vs巨大魔人(瞬殺)
城を破壊して現れた巨大な魔人。一体どのようにして作られたのか、誰がどのようにして城の中で暴れたのか。
謎はが多く残されているが、今はあの巨大な魔人をいち早く倒し街の安全を確保することが必要である。
素早く待ちの中を走り、巨大な魔人に向かっていくアリイとセリーヌはその道中で話をしていた。
「街の中はどうでしたか?」
「エバランス帝国の勇者と聖女が魔人に変えられていた」
「なんと........!!では、犯人はあのクソうぜぇ女と戦士ですか」
「いや、犯人は戦士だけだ。もう一人は相当戦士から恨みを買っていたらしくてな。目玉を食わされて拷問されていた」
「へぇ。そうなんですか。どっちにも同情できませんね」
「全くだ。我も“そうか”としか言えんかったわ」
「ですが、ちょっとスッキリしますね。あの女、マジで不愉快の権化みたいな方でしたし」
「仮にも聖女がそんなことを言っても良いのか?」
「私だって人間ですよ?人の好き嫌いはありますし、他人の不幸を祈る時だってありますよ。全人類を愛する聖母の顔に見えますか?」
「フハハハハ!!見えぬわな!!」
とても聖女とは思えない発言をドヤ顔でしてくるセリーヌに思わず笑いながらも、アリイ達は巨大な魔人の目の前までやってくる。
魔人はまだ自分の体に慣れていないのか、歩き始めることなどはしなかった。
「どうする?」
「もちろん消しますよ。ですが、少し殴り倒すだけで街に被害が出そうなのが困りますね」
「フハハ。巨大ということは、歩くだけでも被害を生み出せる。なんかして街から話さねばならんな。投げ飛ばせるか?」
「幾ら私が力持ちとは言えど、さすがに無理ですよ。そういうアリイ様は?」
「フハハ!!我も無理だな!!投げ飛ばすのは」
「ということは、それ以外ならできると?」
「フハハハハ!!所詮は肉だ。その気になれば食い殺すことだって簡単よ!!まぁ、それをした日にはこの街丸ごと食われることになるだろうがな」
「それではダメですよ。街を守るために街を食らったら本末転倒です」
投げることは出来ないが、喰らうことは出来ると堂々と言うアリイ。
一体どんな手段で食い殺せるのか少しばかり気になったセリーヌだが、興味本位で見ていいものでは無いことは察していたので他の手段を考える。
これほど大きな相手となれば、移動させるだけでも一苦労だ。
粉々に切り裂くことも出来なくは無いが、それをすれば街が消える。
(守るものがあると面倒ですね。何も考えずに消すだけなら楽なのですが........)
攻撃魔法が使えれば、一瞬の内にカタがついただろう。しかし、それを街が許さない。
この街はセリーヌが暴れるにはあまりにも小さく、脆すぎた。
「何も手が思い浮かびませんね。本気で暴れる訳には行かないですし」
「フハハハハ!!まぁ我が何とかしてやろう。はるか上空に飛ばせば良いのだろう?」
「はい。そうですね........具体的には上空に飛ばしたあとこの街に結界を張っていただけると助かります」
「........一体どんな火力で吹き飛ばそうとしているのだ?」
「軽く遊ぶだけですよ。ちょっと攻撃的な魔法を使うだけです」
アリイとセリーヌがどうするべきか話していると、ついに魔人が動き始める。
何とか人の形を保っているソレは、大きく口を開けるととてつもないエネルギーを集め始めた。
凄まじい魔力量だ。
「少々のんびりしすぎたか。では、行ってくる」
「お気を付けて」
移動を開始したアリイと、それを見送るセリーヌ。
何気に2人でひとつの強大な敵に立ち向かうのは初めてのことであった。2人は基本的に強すぎて、個別に動いた方がやりやすいのである。
「フハハハハ!!我、ちょっと考えたのだが、半分に切れば投げ飛ばせそうであるな!!というわけで、ぶった切られるといい!!」
口にエネルギーを集める魔人を前に、アリイはそう言うと魔術を使いひとつの剣を生み出す。
