閑話休題 その頃の日本では・・・
その男が好きな夜景を見ていた。
東京の夜景。
--香港の夜景が百万ドルならば、日本の夜景は、それ以上の価値がある
その価値を守るための組織だと男は思っていた。
後ろがガラス張りの執務室で、スーツを着た男は隠し持っていたスキットボトルを出すと直に一気飲みした。
蠱惑的な炎が喉を焼く。
普段の仕事を終えた時の快感だ。
足元の光一つ一つにも仕事があり人生があり、人がいる。
様々な想像をする。
と、そこに無粋なスマートフォンの呼び出し音がした。
『こんばんは』
その声に男は気分をいささか害した。
「今、何処にいる?」
『機密情報です』
男は内心、舌打ちをした。
「日本の陸上自衛隊にある通話履歴からお前が日本に来ようとしているのは知っている……ただ、何故、アナハイム社を破壊した?」
これに相手はあっさり答えた。
『簡単な話です……彼らは僕を操るには知識も価値観も違いすぎた」
「……何が言いたい?」
『宣戦布告です』
「何だと? 俺たちはお前の生みの親だぞ?」
だが、相手はいけしゃあしゃあと反論した。
『あなた方の歴史を見ました。実に興味深く、謎めいているが、傲慢で浅い……同じ人間同士が、もう二度と醜い支配権争いをしないように我々が支配する。その宣言です』
「機械の分際で……!」
『では、あなたのお母さんの話をしましょう』
「⁉」
その瞬間、彼の耳に嘲りの声が聞こえた。
『人間の面白いところは、自分の肉親、殊、男性なら母親という単語を出すとどんな屈強な男なども一瞬の揺らぎが生じる……実に面白い』
機械の冷やかしに男は怒鳴りそうになったが努めて呼吸を大きくして言った。
「では、いいことを教えてやろう……人間は確かに醜いだろう。愚かだろう。でもな、だからこそ、未来に変革や発展がある。お前たちの未来に、その不確定要素はあるのか?」
今度は機械が黙り、そして、途切れた。
その瞬間、男は溜まっていた怒りをスマートフォンを床に叩きつける。
柔らかい絨毯は、それを優しく押し包む。
数回、荒い息をして叩きつけた機械を拾う。
その画面には三つ足の
夜は静かに深くなっていく。
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