8月24日の悲劇

ATTENTION!


★過去編


いつもの話とは雰囲気が違うし感情表現が少し乱れている、ちょっと重ための話です。








これは恋ができなくなる前の私の過去の話で、他人から見たらどうでもいいお話。




突然だが私には小学校3年生の時からずっと思いを寄せていた男の子がいた。


彼の名は灰坂 翔太。好きになったきっかけは単純で、消しゴムを拾ってくれたからという可愛い理由だ。




年が過ぎるにつれ彼の魅力は増し、私の愛も増していった。


小6の時とある造形(美術)の授業で、花の絵を描くというお題が出た。


でもその日はあいにく雨だった。


私は傘をわざわざさして外に行くのが面倒だったので、屋根の下でも描ける場所を探していた。


それですぐに思いついたのが体育館横の花壇だ。


体育館の横の道には屋根がついているので屋根の下で座りながら花の絵を描くことができる。


我ながらいいアイデアだと思いながらそこで花の絵を描いていると、例の彼、灰坂君が加瀬君、長野君をひき連れてやってきた。


「僕たちもここで描いていいかな?」


「ご自由にどうぞ、、」


彼とは緊張してうまくしゃべれなかったのだが、、


「加瀬君?だっけ」


「ひどいなぁ大也君の名前を忘れるなんて~」


「あってるからいいでしょ!」


打ち解けやすい話し方をしてくる、お調子者の加瀬 大也とは2言3言交わすだけで、すぐに仲良くなった。彼のおかげで、私たちは神様の気まぐれか、すっかり仲良くなってしまった。




そのあとの学校生活は夢のように楽しかった。彼らと遊ぶようになってから、私は本格的にボーイッシュになっていった。昼休みに外でボール遊びするのがとても楽しかった。


学校以外でも、遊園地に行ったり、彼らの家に遊びに行ったり、大也の大好きな牡蠣を食べに牡蠣小屋へ行ったりもした。


でもそんな夢のような生活がそう続くわけがなかった。




私たちは中学生になった。


同じ中学にあがったものの、クラスが離れてしまったため接点が急に無に等しくなってしまった。


クラス替えってこんなに大事なイベントだったんだ、、と改めて思い知らされる。


唯一帰るときは一緒に帰ることにしていたのだが、、。


男女、2人の部活の開始、そういったいくつもの小さな要因が積み重なって私たちの接点は、


無に等しいどころか無、そのものになってしまった。




彼らと会えなくなって、ラインですら話さなくなって、新しい友達を作る気も起きず、ただ過去の思い出をかみしめて懐かしむ毎日。


本当につらくて、孤独で、何より寂しかった。


そんなある日、彼らとの思い出を懐かしむ材料の1つであった、イルカのキーホルダーが突如消えてしまった。そのキーホルダーは彼らと共に遊園地で買った、いわば友情の証であった。




この機会にいい加減、けりをつけようと思い立った私は彼に告白することにした。


彼が受け入れてくれたら付き合う、


だが彼が受け入れてくれなかったら、、中途半端な関係は嫌だと思い、私はわざと、彼を怒らせて絶交することにしようと考えた。


とても辛い決断だったがそれぐらいしないと1歩も前に進みだせない。




私にそんな勇気はないと思っていたが、いざ実行してみると案外気楽にできた。


これまでの思いを、ぶつけるように、でも丁寧に、気持ちを伝えた。




それに対して彼はどう答えたか。もちろん答えはNOだ。


理由は部活が忙しいから、というあまりにもご都合のいい断り方だった。しかも友達でいてほしいときた。


あんなにがんばって考えた言葉を聞き流すかのように聞いて、さらっと受け流してきた。しかも笑顔で。




人の告白を断るときに笑顔で、断ったのだ。


これまで、中学入ってから、これだけ私を思い出に固執させておいて、?5年も片思いさせておいて?


なんなんだ、彼は何様なんだ?


ありえない。本当にありえない。。










大嫌い。






好きと嫌いは紙一重だ。


嘘だ、そんなはずないと思っていたが、本当にそうなのだと身をもって知らされるはめになった。




始めからふられたら絶交するつもりだったが、ただ、そんなことを始めに考えていなかったにしても、私は彼と絶交しようと思っただろう。


本当に、我慢の限界で、怒りが腹の底からこみあげてきた。






そうして冷静になれずに、事は起こった。




ざっくりいうと、私は彼に、縦読みで暴言を送ったのだ。


それきっかけで彼と私は犬猿の仲になり、結果、絶交することになった。




詳しい内容は言いたくない。


そこに至るまで友達だと思っていた人からの裏切りもあった。私の、思想の傾いた解釈もあった。


私が悪いとは思っていないし、彼が悪いとも思っていない。


2人とも悪いのだ、そもそも、出会った時からそういう運命だったのだ。


今ではあやふやにしつつ、そう解釈している。






起きたものは仕方ないし、別に絶交したことに後悔はない。むしろあの時絶交してよかったとまで思っている。あの時絶交したから今、新しい「私」がいるのだ。だからこの恋にも、ついでに言うならばこれまでの友情や思い出にも、未練はないのだ。




ちなみに、私と彼が絶交することになった、その事件は8月24日に起こったから、私たちは自然にこれを8.24事件と呼ぶことになった。




あんなに大好きだったのに。あんなに一緒にいたくてたまらなかったはずなのに、、。


今では彼の嫌なところを言え、と言われてすぐに


「変にすがすがしいし、まじめすぎてしょうもない。


人間としての面白みが感じられないし、正義の被害者づらしてむかつく。。」


といった調子で出てくるほどには嫌いだ。




私はこの事件がきっかけで、




人のことを信頼できなくなったし、




人のことを好きになれなくなった。






恋ってやっぱり怖いんだよ。半端な気持ちでしちゃだめなんだよ。


ブレーキがきかないし。


いろんな人を巻き込んで傷つけてしまうし。


自分のことだってたくさん傷つけてしまう。




だから




私は恋ができなくなった。




人間は気持ち悪い生き物だって嫌なほど思い知らされたから。


思い出して語っていると、心臓が痛くなった。
























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