第八章 目覚めるのは『神』か『人間』か? その3
石動肇は、朝焼けとともに目が覚めた。
「おはようございます……」
体を起こすと死屍累々のような形で弟子たちが爆睡している。
正行は普段着に着替えて、両手にマグマップを持っている。
「男二人で朝焼けコーヒーと言いうのも変ですが、どうぞ……」
「ありがとう」
二人は道場を見た。
荒い掛け声や叫び声が聞こえる。
「まだやっているのか?」
寝ぼけた頭にコーヒーの奥深い香りが覚醒を促す。
「はい……」
--君の弱点を一つ言っておく。『相手を殺そうとしない』ところだ
『それでも、俺は殺さない』
いないはずの春平に石動はコーヒーを飲みつつ反論した。
苦いはずのコーヒーが妙に穏やかで甘い。
「……お子様味覚か?」
一緒に飲んでいる正行は苦笑した。
いきなり、道場の戸が開き、血まみれの春平が出てきて井戸水で血を洗い流すと全裸になり、コーヒーを飲んでいる孫たちに宣言した。
「疲れた、寝る」
そして、自室へ行くと、豪快な鼾が聞こえた。
次によろよろ状態で、同じく血まみれの秋水が出来てた。
「くそ、あの爺は手加減というものを知らんのか⁉」と言いながら井戸水を被り、血を洗い流すと土間から上がり込んで、誰が残したか分からないピザの切れ端や伸び切ったラーメンを胃に流し込んだ。
そのタフさに正行と石動が驚いていると、軽自動車のハスラーが門の前で止まり、中から猪口直衛が出てきた。
「ボストンから帰ってきたよ」
「おかえりなさい」
正行は、台所へ行き石動と同じようにコーヒーを持ってきた。
縁側でコーヒーを飲みつつ猪口はボストンで起こったことを話した。
「親父たちの話と合わせると、その『機械』は八咫烏たちに離反したということだな……」
秋水はボストン土産の固いポテトチップスをバリバリ食べながらコーヒーを啜った。
「そうだね……あ、そうそう。俺の知り合いの陸上自衛隊員から無理言ってもらってきたものがある」
そういって出したのは、如何にも田舎の高校生が着そうな、サツマイモの色をしたジャージだ。
--ダサい
と思ったが、上下一式渡されと認識が違った。
軽い。
ジャージという特性上、肩回りや腰回りの動きを邪魔するものはない。
試しに正行が試着する。
少し丈が短く、伸ばすとよれるわけでもないのに体にフィットするように伸びた。
「特殊な形状記憶繊維を使用して伸ばすと、着用者の体に合うようになるよ」
猪口の説明を聞きながら正行は軽く動いてみる。
動きやすい、軽い。
「あと、耐火加工や防刃加工もしてある。下手な『なんちゃって戦闘服』よりずっといい」
「あとは、デザインですよね……」
石動が苦言を呈する。
「しょうがないだろ? 研究途中のものを大急ぎでもらったんだから…… で春平さんは?」
「ああ、スタミナ切れで寝ています」
正行がお替わりのコーヒーを猪口のマグマップに注いで渡す。
今度は正行たちが星ノ宮市の商店街に強襲したドローンの話をした。
「そうか、『ロイ』も調整に入ったか……」
「ロイ?」
秋水がポテトチップから顔をあげる。
「あのドローンの意思『脳みそ』の元の持ち主が分かった。『ロイ・フィリップ』享年十二歳の大天才だ」
猪口が重々しく答えた。
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