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え、ちょっと? と思わなかったこともないけど、ありがとうごめんなさい、という小さな早口が聞こえて、正直、ほ、とした。
怖かったもんね。仕方ないよ。
男たちは女子高生を追うこともなく、新しく見つけた私に矛先を変えた。
「あーあ。せっかく一緒に遊ぼうと思ったのに。まあいいや、代わりにあんたが相手してくれるんだろ?」
「あんた地味な恰好してるけど、よく見りゃかわいいじゃん。スタイルいいねえ。あれ? その眼鏡、伊達?」
私は、散らばった荷物をあわてて拾ってカバンにしまうと、男たちに背を向けた。
「私も帰ります」
「はあ? ふざけんなよ。人の邪魔しといて、そのまま帰ろうっつーのかよ。責任とれよ」
私の前に男の一人が立つ。距離をとろうとしたら、もう一人の男が私の背後に立った。
「……どいてください」
「ちょっと付き合ってくれりゃいいんだよ。おごってやるからさ」
「好きなだけ、飲ませてやるぜ。たっぷりとな」
そう言って、二人でにやにやと笑う。私のことを上から下まで舐めまわすように見ている視線が気持ち悪い。嫌悪感に、ぞわりと鳥肌がたった。
さっきと同様、周りは誰も足を止めない。めんどうなことには誰だって関わりたくはない。
誰も、助けてはくれない。
私は、バッグをにぎりしめる。
「どいてください。警察を呼びますよ」
冷静に言っても、男たちは馬鹿にしたように笑うだけだ。
「大袈裟だなあ。ただ遊ぼうって言ってるだけじゃん」
「そうそう。いい店知ってんだ。さ、行こうぜ」
男の一人が私の腕をつかんだ。ぎょっとして叫ぶ。
「行きません! どいてって……!」
「俺のに、なんか用?」
その時、いきなり別の声がして男の腕が離れた。見れば、薄いサングラスにマスクで顔のわからない男が、私の隣にいた男の腕を振り払っている。背が高い。
「何がお前のだって?」
「その子、俺のなんだけど」
言いながらサングラスを外して、男たちを睨みつける。
私と同じ歳くらいの若い男性だった。長めの前髪の間から、ぎ、と睨む目は、私ですら背筋の寒くなる迫力があった。男たちは予想外の男の登場に出鼻をくじかれたのか、ぶつぶつ文句を言いながら離れていった。
(助かった……)
足の力が抜けてよろけそうになるのを、なんとかふんばった。私は大きく息を吐くと、その人を見上げる。
「あの、ありがとうござ……」
「バカか? あんたは」
またサングラスをかけながら、その男はいきなり言った。
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