解答編

 すると奥野おくのは、大きな声を出した。

「え? 僕も経験したこと?! それじゃあ僕はヘタをしたら、死んでいたってことですか?!」


 藤巻ふじまき刑事けいじは、冷静に告げた。

「はい、その通りです。さあ、思い出してください。君が最近、何をしたのかを」


 奥野は腕組うでぐみをして、考え込んだ。

「えーと、最近したことといえば、姉の引っ越し先の住宅の内見に行ったことぐらいしか……。それには、飛行機で行ったことぐらいで……。あ、そうか!」


 すると藤巻刑事は、微笑ほほえんだ。

「はい、気付いたようですね」


 奥野は意気込いきごんで、説明した。僕は飛行機のエコノミークラスに乗ったので長時間、同じ姿勢しせいでいました。これが原因で死ぬことがあるとすればそれは、エコノミークラス症候群しょうこうぐんだと。


 藤巻刑事も、説明した。エコノミークラス症候群は長時間、同じ姿勢でいるとあしの静脈内に血のかたまりができて、それが血管の中を流れてはいまって呼吸困難こきゅうこんなんなどを起こし重症になると命にかかわる病気だと。


 おそらく男はパイプ椅子いすにガムテープでグルグル巻きに固定されて、身動きが出来なくなった。何とか動こうとしたがパイプ椅子と一緒に転んでしまい、更に身動きが出来なくなった。それでエコノミークラス症候群を発症して、死んでしまったのだろうと。


 奥野が「なるほど……」とうなづいていると、藤巻刑事は聞いた。

「ではこの男を、このようにした犯人は想像できますか?」


 奥野は少し考え込んだが、「分かりません……」と答えた。奥野はまだ新人の刑事だがヒントを出せば推理が出来るので、藤巻刑事はそうした。

「それではもしあなたが犯人だとして、どういう理由で男をこのような状態にしますか?」


 やはり奥野は少し考え込んでから、答えた。

「えーと、何か秘密を聞き出すためでしょうか。つまり、『おい、お前はもう逃げられない! 自由になりたかったら、秘密を言え!』とか? またはこの男を、監禁かんきんしようとしたとか?」


 すると藤巻刑事は、微笑ほほえんで説明した。はい、おそらくそうでしょう。つまり犯人はこの男からある秘密を聞き出そうとしたか監禁しようとして、人目のつかないこのはいビルのフロアでパイプ椅子にガムテープでグルグル巻きにした。


 だが男は、秘密を話さなかった。または監禁していたが、もう用は無くなった。なので犯人は、この男を放置ほうちすることになった。そしてこの男は自由に動けないために、エコノミークラス症候群になって死んでしまったのでしょう。


 そして藤巻刑事は、聞いてみた。

「さて、このような人目につかない廃ビルに監禁、または聞き出そうとすることは、何か良くないことだと思いますがどうでしょうか?」

「なるほど! 例えば犯罪に関係していることとか?!」


 すると藤巻刑事は、廃ビルの出口に向かいながら話した。

「はい、なのでまずは、この男の犯罪の前科ぜんかを調べてみましょう。何か分かるかも知れません」


 奥野も「はい!」と答えて、藤巻刑事の後に続いた。

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今日も藤巻刑事は新人を育てる その二 久坂裕介 @cbrate

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