第9話

「ルソン伯爵、すまぬな。そなたにとっては今日は特別な日だろうに」


「いえ、滅相もございません。ところでサイトウ公爵閣下ほかお2人もご一緒なのですね」


 そう言いながら俺たちを見るルソン伯爵。

 この場には国王と俺、藤堂君、佐藤さん、そしてルソン伯爵しかいない。


「早速本題に入ろう。ルソン伯爵は今日の騒動で後ろ盾を無くしたんだったな」


「はい、まさかブデ侯爵が反乱に加担していたとは思いませんでした。あの方は国王派の貴族とばかり思っていたので」


 ルソン伯爵の後ろ盾であったブデ侯爵はウスターの反乱に加担し一族諸共処刑された。

 その他にもいくつかの上級貴族が潰されたため後ろ盾を無くしている貴族が多くなっている。


「うむ、実はなそなたの他にももう1つ後ろ盾を失った子爵家があっただろう?その子爵家の後ろ盾としてそなたになってもらいたいのだ」


 国王の言葉を聞いてルソン伯爵は目を見開いたが少し考え申し訳なさそうな表情をした。


「お言葉はありがたいのですが…私も後ろ盾を無くした身…誰かの後ろ盾が得られるまでは遠慮したいのです」


「そこについてはトウドウ侯爵殿とサトウ侯爵殿を後ろ盾につけよう。その2人の後ろ盾としてサイトウ公爵殿、さらにサイトウ公爵殿の後ろ盾として王家がなろう。さすれば間接的に子爵家まで王家が後ろ盾になるぞ。条件は少々あるがな」


「条件…とは?」


 その質問に答えたのは国王でもなくいつの間にかルソン伯爵の後ろに立っていたスカイセントが答えた。


「条件はドウサンについての文献を私に見せることだ」


「す、スカイセント様…ドウサンとは…伝承に少ししか語られてない謎に包まれている人物のことですか?」


「そこまでは分からぬがとある国の建国に関わっておったな。今の段階ではそこまでしか知らぬのだ。思い出そうとすると激痛が走る」


 スカイセントの言葉を聞き流していた国王は少し目を見開いた形になっていた。


「すすす、スカイセント様。もしかしたらその国は…クラウスィス王国の前…神聖クラウディアスカイ共和国のことですかな?」


「そのような名前だった気がするな…まぁよい。国王よ…私は思い出した。故に条件云々はよい。代わりに私が国王とルソンにいい話をしてやろう」


 その言葉に顔を見合わせる2人。

 ルソン伯爵は少しむさいおっさんなので、渋いおじさんである国王と顔を見合わせている光景に笑いが込み上げてくる。


「3つあるのだが単直に言うぞ。まず1つ、国王の母方を辿っていくとルソンと同じ先祖にたどり着く。誰かと言ったらさっき言ったドウサンだ。2つ、ルソンの先祖はこの国の前は公爵家だ。神聖なしがしが滅びこの国が誕生する少し前に奴隷まで没落しておる。だが、この国が建国されるのと同時に伯爵になったそうだ。3つ、ドウサンの愛用していた武器がこの王宮の下に眠っておる。私ほどの刀ではないがいい武器だ」


「ありがとうございます。文献にもなにかないか探してみます。ルソン伯爵…今日はもう良いぞ。3人も今日は屋敷に帰ってよい…明日は儂が予定があるゆえ無理だか明後日また来て欲しい。明日には使用人を向かわせる」


 こうして長い長い1日が終わりを告げた。

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