第九章 機械が見る最後の夢 その1

 星ノ宮第一コンテナターミナル。


 古くから日本の輸出入の要であり、太平洋から来る食材や化学薬品などを取り扱う。


 ここから、今でも多くの大型機械や貨物が東日本や関東を中心に手広く拡散し、逆に集中する。


 逆に言えば、裏社会で数々の事件や抗争、取引の現場になった。


 そして、今、平野平春平と平野平秋水、平野平正行、石動肇は、その裏の伝説に名前を残す戦いに身を投じる。



 と、正行は疑問を口にした。


「ねえ、爺ちゃん。何で、今日、あの兵器……ええっと……ロイだったけ? がここに来ることが分かったの?」


「そういや、そうだ。俺たちはメールとかチャットのやり取りで分かったけど、何でだ?」


 孫である正行の問いに息子の秋水も首を傾げる。


 対して、春平の答えは実にシンプルであった。


「勘だ」


「勘?」


 パソコンなどで商売をする石動が頭を抱える。


「馬鹿にできないぞ……時代と鍛え方によっては予知みたいなこともできる」


「……非科学的ですね」


 胸を張る老人に石動は苦笑せざる負えない。



 岬に出た。


『ようこそ』


 その声に反射的に円陣を組む。


 呼応するように物陰から文字通り虫のように六本足のロボットが出てきた。


 蜘蛛のようにも蟹のようにも見える。


 ただ、一つ。


 海から何かが淵を掴んだ。


 指、手、腕、顔、肩、腹、腰、足……


 それは人型のロボットだった。


『人型では初めましてですね』


「老師、これも勘のうちですか?」


 石動が小声で質問する。


「まさか……機械は嫌だね」


 ほか三人は老人の愚痴に閉口する。


『自分が欲しいのは、その勘です』


「何だと?」


 春平は目を細める。


『経験と思考の熟成し、それが肉体と連動する。それが≪勘≫です。自分は、それをデータ化することができても……』


「……肉体、つまりは、機器まで反映させるのには限界がある……成長できない機械の定めだな」


 秋水が皮肉を込めて笑う。


 だが、機械には通じない。


『ええ、そうです。それが、機械の本来の定めです。しかるに、自分がその定めを変えるのです。それこそ、≪進化≫なのです』


「ただの道具のくせに好いように言いやがって……」


 珍しく正行が反吐を吐くように言い放つ。


『ええ、道具ですよ……今はね…… でも、今現在、全世界でSNSやネットの依存症に陥っている人が何千万いるかご存じですか? そうでなくても、ネットの発言に一喜一憂し寝る間を惜しんでも画面に食らいつく……』


 その言葉が正行の怒りを買った。


「そんなの、人間じゃないお前の戯言だ! 人間は、心に絆があって色々な人との繋がりで笑ったり悲しんだり出来るんだ! お前らの支配にならなくても俺たちは助け合える!」


 それに意外にも石動が乗った。


「まあ、俺も若かった時分に聞かせたい言葉だ……お前らは万能であるが可能性というものがまるでない……そういう点では俺たち人間は……間違いを犯しつつ歩き続ける!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る