農家の息子に転生した俺は成り上がる

第2話魔法

「チョロチョロ・・・・、ふぅ、すっきりした」

おれは小便をして、部屋に戻る。

やっと俺は、1歳になり一人でトイレができるくらいに成長した。

いくら慣れたとはいえ、精神年齢が二十歳を超えているのにトイレを母親に手伝ってもらうのは恥ずかしかった。

そんな俺は今日も今日とて魔力を動かす。

自分の中にある温かいエネルギー、魔力に気づいた時から今日までずっと魔力を動かしてきた。

今では、超高速に魔力を操作することができるようになった。

そして、魔力を操作する訓練を続けてきたおかげなのか知らないが、魔力が大きくなった。

ほんと、大きくなった。

魔力が大きくなりすぎて魔力が体全体を満たすぐらいになっている。

「このまま、魔力が自分の体を超えるぐらい大きくなるとどうなるんだろうな？」

そんなことを考えながら、俺は魔力を体の中で動かし続けている。

ぐるぐる、ぐるぐる。

俺が魔力を操作していると、家の玄関から母親の声が聞こえてきた。

「アルス、ただいまー」

「おかえり～」

俺はそう言って、俺は魔力を操作するのをやめて家の玄関へと向かった。

「あっ、アルス、ただいま、いい子にしてたかしら？」

そう言って母さんは俺を抱き上げた。

「おかえり。お疲れ様、母さん。いつも通り過ごしてたよ」

「おーい、アルス、母さん」

「あら、あなたも仕事が終わったのね」

母さんは俺を抱きかかえながらこちらに向かってきた父さんに向かって歩いて行く。

「おー、アルス、父さんだぞ、今朝ぶりだなぁ」

「父さん、仕事お疲れ様」

「母さん、俺にもアルスを抱かせてくれないか？」

「いいわよ」

母さんはそう言い、俺を父さんに慎重に渡した。

父さんは少し緊張しながらも、優しく俺を抱きかかえた。

「はあ～、やっぱりアルスは癒しだな～。仕事をしてきた疲れが吹き飛ぶよ」

「あらあら、それはよかったですね」

若干だが母さんが拗ねているような気がする。

それに父さんも気づいたようで、

「もちろん、母さんも俺にとっての極上の癒しだよ（汗汗）。ははは」

「あら、そう？」

「もちろんだよ！！アルスももちろん大切だけど、母さんは俺にとってそれ以上に大切な存在だよ」

よく言った、父さん。

夫婦仲は円満じゃないとな。

「しかし、ちょっとのどが渇いたな。母さん水を出してくれないか？」

「ええ、いいわよ。今日はまだ魔法を使っていないから水を出せると思うわ。『ウォーター』」

母さんが『ウォーター』と唱えると母さんの目の前に小さな水の塊が出現した。

その様子はまるで、無重力空間で水を出したようで、空中に水が浮いているのだ。

「おお、ありがとう母さん。では、いただくよ」

父さんはそう言って、空中に浮いている水に近づき、口を大きく開けて水の塊を口に含み、飲んだ。

「ふぅ～、生き返るよ。やっぱり、母さんの『ウォーター』はおいしく感じるよ」

「はいはい、それじゃあ、そろそろ帰りますよ」

俺の両親は、『ライト』、『ウォーター』、『ファイア』の魔法が使える。

『ライト』は小さい光の玉が空中に出現する魔法、『ウォーター』は小さい水の玉が空中に出現する魔法、『ファイア』は小さい火の玉が空中に出現する魔法である。

う～～ん、そろそろ俺も魔法使ってみようかな～。

まだ、一人でお手洗いができない頃、一度だけ魔法を唱えてみたが発動しなかった。

両親が言うには、『ライト』なら小さい光の玉を、『ウォーター』なら小さい水の玉を、『ファイア』なら小さい火の玉をイメージしながら魔法名を唱えると魔法が使えるらしい。

村の人たちはみんなだいたい、６歳ごろから魔法を練習して8歳から10歳の間にはこの基本的な3つの魔法が使えるようになるらしい。

俺の体の中にある魔力はめちゃくちゃ大きくなったし、前世の記憶がある俺なら１歳からでも魔法が使えるようになるでしょ。

魔力を鍛えたからなのか俺は1歳児とは思えないような運動能力を持ってるし、魔法もいけるだろ！！

うん、ちょっとやってみるか。

「母さん、俺ちょっと魔法の練習をしてみたい」

「あら、アルスには早いと思うわよ」

「まあまあ、いいじゃないかアルスも背伸びしたい時期なんだろう。アルスは1歳とは思えないぐらい賢いし、運動能力もすごい。アルスのやる気があるのならいいんじゃないか。まあ、まだ難しいと思うけどな」

