第3話「除霊の才能」

 大学卒業後、オレは除霊師になったわけだが……。

 就職先が決まらなかった。除霊師って仕事は無かったんだ。あの時偶然出会ったササさんに聞けば直ぐに解決したのだが、会えず終いだった。


 そこで住宅にタダで入れる【住宅の内見】に目をつけた。


 オレには3つの才能がある。


1. 死霊が見える。

2. 死霊と話せる。

3. 死霊とSNS出来る。


 こんだけあれば除霊師が出来ると勝手に思っていたんだ。

 

 ネットには、悪霊の出る怪しい住宅の特集をしてくれるホームページもある。そこを片っ端から【内見】していった。


 霊さえ見えればどうにかなると本気で思っていた。


 除霊グッズをたくさん持って悪霊に挑んだ。

 ハカタノシオ1キロ。おばあちゃんから貰った数珠。通販で買った十字架。なんとか教の御札など。どれも効かなかった。そこに汚れはあるのに一向に落ちない洗濯物を、前にした心境だ。


 オレには除霊の才能が無かった。

 霊を見つけるのに除霊出来ない状態がしばらく続いた。ならどうなるか? 不動産関係者から【内見禁止】を言い渡された。



◇  ◇  ◇



 仕事を失い。せっかく格安物件を除霊して住むことの出来たアパートも家賃滞納し始めた。


「あーまた公園に住む事になりそうだ」


 そこでやっと除霊師さんの事を思い出した。

 合コンのあの日のことを思い出した。

 

 クラブのセンパイ。

 友達。

 オレ。

 それぞれが女子を連れてオレのアパートで泊まった。

 だから計6人。

 女子のひとりが怪異に取り憑かれた。それを祓った除霊師さん。ん? 7人目?


「計算が合わないな──?」


 取り敢えず友達に連絡する。


「合コンの彼女の話だが? 別れた? ん、どっち? オレが連れてた方? センパイは? え、今も付き合ってる? へー。スゲーな」


 センパイにも連絡を取って確認した。


 センパイは今も彼女と付き合っていて、仲も良いそうだ。彼女は除霊して助けてくれた人がセンパイだと勘違いしているそうだ。上手く行っているなら口出ししないけど……。


 友達は、あの日オレがお持ち帰りした女子と暫く付き合っていた。スケベなことして嫌われ別れたそうだ。ザマアミロだ。

 最後に怪異に取り憑かれた女子。彼女は今も入院中だ。しきりに幽霊を見たと叫び脅えている。


「ところで、彼女の名前だが、笹道笹枝と言うのじやないだろうな?」

「違うぞ」

 センパイも違うと言っていた。

 謎だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る