農家の息子に転生した俺は成り上がる

農民侍

第1話転生

「おぎゃあーー!!!、おぎゃあーー!!!」


「はいはい、アルス、どうしたのー?お腹すいたのー?おねしょしちゃったのー?」

この世界の母親が俺に声をかけてくる。


母親は俺の下半身を確認し始めた。

「ああ、おねしょしちゃったのね。はい、アルス、ふいてあげますからね」

母親は手慣れた手つきで俺の服を脱がし、水に濡らした布で俺の下半身をふいてくれた。


いつもありがとう、母さん。

前世では成人している俺にとって、他人に下半身を無防備にさらけだし下半身をふいてもらうのはめっちゃ恥ずかしかしい。

だが、しょうがない。

だって俺、赤ん坊だもん。


はじめの頃は泣かずに黙っていたが、おもらししたままだと下半身が気持ち悪いし、かぶれたりすることがあるため、今では速攻で泣いてるね。

なんなら、もらす前の「あっ、小便でそう」と思った瞬間に泣いてるね。


俺には前世の記憶がある。

俺は一度死んでこの世界に、この母親のおなかの中に転生したらしい。

俺は日本で生きていたころの記憶を持っている。


前世ではあっけなく死んだ。

ただのよくある交通事故だった。

よくニュースでみんなが聞き流すような死因だ。

全く珍しくもなんともない死に方だった。


不思議と死んだことに対する悲しみというか後悔というか、、、なんかそういう感情は出てこなかった。

この世界に来て自分が死んだことを思い出したときも、ただ、ああ、死んだんだぐらいにしか思わなかった。

それぐらいしか思わないぐらい味気ない、あっけない人生だった。


そう考えた時に俺は今回は前世のような味気ない、つまらない人生ではなく、刺激的で素晴らしいと自分が思える人生にしようと決意した。


具体的に言うと彼女が欲しい、もうこれだけだよね!!!

これ以外はいらないまであるね!!


「はい、アルス、きれいになったわよ」

母親が俺の下半身をきれいにしてくれた。

おっ、ありがと。母さん。


「きゃはっはは、あぶ、あぶ」

きれいになったことに気づいた俺は泣くのをやめて、母親に笑顔を見せた。


「ああー、アルス、ほんとにかわいいわね。お布団に戻りますよ」

そういって、母親が俺を布団に戻してくれた。


よし、じゃあ、さっきの続きをやりますか!!!

そう思い、俺は自分の体に意識を向ける。

おっ、これ、これ!!

俺は自分の体の中に前世では感じることがなかった温かいエネルギーの塊を感じる。

そして俺は、そのエネルギーの塊を体の中で動かし始めた。


赤ん坊のころはやることがない。ほんとにない。

赤ん坊にできることなんて、食べて、寝て、おもらしするぐらいだ。

あと、寝返りなどほんの少しだけ運動をするだけだ。


暇で暇で仕方ない。本当に暇すぎて辛い。

前世の記憶がある俺にとってはこの何もすることがないというのはめちゃくちゃ苦痛になっている。

前世の記憶を持たない普通の赤ん坊だったらこの暇を苦痛に思わないかもしれないが、、。


そんな暇な日々を過ごしているうちに、俺は前世の体では感じたことがない、温かいエネルギーのようなものを体内に感じ取った。


暇すぎた俺は自分の体内に感じるエネルギーのような何か温かいものを朝から晩まで動かすようになった。

これが意外と難しい。

はじめの頃はエネルギーの塊がまったく動かなくて、やめようと思ったことが何度もあった。

しかし、赤ん坊であるためやることがなく、結局はエネルギーの塊を動かすことを続けていた。


俺が感じているこの温かいエネルギーの塊はおそらく魔法を使うためのエネルギーのようなものだと思う。

前世のゲームでいう魔力というやつだ。


この世界には魔法が存在する。

両親が使っているところを見たことがある。


俺がおもらしをして夜泣きをしたときに、母親が『ライト』ととなえて小さな光の玉を出現させていた。


「わっぶぅうぅぅ!!?」

小さな光の玉がいきなり目の前に現れた時はめっちゃ驚いた。

なんだこれーーー!!!!


