第二章 それでも、現実はあり続ける その3

 相手は自分のことを知っているようだ。


 警戒する石動に対して、相手は相も変わらず気軽だ。


『しかし、ここの飲み物は実に美味い』


 この時、石動は一つ罠を仕掛けることにした。


『そういえば、ここの飲み物で意外と美味いのはメロンソーダだぞ』


 と、文面を書き、ある写真を添付した。


 すると、【www】の記号や【( ´艸`)】の記号が連なる。


--引っかかった!


 石動が仕掛けた餌に獲物が引っかかった。


 あとは、どういう風に駆け引きをするか?


 そして、この時点で石動には相手が八割がた見えてきた。


 平和ボケした頭を一気に若き日に駆け抜けた戦場へ戻す。


『お前ら、【十三人の使徒】だな?』


 今度は驚きや拍手のアイコンが躍る。


『せーかい!』


 と素直に喜ぶものがいれば


『何でバレたの?』


 と疑問に思うものもいるらしい。


『世界最大の傭兵派遣会社を運営しつつ闇社会ナンバーワンの実力者集団【十三人の使徒】。その首魁がローザリオ・テトラ・グラマンド。おやっさんは普段、ローザと呼んでいたな』


 だが、今度は反応がない。


 爆弾が起爆するのだろうか?


 だが、いつまで経っても変化はない。


 そして、返答が来た。


 感慨にふけっていたのか、再び英文に戻ってこう書かれていた。


『すまん。あの人のことを思い出して、泣きそうになった』


 答えはすぐに、たどり着く。


『死んだか?』


『YES』


 この肯定に、さすがの石動も唖然とした。


 

 この世界小説における【十三人の使徒】の全容は首魁にして「しーらない」という本当にそうなのか嘘なのかはわからないが、闇社会において絶対的君主であり、暴君であり、名策士であり、その世界に身を置くものなら名前を聞いただけで凍り付く。


 命令や依頼などによっては一人だけでも日本ぐらいの一ぐらいは一か月もあれば余裕で原子爆弾などを使用せずに壊滅できるという。


 本業の傭兵派遣業も首魁自ら戦地に出向いて子供から大人まで優秀だと思う人材を勧誘をして、それなりの実力と教育などを年齢別に施して武器も与えて、試験をして、正式採用する。


 また、福利厚生も充実している。


 戦死しても遺族などへの賠償金やサポートは手厚い。


 ただし、裏切り者や内通者が出れば、今までの全ての味方が敵になる。


 ローザもそうだ。


 殊、この人物は同業者や同じ趣味などを持つ人間が見ても呆れるぐらい残酷な方法で殺す。


 家族も、友達も、必要とあらば容赦なく殺す。


 それが【十三人の使徒】だ。

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