第七章 頑張る商店街の皆様たち その3
アマチュア無線機から雑音に交じり、しかし、老人の耳でも聞き取れる言葉が聞こえる。
しかも、古いモールス信号型である。
この店主は戦中は陸軍の『通信士』をしていてモールス信号はお手の物であった。
『こちら、JAK0623』
電波を拾い、すぐに打ち返す。
『こちら、AHS6190』
『そちらにアメリカの武装部隊がやってくる情報を得たり。大至急、対応されたし』
『了解、ありがとう』
適当に無線機をまた、奥のほうに仕舞い、雑貨で見えないようにカモフラージュした。
そして、店の隣にある案内所にある放送室に入ると、店主は商店街中に聞こえるスピーカーをオンにして、商店街に来ている客や店主たちに宣言した。
「えー、お買い物中のお客様、商い中の皆様。今から緊急の防災訓練を行います……お買い物中の皆様は、大変申し訳ございませんが、またのご来店をお待ちしております。店主の皆様は、古本屋へ集合してください」
すると、各店の店主たちは半ば強引に謝罪しながらも客を帰し、商品を仕舞い、シャッターを下ろして、古本屋に集合した。
全員、真剣な眼差しだ。
彼らの前で古本屋の店主は、商店街の会長は言った。
「外敵がやってくる」
誰もが息を飲む。
「あの、武器は……?」
新参者のインド料理屋の店主が聞く。
「武器ならあるさ」
そういうと、古本屋の店主であり会長は足元の床にある、普段ならば絶対見落としそうな小さい留め具を外して床を足で押すと、
「本物ですか?」
「バカ、全部、『婿殿』のモデルガンだよ……あいつが帰ってきたら、思いっきり頭を叩いてから思いっきり誉めてやろうと思う……」
そういうと、秋水と語っていた時に隠したモデルガンを店主はあっさり見つけ出し、腰のベルトに装着した。
慣れているのか、勇気があるのか、商店街の店主たちもそれぞれに各々が合いそうな武器を持つ。
最後に、インド料理屋の店主がM16A4を持つ。
店の奥にある段ボールの箱を開ければ、ミリタリーの衣装も入っている。
店主は彼らに告げた。
「われらが商売を邪魔するものは排除する……撃鉄を起こせ!」
その瞬間、店主たちは鼓舞する声をあげた。
数分後。
所々、擦れた文字の古いワゴン車が商店街の前にある駐車場から出てきた。
『○○電気』や『××配送』と読める。
しかし、中から出てきたのは迷彩服を着てガスマスクをつけた傭兵たちである。
商店街には似つかわしくない。
出入り口のシャッターを強引に力技で足蹴りして壊す。
だが、人は誰一人いない。
文字通り、ゴーストタウン状態だ。
各自が本物の重火器を持ちながら、辺りを打ちまくり、通りの真ん中まで来た。
その瞬間、スピーカーから、場違いな甘いレゲェが流れてきた。
これが、商店街側の反撃開始だった。
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