第四章 三つ足の烏(からす)は神の夢を見る その4
背後の音がざわめている。
--グライホイール回転停止
--××(聞き取れない)正常
--同内圧力正常
--主原電接続準備
何かを起動させるためか、周囲にメガホンから様々な声が響く。
--メインシステム、接続を確認
--サブシステムの接続も確認
--起動予定値に入ります…3…2…1
--反応は?
--ありません
--圧力をあげろ、三・五ポイント追加
--了解
……
--反応は?
--ネガティブ……これ以上の負荷は……
--いいから反応があるまであげるんだ!
--……了解
その時だ。
警報音が鳴る。
--起動しました!
だが
--ハーモナイト値、異常警告!
--何?
--三十、四十……止まりません!
ひと際獣のような号砲が響く。
--制御信号、拒絶されました。
--まずいぞ! 全ての接続を切れ!
--無理です、拒絶されます!
現場が混乱している。
--誰だ! ハッチを開いているのは⁉
--誰も……システムが勝手に!
--カタパルト上昇!
--まずいぞ! 今すぐ国軍に連絡をしろ! ……間に合うとは思えんが……
やがて、轟音や爆発音が響くが、すぐに静かになる。
『R』と名乗る男は再び語りだした。
『これは、ある兵器を我々が生み出してしまった瞬間の音声だ。君のいる時代のカメラがどれぐらいの高性能で小型化されているが分からないが、私たちが作った兵器は意図的に『進化』と『自由意志』を持たせた』
「なんつーもんをつけたんだよ……」
秋水は目頭を押さえた。
『今、その兵器がどうなっているかはわからない。ただ、彼のメインバンクはアメリカ・ボストンにある。見知らぬ人々よ。どうか、あの子を止めてくれ。それを今は望む』
春平も困り顔でいった。
「つまり、八咫烏とパヴァリアが、この兵器をどこからか手に入れたと……」
「もっと最悪パターンだとこれを複製して、世界征服……なんていうものも考えられますよ」
さすがに陽気な正行も出る言葉がない。
石動が言った。
「しかし、アメリカのボストンというのは非常にいいヒントですね」
「たぶん、思考部分のコンピューターはそこにあるんだろうなぁ」
猪口は口に手を当て何か思い浮かんだ。
そして、立ち上がった。
「……もしかしたら……心当たりがある……悪いけど、俺、今日急いで帰宅して、明日、アメリカ行く!」
猪口の発言に四人は顔を見合わせた。
不思議そうな顔をする四人に猪口は胸を張った。
「それに、俺。有休が溜まりに溜まって三週間以上あるんだよね! じゃね!」
そういうと土間から靴を履いて外に出て、タクシーを捕まえるためにスマートフォンからタクシー会社に電話をする。
「俺も、もう少し、この兵器のことを調べます」
今度は石動がラジカセごと持って外に出て、庭先に止めたグリフィスに乗り込むと急発進した。
同時にタクシーもつかまり、猪口も帰宅した。
残されたのは平野平家の面々だ。
「どうする?」
「どうするって?」
「とりあえず、正行がもらってきた野菜とかでカレーでも作ろう」
「そうだね」
ただ、父はぼんやりとしていた。
ローザが亡くなった。
いろいろな思いをした自分の顔が湯呑の水面に浮かぶ。
それを一気に飲んで立ち上がる。
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