第七章 頑張る商店街の皆様たち その5
スピーカーから流れる甘い曲に、防衛側になる商店街の店主たちは後にリーダー格の古本屋の主人に文句を言った。
本人の反省の弁は「あれ以外、五分以内に終わる曲がなかった……」
自分たちが中央に集められたことに傭兵たちは気が付いたが、傲慢だった。
相手は武芸の経験もない素人。
まして、平和ボケした日本人だ。
だが、それは甘かった。
周囲に機関銃などで電灯などをぶっ壊していたが、誰も出てこない。
やがて、弾丸が尽きた。
その瞬間だった。
迷彩服を着た、男たちが銃器を構えて撃ってきた。
インド料理屋や魚屋の比較的ガタイのいい男たちが手元にピンポイントで狙ってきた。
「うぐっ!」
弾丸ではないが、撃たれると手が痺れる。
バトルスーツ内の電気系統が一部ショートしたのだ。
敵が使うバトルスーツは、ほぼ機械仕掛けの代物で専用の銃を装備すれば自動的に標準にセットする。
筋力や素早さもオリンピック選手やギネスに並ぶほどだ。
逆に考えれば、一部でもショートするとただの重い荷物になる。
と、辺りに不穏な煙が漂い始めた。
「毒ガスか⁉」
正体は雑貨屋にある在庫のバルサンと玩具にある仕舞ってあったヘビ花火、インド料理屋で使う店主が現地で直接買い付けた秘伝のスパイスである。
これにより、通信や視覚分析などが出来なくなった。
次々に倒れる傭兵たち。
「よし、最後の仕上げだ!」
後方支援をしていた店主たちが敵ではなく、天井に向かい、引き金を引いた。
PARARARA!
機関銃独特の軽快な音が響く。
すると、その天井から何かが降ってきた。
「星ノ宮商店街 夏のサマーセールキャンペーン」
だの
「入学・進学お祝い 春の大特価セール」
などの横断幕だ。
横断幕、とはいっても幅や重さはバカにできない。
完全に制圧された敵を前に、普段、無口なインド料理屋の男はぽつり、呟いた。
「俺は、こんな捕まり方嫌だ」
それから十分ぐらい過ぎたころに、陸上自衛隊少佐『宇都猛』率いる自衛隊がやってきた。
だが、目の前には横断幕内で臥せっているであろう傭兵たちを見て、彼らは茫然とした。
「素人に野暮な仕事をさせるんじゃないよ」
そこにツカツカと、禿げ気味のエプロンをかけた老人がサンダル履きでやってきた。
周りを見ると、傭兵たちが暴れないように周りにはモデルガンを持ったほかの店の店主たちが銃口を向けていた。
--素人が傭兵部隊を倒した
漫画のような現実に宇都たちを苦笑させた。
「まあ、今回は『友達』家族のアイディアが見ごとにハマった結果だよ……」
古本屋の店主はそう言いながら、分厚い紙の束を宇都の顔に軽く叩きつけた。
「何ですか? これ?」
手渡されてみると、『道具代』だの『破損費』だのの修理や補充の見積もりだ。
「結構、ボッてません?」
「あのね、今は不景気でみんな、やっとこさっとこ商売している! これでも、結構サービスしているんだ」
そこに、一台の大型ドローンが飛んできた。
その大型ドローンこそ、八咫烏をコケにした『自我と進化を持つ機械』であった。
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