手だからさ、全然誕生日把握できへんねん、、」


「ちゃうで、それは君の友達の数が多いだけや」


「そんなことないと思うけどなぁ、、内部生やからそれなりに知ってるだけで、、」




この学校には内部生と外部生がいる。


内部生は小学校も付属の小学校に行っていた人のことを指し、


外部生はその他、中学から入ってきた人のことを指す。


ちなみに内部生の中でも、小学校から入ってきた人とこれまた付属の幼稚園から、一緒の超幼馴染みたいな人とで2パターンある。




「でも君の友達ほぼ外部生やん」


「、、、っ!ほんまや、、?!」




レモンちゃんも、七瀬も、糸井も、若狭君も、三笠さんも、あいちゃんも、、、、


よく考えたら全員外部生である。




なんでこんなに友達できたんだっけなぁ、、




「で、、私の誕生日は覚えてないよね」


ちょっと寂しげに見つめてくる。


「ごめんね、でも絶対祝うから教えて~」


「仕方ない、教えたるわ、私の誕生日は6月15日。」


「学校ある時期やし、直接祝えそうだね」




***




レモンちゃんと別れた後、私は七瀬と糸井のところへ行った。


2人がちょうど誕生日を言い合った後で、タイミングがよさそうだった。


だが2人に話しかけようとしたとき、私よりも先に2人の男子がわりこんできた。




1人はかわいい系男子、身長が私より少し低いぐらいで、顔もかわいい、相川君だ。


その人は糸井と仲がいいので、糸井に用があるようだった。




もう1人が問題だった。




「あ、やっほ~大也」


七瀬の、ゲーム好き男子友達の1人、




私の元大親友、、、加瀬 大也 だった。




「天野さんって誕生日いつなん」


「私は4月24日やで」


「あー俺はね、、、」








「10月31日」










「え」


彼が振り向いた。


声で分かっていたであろうに。わざわざ振り向くとはな。


「ハロウィンの日だから覚えやすいんだよね」


何か思うところがあったか、彼はしばらく私を見て固まった後、言葉をつづけた。


「あ、








  8,24事件の人じゃん






                  」


「悪かったね、会話さえぎっちゃって」


我ながら少し眉間にしわが寄ってる気がする。さすがにぴきっときた。


いきなり8,24事件とか言わないでほしい。その事件名を聞くだけでも心臓が痛いのに。




それを言った後は何事もなかったかのようにみてくる彼、ちょっと怒る私、、、




不穏な空気にさすがに何かを察したのだろうか。


何も知らない七瀬が何事かと戸惑って聞いてきた。


「大也、もしかしてあかねると知り合い、、なの?」




「知り合いも何も、なぁ」


「??」


七瀬が余計に混乱している。表情が固まっていた。


大也が言葉を濁すせいであらぬ誤解を招いてはいけないと思い、私が横からつけたした。




「大也は内部生だから知り合いなんだよね、あと小6の時結構仲良かったし」




「そ、そうだったんだ、意外だな、、


あかねるみたいなまじめな人が大也みたいなのと仲良かったなんて」


七瀬がちょっと驚いていた。気のせいかもしれないが少し表情がやわらかくなっていた。


「え、私、まじめかな」


「おいなんだよ大也みたいなの、って」


2人して同時につっこみをいれてしまった。




まぁ、でも、、彼は別に何もしていない。


ちょっとあほだし、デリカシーはないし、


「例のあいつ」とも仲がいいが、


彼は本当に、、何もしていない。




だから、彼とは別にそこまで距離をおかなくてもいいんじゃないか、と思った。


クラスメイトとして普通にしゃべるぐらいはしておこうと、思った。




こうして、2年ぶりの会話が成立した。


こうして、私たちは再会した。






***


「はーい、5位まで決まったので終了しまーす」


先生の呼びかけで事が終わった。


えぇーっと残念そうな声を出す、本気で景品を狙っていたと思われる女子たち以外は、


やっと終わったか、と疲れ果てた顔をしていた。




その後、表彰式と称して、ファンサ会がなぜか行われていた。


もしかして、、景品ってファンサだったのか、、?私は青ざめた。




2位から5位の人にはなんてことなく、握手を交わした。


4位だった本気で景品を狙っていたと思われる、矢崎さんが、握手を交わした直後に倒れた以外は


何事もなく進んだ。




そして1位の人の番になった。


要するに、、、私の番になった。




「じゃあ投げキッスと握手両方で」


ヒューヒュー言ってる男子の野次馬と悔しがる女子陣からの嫉妬のまなざしに耐えつつ、これってセクハラなんじゃないかとか嫌だなとか思いつつ、仕方ないやと半分諦めかけていた時だった。




「先生、茜ちゃんは潔癖症だし大人の男性が苦手なのでやめといた方がいいと思います」




助け船、、?もしかしてこの低くてかっこいい声は。


ちらっと声の主の方を振り向いた。




やっぱり、三笠さんだった。




「あ、そうなんですか、じゃあ三笠さん交代します?」




女子からすごい数の嫉妬の目線が三笠さんにむく、


かと思いきや、みんな「三笠さんならいいや」的なまなざしをむけていた。なんでだろう、、?




「いえ、結構です」


三笠さんはいつもフレンドリーな目をしているのだけど、今日は冷めきった目で先生に答えていた。


彼女は先生のファンではないようだ。


「じゃあ景品なくなっちゃうけど、、?」


2人がこちらを向いた。




「希望者と交代します」


歓喜の声があがった。


この日この瞬間から、2つ変わったことがある。




まず第一に、必然的に、先生のファンの明るい女子たちによく思われるようになった。




そして第二に、私は三笠さんに借りをつくってしまった。













好きな人が困っていたら助ける。


それは当たり前のことだが、勇気はいる。




だが、こうした小さな積み重ねが、ハッピーエンドにつながるんだって私は思っている。

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