「それもそうね、いいわよ、アルス。お外で魔法を練習してきなさい」

「は～い、母さん父さんありがとう！！」

俺はさっそく外に出て母さんがさっき作った水の塊をイメージして、

「『ウォーター』」

と唱えた。

「ごぼごぼ、ごぼごぼ」

ジタバタ、ジタバタ。俺は水の中で暴れる。どういうことだーーー！！！！！

俺の体は水の中にある。

ザバーン、俺の周りにあった水の塊が地面に落ちる。

「アルスーー！！？？！？、大丈夫ー！！！すごい音がしたけど」

「はあ、はあ、死ぬかと思った」

どうやら、俺が魔法で作り出した水に俺自身が飲み込まれていたのだ。

「うわー、なんだこれは！！！すごい水量じゃないか」

大きい音につられてやってきた父さんが驚く。

「アルスが無事でよかったわ。まさか、こんなにすぐに魔法ができるなんてそれもこんなにすごい水の量の『ウォーター』は見たことないわ」

「ああ、俺も見たことがない！もしかしてアルスにはすごい魔法の才能があるのかもしれないな。いや、かもじゃないなこれは確実に魔法の才能がある！！すごいぞ、アルス！！！」

「そうね！！、私もこんなすごい魔法を見たことなかったわ。お貴族様ならこれぐらいできるかもしれないけど、平民でこんなすごい魔法を使える人はおそらくいないわよ。きっとアルスには、魔法の才能があるに違いないわ！！！すごいわ、アルス！！！」

父さんと母さんが俺のことをそうほめてくれた。

「ありがとう、父さん、母さん、俺には魔法の才能があるのかな」

「ええ、だって、この村で一番魔法が使える村長さんでも、私たちのこぶしぐらいの大きさの水しか出せないもの。」

どうやら、俺には魔法の才能が有るらしい。

今まで、ずっと魔力を操作し続けて魔力を大きくした成果かな？

「俺もう一回『ウォーター』を使ってもいい？コツがつかめそうなんだ」

「そうねえ、、、わかったわ、アルス。『ウォーター』を使ってもいいわ。ただし、これからは魔法を使うときは父さんまたは母さんがいるときにしなさいよ」

「うん、ありがとう母さん。じゃあ、やるね『ウォーター』」

俺は今度は自分から離れた場所に水の玉を出すイメージをしながら『ウォーター』と唱えた。

すると、さっき出した水の塊とほぼ同じ大きさの水の塊が空中に現れる。

なんとなくだが、水の塊は操作することができている。

魔力を操作しているときと同じような感覚で水の塊を操作できている。

水の塊をある程度操作できていることが不思議だけど、魔法が存在する世界では前世の常識というか感覚なんてものは通用しないだろう。

「うわぁ、これはすごいな。さっき出した『ウォーター』と同じくらいの水量じゃないか。水量が減っていないということはアルスにはまだまだ魔力がありそうだな」

「ほんとにね～、これはすごすぎるわね」

「アルスはもしかすると魔法師として食っていけるかもしれないなぁ」

「そうね、平民では珍しいけどこれだけ魔力があるなら、上級魔法師も夢ではないわね。アルスはかわいいだけじゃなくて、こんなにすごい才能を持っていたなんて驚きだわ」

まだ、体の魔力の量からしてまだまだ魔法は使えそうだけど。

あと、6，7回は余裕で行けそうだ。

「父さん、母さん、魔法師って何？」

「ああ、そうだな、アルスはまだ知らないよな。魔法師というのはな、国が発行する資格つまり、国家資格なんだ。国から優れた魔法を使用することができると認定されれば得ることができる資格なんだ。」

「そうよ、そして魔法師の資格保持者の8割、9割が貴族様で残りの1、2割が平民なの。そして、魔法師の中でも特に優秀なものに対しては上級魔法師の資格が与えられるわ。」

「そうなんだ。魔法師のお仕事ってどういうことをするの？」

「戦争で活躍する話はよく聞くな。」

「そうね、私たちとはあまり関係のない世界だから詳しくは知らないの」

戦争かぁ～。平和な日本で暮らした記憶がある分、俺は戦争に対してマイナスなイメージしか持っていない。

「まあ、魔法師として国から認められれば仕事に困ることはないのよ。だから、アルスも魔法師を目指してみたら？ああ、だけどうちの農地や家を引き継いでくれる子供がほしいわね。う～～ん、お父さんもう一人子供をつくらない？」

おいーーー！！！そういう話を子供の前でするな！！！

いくら俺が1歳だからってそれはだめだよ。

「ああ、そうだな、アルスも１歳になったし！アルスは手のかからない子供だし余裕もあるしな。そろそろ、二人目もほしいな。よし、今日から張り切っていくか」

父さんも乗るなぁーー！！

まあ、夫婦仲がいいことはとても良いことだけでね！！でもね！子供の前でそういう話をするんじゃない！！！

ウキウキで両親は家に戻り、寝る準備をした。

その日は俺はよく眠ることができなかった。多くは語らないでおくよ。

ただ言えることとしては、うちの夫婦仲はしばらく安泰であることだ。