アリイの高密度な魔力によって作られたその魔法の剣は、とにかく頑丈で切れ味を追求しただけのただの剣。
アリイは魔人の腹付近まで飛び上がる。
そして、使い手次第では全く役に立たないその剣を、アリイ力の限り横に振り抜いた。
「ヌゥン!!」
スパン!!と心地の良い効果音が聞こえそうなほど綺麗に切り別れた上半身と下半身。
アリイは、魔術で空中走ると魔人の上半身を強引に持ち上げて、本気で投げ飛ばした。
さらに、続けざまに下半身も投げ飛ばす。
掴むための手は沢山あるのだ。その手をつかみ、上に思いっきり引き上げればあら不思議。
魔人は空へと射出され、気がつけば豆粒ほどにまで魔人は小さくなる。
「フハハハハ!!やれ!!セリーヌ!!」
「........強引すぎませんかね?もっとスマートな方法はなかったのですか?」
脳筋すぎる戦法に呆れたセリーヌは、両手を合わせると聖なる魔法の行使に入る。
アリイが思わず目を見開くほどの魔力が蠢き、やがてそれは聖なる光となって天から地へと向けて降り注ぐ。
「この街を壊す気か?最高強度の結界で伏せがねば街が冗談抜きに消し飛ぶぞ」
それを見たアリイは即座に街に結界を展開。
次の瞬間、天の罰は下される。
「聖なる光の裁きを知りなさい。“
刹那。空が聖なる光に包まれる。
口に魔力を貯めていた魔人は、自らの危険を察知してその聖なる光に大して光線を解き放ったが、セリーヌの膨大な魔力による攻撃の前では全てが無力。
常人では計り知れないほどの威力を持っていたはずの一撃すらも飲み込んだ裁きは、たった一撃で魔人の全てを消し飛ばした。
時刻は早朝。まだ日が登り始め、昼のような眩しさは無いはずなのに誰もが空を見て目を細める。
太陽のような温かさを持ったその光は、魔人となったもの達を全て消し飛ばし光が消えると同時に何もかもが無くなった。
「っ........!!結界が凄まじい揺れ方をしている。フハハ。やはりこれ我なんぞ要らんだろ。もうセリーヌ1人で大抵の存在には勝てるぞこれ」
セリーヌの攻撃魔法を見たアリイは、乾いた笑いしか出ない。
そして心の底から、セリーヌが前の世界に居なかったことに安堵した。
こんな馬鹿げた攻撃をポンポン打たれたらたまったものでは無い。もし、セリーヌが以前の世界にいたら、あっという間に世界は人間の手によって支配されていたことだろう。
「んー、久々に使いましたから、ちょっと加減を間違えましたね。もう少し強くやるつもりだったのですが、加減しすぎました」
「いや、むしろやり過ぎなぐらいだが?我が結界を張ってなければ、今頃この街は魔法の余波によって滅んでいたぞ」
「それはそうでしょうね。だから私は攻撃魔法を使わないんですよ。強すぎて周りを巻き込むので。ですが、アリイ様は巻き込んでも問題なさそうでよかったです」
「いや、普通に巻き込まないで欲しいのだがな?」
「そうですか?アリイ様ならば平然と笑っていると思うのですが........」
「我をなんだと思っている。我だって死ぬ時は死ぬのだぞ........」
キョトンと可愛らしい顔をしながら首を傾げるセリーヌに呆れつつも、一切の被害を出さずに巨大な魔人を始末したセリーヌを褒めるかのように優しく頭を撫でてやる。
セリーヌはその手を嫌がるどころか、嬉しそうに受け入れ。少しばかり頬を染めた。
「さて、残るは残党のみだ。これほどの力を見せつけられて、まだやろうと思うバカがいるならばの話だがな」
「どうでしょうか?まずはアリイ様の捉えた戦士から話を聞くべきかもしれませんね」
こうして、アケニア王国の王都で起きた反逆者たちの事件は幕を閉じるのであった。
後書き。
見せ場もなく終わる魔人君。泣いてもええんやで。
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