機械の見る最後の夢

第八章 目覚めるのは『神』か『人間』か? その・・・前に

 秋水が迎えに来て、春平は家に帰ると身を清めて一人で道場の真ん中で黙想していた。


 

 その間、秋水たちは高弟たちを呼び寄せた。


 幸い、星ノ宮への橋は壊れてないものもあり、時間はかかるが、先代の師から命令なのでほぼ全員が集合する。


 それから、石動肇も招集して、平野平秋水、その息子の正行、一番弟子がやったことは大量の食事作りだ。


 元々、大食漢の男三人に毎週多くの近所の子供たちが武道(礼儀作法のほうが大きいが)を習いにくるので野菜も肉も魚も専用の冷蔵庫があるまで大量に保存してあるが、それらを全部使う。


 高級魚だろうがスーパーで買った雑穀米だろうが調理される。


 和洋中。


 揚げ物、煮物、焼き物……


 生でいいのならサラダやデザート。


 場所が場所なら高級ホテルで満席のレストランや厨房のように慌ただしい。


 主に盛り付けを石動が担当し、おかず類を正行が、炊けたご飯をお握りや混ぜご飯にするのは秋水が担う。


 家にある炊飯器はもちろん、年に数度の餅つきで使う土鍋や炊飯窯、果てはお家キャンプで買った飯盒までフル稼働だ。



 数時間後。


 大量の料理が居間の食卓に並ぶ。


--ちょっとした、パーティーでもやるのですか?


 それを問いたくなる量だ。


 飲み物も酒以外のサイダーや玉露なども温冷問わず揃っている。


「……これでもって二周かなぁ?」


 秋水が呟く。


 その言葉に石動と正行の顔が引きつる。


「え? 爺ちゃんの稽古の相手にするの……そんなに大変?」


 息子の問いに現当主の秋水は言い切った。


「大変とかの問題じゃない……爺が無理やり強引に眠らせていたを起こすんだ……あんまり金はかけたくねぇが……石動君、君も参加するだろうから、番になる前にピザでも饂飩でも蕎麦でもファミレスでも必要なら出前を取ってくれ。あとインボイス対応の店で領収書をもらってくれ」



 数時間後、この言葉が決して過大な言葉でないことを石動も正行も知ることになる。

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