第二章 それでも、現実はあり続ける その5

 その大型飛行機には、専門の料理や家政婦、洗濯機から最新鋭の電子コンロなどがあり、オンライン用の会議室、食堂、ホテルような客間まであった。


 地上のよりかは狭いが、それでも、悠々人が生きていくには十二分なスペースだ。


--空飛ぶホテル


 石動の第一印象だ。


 

 砂まみれで垢まみれの秋水たちは風呂場へ通された。


 ユニットバスのようなものではなく、小さいながらも湯舟やシャワールームもある。


 水のない砂漠地帯のど真ん中で石動は大量の水に驚いた。


 地球の約七割を占める海水だが、実はその中で人が安全に飲める水は雨によって大地にろ過された水など一割にも満たない。


 それが潤沢に使えるのは、この戦場においてかなりの贅沢だといえよう。


 二人は汚れた衣服を脱ぎ棄て、思うさま、髪を洗い体を隅々まで洗い、湯船に浸かった。


 浴室を出るとメイドらしき人物が男性の裸を見ても無反応に厚手のタオルと、新品の服を用意してくれた。


 それも、アルマーニなどのスーツである。


「汚れや破損がひどく、もう少々お時間をくださいませ」



 食堂では、石動が見たことないような料理が並べられていた。


 目の前の小さな壺には半紙で目張りがされている。


「とってどうぞ」


 イブニングドレスの、ローズと名乗る人物は二人に進めた。


 目張りを丁寧にとり蓋を取ると鶏がスープとともに煮込まれていた。


 蓮華でつつくと簡単に骨ごと取れる。


 常にレーションや粗末な食事しかしていなかった石動には暖かいという時点で感動ものだった。


 だが、秋水は淡々と料理を食べる。



 夜が来た。


 秋水は『日本にいる家族に連絡をすることがあるから先に寝ていてくれ』


 と寝室を後にした。


 残った石動は全裸になりベットの中に入った。


 ちゃんとコイルのきいた、心地いいベットだった。


 埃臭いどころか高貴な香水がさりげなく香る枕に頭を沈めた時、体中から拾うとストレスの悲鳴が上がる。


 日本では体験できない、「戦場」という非日常が当たり前になりつつある自分を感じた。


 どれぐらい寝たのだろう?


 温かく柔らかい何かか自分を包んでいる。


 薄く目を開けるとローザがいた。


「あなた、寝ている顔も可愛いわね」


 冷やかしとも本気ともとれる言葉に石動は虚を突かれた。


「たまには、ここを解放させないとね……」


 と、下半身に手を伸ばした瞬間。


「おい、何している?」


 彼女の背後に立っていたのは師であり、手にはコルトマグナムが握られている。


 すると、頬をぷーっと膨らせて口先をとがらせて言った。


「何よ、石動君をちょっとからかっただけよ……いいわ、この際だから私の秘密を教えてあげる」


 そう言って彼女はベットから降りて着ていた薄い紗々の寝巻と下着を全部床に落とした。


 その瞬間、傷だらけの体が現れた。


 秋水と同じ様々な拷問や攻撃、修行などで受けた傷だ。


 乳房にもある。


 何より驚いたのは、股間に男性器があることだ。


「あんたは……」


 絶する石動に軽々と彼女は言った。


「そう、私は両性具有者なの」

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