第6話「除霊が全て終わったら? 君と……」


 ササさんと共同で除霊を続けて半年。遂にこの町から怪異を全て追い出す事が出来た。


「これで最後ですか?」

「はい。お疲れ様でした」

「いえいえ、ウコンがいてくれたからこそ出来た事です」

「ササさんこそ」

「あのー。さんは要りませんよ? この際だから言っておきますが、ササと呼び捨てにしてください」

「じゃあ、ササ」

「はい。ウコン」

 ふたりから笑顔が溢れて来る。

「ササの願いのひとつが叶ったね?」

「ええと、この街の彷徨える霊を残らず全て除霊する事?」

「たった今、叶ったよね?」

「はい」

「後ふたつは? 3っつあるって言ってたでしょ?」

「恥ずかしながら……ですが、乙女の恋をする事。そして、ちゃんと両親に結婚を報告をする事です」

「それは初めて聞いたかな。そうだな……明日は1日付き合ってくれませんか?」

「除霊以外で?」

「除霊は今、終わりましたよ?」

「だったらなんでしょう?」

「乙女の恋のお手伝いをさせてもらえますか?」

「はっ、もちろんです、喜んで! じゃあじゃあ、明日はデートですね?」

 ササに満面のえみが宿って、ひとり妄想が加速する。

「お弁当を作ります。お正月の御節おせちも得意だったんですよ? 父にも美味いと褒められていました」

 自らの巫女の衣裳を顧みて。

「衣裳もこんな死に装束みたいな服ではなくて、素敵なお洋服を披露しますね?」

「LINEしますよ」

 便利だからとオレが勧めたSNSもササはとっくに習得してしまった。

「朝は何時に集合します? 勝手に早く来たりしてはダメですよ?」

「今日は除霊が大変だったでしょう? お昼からで良いですよ」

「ああ、だって寝られないじゃないですか? 生まれて初めてのデートなんですよ?」


 こうしてササとの楽しいデートプランは、別れた後も、LINEへ受け継がれ、どこを回るか? 詳細なプランが出来上がるまで続いた。

 

「明日は寝坊するなよ?」


 そんな冗談まで飛び交った。


「ササ? ササ? ……。寝落ちしたかな?」


 ササからのLINEが切れたのは、朝方、もう太陽が眩しい頃だった。


◇  ◇  ◇


 朝、オレは早めに約束の場所へ向かった。ササがデートで待ち合わせしたい、駅前のシンボルがそれだ。


 約束のお昼になった。


 ササはまだ現れない。


「やっぱり寝坊したのかな?」


 夕方、LINEのメッセージを確認した。既読はまだつかない。


 オレは、後日、ご両親への挨拶の為に調べていた『ササの実家』だと当たりを付けておいた『笹道神社』へ駆け出していた。


 『笹道神社』では、そんな娘はいないと言われた。


「ササ。一体どこへ行ってしまったんだよ?」


 その日のデートは取り止めとなった。

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