第10話
翌日、俺たちは屋敷を掃除していた。
目立ったゴミなどはなかったが一応だ。朝の8時を少し回った頃だろうか。屋敷の前に馬車が停まったことをスカイセントが教えてくれた。
「2人とも、執事さんたちがおそらく来たようだ。お迎えしよう」
「わかったわ。3人は先行ってちょうだい。私はこれ片付けてから行くから」
「了解、サトウ侯爵…」
藤堂君がそうからかうと佐藤さんは藤堂君をたたき出した。怖いね…目のハイライトが消えた佐藤さんは。
「何を遊んでおる…はよ行くぞ」
スカイセントの一言により俺たちは玄関に向かった。
玄関に到着し扉を開けるとそこには60を少し過ぎたくらいの老人と昨日、王宮の門の警備をしていた騎士、そして3人の若い女性が立っていた。
「サイトウ公爵閣下、私含め5名、これより公爵及び侯爵邸に勤務となります。自己紹介させていただきます。私は執事のツツジと申します。前は第1王女殿下の執事をしておりました」
「私は屋敷の警備を任されましたエンドゥと申します。以前は王宮の門の警備をしておりました」
男組が揃って頭を下げる。俺たちはちょっと戸惑いながらも貴族としての定めとして受け入れた。
「私はサイトウ公爵閣下の専属メイドになりますエミと申します。以前は逆賊ウスター元公爵家のメイドをしておりました」
「トウドウ侯爵閣下の専属メイドとなりましたシェスカです。同じく元公爵のメイドとして働いてました」
「サトウ侯爵閣下の専属のリリアレスと申します。2人と同じくウスター元公爵のメイドとして働いてました」
3人がそれぞれ頭を下げる。
「こちらこそよろしく頼むよ。5人とも名前呼びでいいよ。早速だけどツツジ、うちの屋敷に足りないものってある?あるなら王都見物がてら買ってくるけど」
「レン様、何卒護衛をおつけください。そうですね…人材が足りませんね。屋敷の警備やメイドなど。圧倒的に足りません」
ツツジが遠慮なくズバッと言ってくる。それにしても屋敷の警備か…冒険者とかでもいいのかな?
「メイドについてはツツジ達に任せるよ。あと護衛だけど…今日はいいや。スカイセントも連れてくし。警備についてはエンドゥの周り誰かいない?それと1つ聞きたいんだけど貴族が冒険者を雇うのって大丈夫?」
「支援は聞いた事あるのですが雇うことに関してはあまりないですな」
そうか…だいたいわかったぞ。
「藤堂君達はどうする?俺たちと一緒に行く?」
「私は行かなくて大丈夫。男の子達で行ってきて。執事に色々この世界について質問したいから」
「なんだ佐藤さんは冒険者ギルド行かないのか?なにかあったら連絡してやるよ」
俺たちはこの世界の人達と違うところがひとつある。それは視界がゲームみたいなウィンドウになっているということだ。目線で操作でき互いに連絡もできる…もちろん登録は必要だが。なんならストレージもあるのでアイテムボックススキルは無用だ。
マップも表示できリアルタイムで表示される。一言で言えば難攻不落の要塞もマップスキルを使えば弱点が丸見えになる。
そんなことを思いながら俺たち3人は屋敷を出た。
「あぁそうだ。配信始めるぞ?1日1回はしないといけないからな」
屋敷を出てすぐにスカイセントがそう言い配信を始める。今回はコメント欄も見れる。ちなみにどうコメント欄が表示されるのかと言うと視界右下に表示される。
・おっ始まった
・昨日はよくもグロテスクを見せてくれたな
・今日は何するんだ?
開始早々コメントが流れてくる。
「おはよう、蓮公爵だ。そして隣にいるのはスカイセントとマコト・フォン・トウドウ侯爵」
「おい蓮、他人行儀はやめろって。まぁみんなおはよう藤堂誠、今日も元気に行くぜ」
「マスターも誠も大人しくせんか。ほかの人からの視線が痛い。コメントで目に付いたのは会話の中に自然と織り込んでくれ」
・早速怒られてら
・そうか2人とも貴族だった
・そんでー結局何するの?
・貴族が街に軽々しく出ていいわけがないからなー
コメントが次々と流れてくるので俺はもう気にしないようにした。
「それで?マスター、今日は何するんだ?」
「あー今から冒険者ギルド行って冒険者なってそのあとは街を見てまわる。孤児院にも行って寄付しようかな?白金貨10枚くらい」
・王都探索だった…
・白金貨って日本円でどれくらい?
