内見の騎士

達田タツ

内見の戦い

 内見者ビジターを広域レーダーが捉えた。

 これで三十八回目の襲撃。


『あなたを相棒ドアマンとして選んだのは私』

「なんだ急に」

『恐ろしい戦いに巻き込んでしまったわ』

「今さらなにを言うんだ、リーラ」

『そうね。そうよね』


 ぼくが乗る対内見者ビジター用人型機動兵器ゲートガードは、幾度もの内見者ビジターの襲来に耐えてボロボロだった。


「いつかは通さねばならないんだ。わかっていることさ」


 補給は終えていた。右腕ビーム散弾銃、右肩ビーム収束砲へのエネルギーカプセルの交換。左腕アサルトライフル、左肩極短距離撃杭砲の装填も終了。

 間接部などの細かな整備はできていないが、次の戦いを乗り越えるだけの自信はある。

 勝利を譲るつもりは一切ない。


『あなたは……』


 住居型複合生命体リーラは、悲しげな声をスピーカーに載せる。


『あなたは私を憎んでいるのでしょうね』

「君は以前のドアマンたちにもそんな問いかけをしてきたのか?」


 返答はない。


「新たな内見の戦いが始まるたびに、ドアマンたちが墜ちるたびに? あまりに無意味な問いかけじゃないか」

『それは――』


 リーラは言い淀む。


「ぼくは君に選ばれ、扉の前で戦ってきて、いつしかこう思うようになったんだ」


 遠くに立ち上る砂煙を眺めて、ぼくは告げた。


「君の扉に挑むのが、ぼくだったらよかったのに、とね」


 沈黙。

 いや。

 少しばかり震える息づかいが漏れている。


『私も』


 そして届いたのは、絞り出すような声。


『私も同じよ』


 見えているかわからないが、頷きを返した。

 敵機がカメラで視認できるまで迫り来る。


『敵情報を更新! 二機……片方は大型よ』



 エネミーA コードネーム:ベルカ

『ようドアマン、待たせたな。その扉、我らが開けてみせる』

 エネミーB コードネーム:ストレルカ

『潮時ってヤツだ! 消し炭になれドアマン!』



『以前に一度戦った凄腕ね』

「どちらも新型機だな」

『戦闘システムを起動する』

「始めよう」

『あなたなら勝つわ……私の騎士』

「ああ。生き抜いてみせるさ、今回も」

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内見の騎士 達田タツ @TatsuT88

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