「ああ、アルス、おもらししちゃったのね」

母親が俺の体を拭いてくれているがそれどころではなかった。


お母さん、小さな光の玉どうやって出したのーーー!!!!

それって、魔法だよね!!!絶対魔法じゃん!!


「こらこら、アルス暴れないの!!ちゃんと体をふけないじゃない」

うわあああ、ごめんなさい、母さん。でもそれどころじゃないんだよ!!!


しばらく俺が暴れていると次第に小さな光の玉の明かりが弱くなり、ついにはなくなってしまった。

ああ、なくなってしまった。

「あっ、もう『ライト』が切れちゃったじゃない!!はあ、私の魔力だともうできないのに。まあ、仕方ないわね。あなた、あなた起きて、『ライト』を使ってくださいな。」


「ああ、う~~ん。ちょっと待ってろよ。ふあ~~、よし、『ライト』」

父親がそう唱えるとさっきと同じくらいの大きさの光の玉が現れた。


「ありがとう、あなた。さあ、アルスおとなしくしてね」

今度はおとなしく母親の声に従い、動かずじっとしていた。



これが、俺がはじめてみた魔法の記憶だ。

両親に魔法が使えるなら、俺にも使えるんじゃないと思い、頭の中で『ライト』と唱えてみたが光の玉は現れなかった。

何度も挑戦してみたが光の玉を出すことができなかった。


魔法に挑戦しているうちに俺は自分の体の中に前世では感じていなかった何か温かいエネルギーの塊を見つけた。

一度その温かいエネルギーの塊を見つけたら気になって仕方なくなった。

それから俺は体内にあるその温かいエネルギーの塊を大きくなるようにイメージしたり、もっと温かくなるようにイメージすることを繰り返すようになった。



どうやら、この世界では平民でも魔法が使えるらしいがそんなにいっぱい使えないらしい。

まあ、うちの両親が使っているところしか見ていないから、他の人はもっと魔法をいっぱい使えるかもしれないが。


俺は魔法を見た日に俺の体にある温かいエネルギーの塊は魔力であると考えた。

そして、俺はこの温かいエネルギーの塊、魔力を体の中で動かすようにした。

赤ん坊でやることがないこともあったが、魔力を体の中で動かすと体調がよくなっていったからだ。


魔力を動かすのに最初は結構な精神力が必要だった。

温かいエネルギーは感じるのだが、それを動かそうとしてもうんともすんとも動かなかった。

前世の俺ならここであきらめていただろう。

しかし、今の俺は違う。

赤ん坊なのだ、やることがないのだ。

前世ならゲームとかYou〇ubeを見るとかやりたいことがたくさんあったが、赤ん坊の俺は魔力を動かすかぼーっとするかの2択だ。


ぼーっとするぐらいなら魔力動かすかという風に考えがまとまり、魔力を感じ、動かすことに挑戦した。


そうするとだんだんとコツがつかめてきて少しずつ魔力を動かすことができるようになった。

魔力が少し動いたことがうれしくて楽しく、その日以降、俺はますます魔力を動かすようになった。


魔力が動いてからはなるべく素早く動かせるように練習してきた。

その結果、今では一瞬で魔力を動かすことができるようになった。

それに、魔力は動かせば動かすほど大きくなっていった。

これは、あれかな?筋肉みたいに魔力も使えば使うほど成長するのかな?


そして、俺は今まで魔力を動かし続けたことでだいぶ魔力が大きくなった。

始めたころの10~13倍ぐらいかな。

魔力が大きくなったことのおかげか知らないけど、俺は今までかぜなどの病気にかかっていない。

衛生観念が終わっているこの村で病気になっていない俺はとても珍しい。

多分、魔力が大きくなると免疫力も上がるんだろうな。


せっかく転生したからには赤ん坊のままでは死にたくはない。

魔力を操作することで健康になれるなら、俺は必死で魔力を動かすよ。

赤ん坊が病気になったらこの村じゃあすぐに死んでしまうからな。

そう思いながら俺は魔力を操作し続ける。



それから、しばらく魔力を動かしていると。

あっ、やばい、尿意が・・・・。

「あぶーー!!、あぶーー!!」


「はーーい、アルスどうしたの?」


自分でトイレできるようにはやく成長したいぜ!!!


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