第5話

 俺は…いや、俺たちは今近衛兵の甲冑を着込みクラウディア王女の護衛に扮している。

 護衛に扮しているのは俺と国王、宰相、王太子の4人だ。ちなみに王宮の謁見の間の玉座にはスカイセントが座っており藤堂君と佐藤さんはそっちに護衛として着いている。

 門に着くとちょうど反乱軍が迫ってきていた。

 先頭に立っていた兵が警戒しながらこちらによってくる。


「失礼、クラウディア王女殿下と見受けられるがそんな少数でどのようなご要件ですか?」


「ええ、ウスター公爵に降伏すると伝えてください」


 兵は頭を下げると足早に戻って行く。しばらくしてでっぷりと太った男達11人がこちらによって来る。


「あの真ん中のいちばん太っているのがウスター公爵だよ。今はあんなんだけど王子だった頃は王国随一のイケメンだったんだ」


 宰相がこっそりと教えてくれるがあんな醜い豚のように太った男がイケメンだったとは到底思いにくい。


「クラウディア…出迎えご苦労。ひとつ聞きたいがなぜ降伏するに至ったのか聞かせては貰えないか」


「ご無沙汰しております。先ほど伝令がまいりましてお父様とお兄様、宰相様が魔物に殺されたと報告があり…」


「なんと…兄上が…。(よし兄上を亡きものにできたぞ…これでこの国の王だ)」


 そのつぶやきを聞いた俺はさっと国王に目配せし頷いた。

 これであのサイクロプスが公爵が仕向けたものだと分かり少し安心する。

 全軍が王都内に入り門を閉じる。決壊があるので閉じる必要はないのだが念の為だ。公爵達を王宮に連れていき謁見の間まで連れていく。

 ちなみに王宮に公爵達が入ったあとすぐに門を閉じたので分断されているのだが気づかない。

 謁見の間に公爵が入ってきたのを確かめると玉座に座っていたスカイセントは口角をあげた。

 それと同時に念話で合図が送られ王都に入っている兵は駆逐されていく。

 それを知らない公爵は怒鳴り散らした。


「おいガキ!!そこをどきやがれ!!そこは俺様の席だぞ!!俺はこの国の王だ!!」


「そんなに怒鳴るなよ。下衆が…お前がこの国の王だと?まあ仮に王でも私よりは下だ!!」


 スカイセントにそう言われた公爵はさらに頭に来たらしくがに股で玉座に迫っていく。


「この小娘が!!近衛兵!!不敬罪でこのガキを捕らえろ!!」


 そろそろいいかな…

 俺はスカイセントに向かって軽く頷いた。その瞬間、スカイセントが刀になり俺の手に戻ってくる。

 そして俺はその刀を公爵の…いや犯罪者の首筋に当てた。


「ウスター…お前は王でもなんでもねえ。ただの罪人だ」


「近衛兵!!ウスターを捕らえろ!!」


 俺と国王が言う。ウスターは国王に気づいてないらしく王女の護衛であるはずの騎士が図々しく命令したことに笑っていた。

 しかし命令通りに仲間の貴族達が拘束されていくのを見て顔を青ざめさせたが。


「おい…近衛兵!!なぜ王である俺様の命令に従わないで味方を拘束する!!ひいっ!!」


「あんまわめくなよ…空気が穢れる。それに首がちょんぎれっぞ」


 俺は刀をさらに押し付ける。

 ウスターを除く貴族が拘束されたのを確認した国王が兜をとり顔を見せた。


「ウスター…貴様を国家反逆罪で拘束する。そして3刻後に公開処刑とする。氾濫に加担した貴族ももれなく国家反逆罪とし一族諸共処刑する。ちなみにウスターよ。貴様には国家反逆罪だけでなく様々な余罪もあるからな。公爵家一族は処刑…その他ウスターに関係ある奴らは犯罪奴隷とし一生鉱山で働いてもらう。はぁ…産まれたばかりの子がいるというのに…残念だ」


「あ、兄上…考え直しを…どうか産まれたばかりの赤子だけは勘弁してください!!」


「無駄じゃ、お前の血が入ってる以上殺さねばならん」


 その言葉をきいたウスターは崩れ落ちた。みっともなく涙を流しているが俺はあることを思い至った。


「国王、要するにウスターの血が残ってなければいいんですよね…」


 国王は俺からウスターの赤子をかばうような発言に驚きながらもうなずいた。心なしかウスターの目にも希望が宿る。

 スカイセントが刀からまた人化し静かに語り始めた。


「恐らく伝承でも語れておらん魔法があるのだ。その魔法は禁忌として当時の人たちが使うのをどうしようもない時以外…避けてきた」


「スカイセント様…使うのを避けてきたとはどうゆうことですかな」


 国王から聞かれたスカイセントは静かにウスターの前に歩いていく。あたりを見ると皆委縮してしまっている。

 それもそのはずスカイセントが纏うオーラが神々しく、本人もほのかに輝いてるのだ。


「成功確率が半々なのだ。失敗したら…魂の消滅、遺体も残らぬ」


「魂の…消滅とは…」


「この国…いやどの世界でも共通しておるが人が死ぬと魂は神のもとに召される。たいていの者は記憶を消去されまた人として生まれるのだが…魂自体が穢れてしまうとその部分を破壊され動物や虫になる。魂に負荷がかかりすぎるのもまたよくないのだ。この魔法の場合…世界の理を変えるのだ。だから失敗すれば魂が跡形もなく破壊される。この話を聞いてもウスターは赤子を助けたいか?もし失敗すれば赤子に宿る魂がなくなる。覚悟があるのならその魔法を使ってやろう」


 ウスターは目を閉じ考える。国王もじっとそれを見守っている。1分も経たないうちに答えは出された。


「使ってくれ…成功すれば助かるのだろう?ならお願いする」


「そうか…誰か公爵邸にいってその赤子を連れてまいれ。その間にこっちはこっちで準備に取り掛かろう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る