・この世界の貨幣は下から石貨、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨、黒金貨があって石貨1枚で10円で100枚づつで上に行くから銅貨は1000円、銀貨は100000円、大銀貨は10000000円、金貨は1000000000円、白金貨は100000000000円、黒金貨は10000000000000円となっている。レン公爵は白金貨10枚くらいと言ったから1兆円を寄付するということだ。
・ひょえー…想像もつかんわ
あーそうか。そういえばそんな感じだった。ちなみに金貨とかの呼ぶのは格式ばった場所ばかりで平民などはゴールドで表す。
「石貨の下ももちろんあるぞ?基本こういう貨幣は小切手だからな。実際の単位はゴールドだ」
スカイセントが気を利かせたのか俺たちに説明するようにコメント返しをする。
「まぁ色々あるんだね…とギルドに着いたみたい」
いつの間にかギルドに到着していた。屋敷から歩いて5分くらいだった。
ギルドに入るとまだ多くの冒険者がおり賑わっている。
「なんだァ?ガキがこんなところに用か?」
「えぇ…冒険者登録しようと思いまして」
すぐに人相の悪い男性に絡まれた。何かな…テンプレの匂いがする。
おそらく男性のパーティーメンバーであろう人達が少し震えていたが。
「そうかぁ…根性のあるガキは好きだ。案内してやる」
普通にいい人だった。後ろの人たちも少しホッとしたような感じもしなくも無い。
受付に行くと元冒険者だったんだろうなと感じられる古傷だらけのお兄さんがいた。
「よォ、このガキ3人を冒険者登録してくれねぇか」
「分かった。それにしてもお前、よく不敬罪にされなかったな」
不敬罪の言葉が耳に入った人達が一斉にこちらを見る。
案内してくれた男性は訳が分からないというように辺りを見回していた。
「陛下から連絡が来ておりましたので冒険者カードはできております。サイトウ公爵閣下並びにトウドウ侯爵閣下。サトウ侯爵閣下はご一緒されてない様子ですがお渡ししておきます」
そう言って鉄のカードを渡してくれた。
「そんなに固くならなくてもいいぜ?なんせまだ貴族になって2日目なんだ」
藤堂君がそう笑い飛ばしながら言うと微笑み返されたがどうなのだろう。
「おうおう、ガキ3人が冒険者だと?ガキはガキらしくドブさらいでもしておけ!!」
突如として響き渡った怒鳴り声。声の方を見ると20代後半だろう。金髪のイケメン男児が立っていた。
その場にいたほかの冒険者は内心焦りまくっているがそんな中、俺と藤堂君は笑った。
「ねぇこれがテンプレだよ。あはは!!予想してたのと違ってるけど」
「そうだな。俺もおもしれぇ!!」
「何笑ってやがる…俺はSランクのフリーデ様だぞ!!Sランク冒険者は侯爵と同程度の権力を持つんだ!!貴様、不敬罪で殺すぞ!!」
その言葉でギルド内が凍りついた。無言でスカイセントが刀になり俺の手に収まる。
「権力に溺れんな…ガキが。まだこのハゲのおっさんの方がお前みたいな権力に溺れてるガキよりかっこいいぞ。それに貴様も冒険者なら拳で語り合うのが冒険者だろ?」
ハゲのおっさんと言われた案内してくれた男性は、落ち込んだがかっこいいと言われて少し照れていた。
フリーデと言うらしい権力に溺れた冒険者は顔を赤く染め剣を抜き襲いかかってくる。
「どうやら気の短いようだな…相手してやらぁ」
粗末に振り下ろされた剣を避け俺はフリーデの武器と防具を破壊する。
破壊したはずだ。形は保っている…破壊したよな?
そう不安になった時ふわりと風が吹いてサラサラと粉になるまで切られた物が落ちてきた。
フリーデはまた何か騒ごうとしたが藤堂君が気絶させる。
「さて…誰か手伝ってくれませんか?ちょっとこいつにお仕置が必要みたいなんで。ちなみに女性の方は…宜しくない光景が出てくると思いますが」
俺がそう呼びかけると全員の手が上がった。どうやらこのフリーデは嫌われているらしい。
「レン様、自己紹介がまだでしたが私はギルドマスターをしておりますギルスと申します。何が必要ですか?」
どうやら受付をしてくれた人がギルドマスターだったらしい。
「そしたら十字の木の棒とこの王都で一番効く即効性のアレをお願い出来ますか?」
「かしこまりました」
そう言ってギルマスは奥に引っ込んで行った。さて…冒険者には何をさせよう。
「罰の程度を考えるのでフリーデについて色々教えて貰えませんか?と言っても全員には難しいので2パーティーから聞き取りますね。まずはかっこいい案内役のお兄さんのパーティー、そしてもう1つは…フリーデを見た瞬間に憎しみが湧いて出てきた少年少女のパーティーにお願いしようかな。あ、貴族になったばっかなんで敬語は無理につけなくてもいいですよ。公式の場じゃないんで」
「そりゃ助かる、あんちゃん。フリーデは実を言うと幼なじみなんだ。冒険者になったばかりの頃は良い奴だったんだけどよランクが上がるに連れて悪くなっていったんだよ。それでうちのパーティーの威厳に関わるからっつう理由で追放したら、あろうことかパーティーの財産全て盗んで行きやがった。そっから会ってなかったんだがまさかSランクになってるなんてな。ま、実力は俺たちよりも圧倒的に下だったから盗んだ金をギルドに積んだんだろうよ。俺が知ってるのはこんくらいかな。お前たちもなんかあるか?」
「あるわよ。あれはフリーデを追放した当日だったかしら。夜寝てて違和感を感じたらあいつに襲われていたのよ」
うん…想像以上にやばかった。コメント欄も荒れる荒れる。
「ありがとうございます。そしたら次のパーティー」
「俺たちは全員幼なじみでパーティーを組んでるんです。ただ少し前に同じパーティーの女の子が魔物に襲われて死んだんです。その時、ちょうど出身地の村が近かったんでせめて彼女の両親に知らせようと村に行ったんです。そしたら…俺と彼女の母が自ら命を絶ってたんです。理由を聞いたら…フリーデと名乗るSランク冒険者に襲われて妊娠させられたと。そしてその日は彼女を埋葬したあと村に1泊したのですが…その夜中にトイレに起きたらお墓の方からギシギシ聞こえてきたんです。俺、暗視スキル持ってるんで覗いて見たらその男が彼女の遺体を襲っていたんです。その事を翌朝彼女の父に伝えたら…彼もまた崖から落ちて…亡くなりました」
話を聞くだけでも殺したくなってきた。ほかの冒険者も汚物を見るような目でフリーデを見ている。
「ありがとう。その…辛い記憶を語らせてしまって。おかげでこの男の罰が決まったよ」
「私も我慢したぞマスター。どれだけこいつを殺したくなったことか」
スカイセントがそう口にすると同時にギルマスが頼んでいたものを持ってきた。
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