第3話

「助けてもらった褒美をせねばならんし、しばし同行してはくれぬか…それに聞きたいこともあるしの」


「あの刀のことですな…伝承でしか語られていない神刀…」


「あーその刀についてなのですが私も全く知らないのです。申し訳ありません」


 俺はそう言いながら平伏する。だが国王はあきれたように力なく言う


「公式の場以外はかしこまらくともよい。普通に楽にしてくれ」


「分かりました。年上としては敬わせてもらいます」


「うむ。それで神刀のことなのだがな」


 国王がそう口にしたとたん俺の持っていた刀が俺の手を離れ空中で光りだした。五秒くらいだろうかゆっくりと光が収まっていくとそこには小6くらいの女の子がいた。

 淡い青色の髪が少々光っており目の色は薄い水色。ワンピースも少し輝いて見える。


「私が説明するよ。マスターの血を受け継ぐものよ」


 その少女の言葉に誰もが目を丸くする。しかし俺は自分の記憶ではない誰かの記憶が流れ込んでくるのを覚えた。

 その記憶の中に出てくるのは若い黒髪の少年。その少年が手にする青く輝く刀。


「その様子だと気が付いたようだね。マスターの血、いやこの時代だとこういったほうがいいかな。古の勇者の息子よ。私はスカイセント、かつて魔王や邪神を斬った存在だ。率直に言う、そう遠くない未来、最悪の邪神と呼ばれた神の封印が解ける」


 その言葉に緊張が走った。騎士を見ると恐怖に染まった顔をしており国王に至ってはがたがたふるえていた。


「嘘だ、噓だ噓だ噓だ…世界が…世界が滅びる」


「いやー滅びないから安心しようよおっさん。どっかの邪神に魅入られたおバカさんが勇者召喚いうて異世界から連れてきたからなぁ…」


「で、召喚されてきたのが古の勇者の息子の俺と」


 俺はスカイセントに確認するように言葉をなげかける。

 藤堂君も佐藤さんも少しホッとしているような感じはしなくも無いが。


「いや、マスターはたまたま召喚される人達の中にいただけだ。ただ…これだけは言える。そのおバカさんの一生の幸運を使い果たしたと言えるだろう。邪神に魅入られたバカは基本悪運が強い。ただ言えるのはマスターがその中にいなかったらそこのお二人さんは今頃洗脳されてるだろうさ」


「スカイセント様…ここでの話もあれですのであとは王宮で聞きましょう。伝承と照らし合わせて起きたいので」


「おう、おっさん…この国の国王さんか。いいよ、なんか嫌な予感がしてならねえんだ」


 スカイセントがそう口にした時誰かが馬に乗って走ってきた。


「緊急の伝令!!国王陛下、今すぐに王都にお戻りください!!ウスター公爵、反乱!!ウスター領より約5000、王弟派閥所属の貴族らの兵と共に王都へ進軍してきております!!総勢1万5000!!」


「王都の状況はどうなっておる!!」


「はっ!!クラウディア王女殿下が王都に滞在している貴族を招集し会議を開いております!!」


「あいわかった。反乱軍が王都につくのはいつ頃か…」


「約半日かと思われます!!」


 その言葉を聞いた一同は顔を顰めた。どうやら半日では王都につかないらしい。

 その様子を見ていた俺は転移魔法があれば、と思って…


「マスター、転移魔法なら私が使えるが?国王さん…どうする?」


「この人数を…運べるんですか?運べるのならお願いいたします!!」


 一同が頭を下げた。はたから見れば幼い少女に国のトップが頭を下げているように見える。

 伝令の騎士も訳が分からずぽかんとしていたので藤堂君がこっそり耳打ちしてくれた。


「わかった…では王宮の入口でいいな。みんなで手を握ってくれ。国王さんは私の隣じゃ、風景を思い浮かべよ。【転移】」


 スカイセントがそう口にした瞬間、俺たちは別の場所にたっていた。

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