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 資料室は、別棟の地下にある。行って帰ってくるだけでも結構時間がかかるので、高塚さんは行きたがらなかったのだろう。

 ダイエットと思えばちょうどいい距離よね。急いで行って来よう。


「水無瀬さん、よろしくね。あ、ちょっと待って」

 課長は言いながら、ポケットからチョコを取り出した。

「さっき打ち合わせしている時にもらったんだ。あげるよ」

「いいんですか? ありがとうございます」

 ころんと二つ手のひらに転がされたチョコは、リンツ。さすが部長のとこはいいお菓子があるわ。


「チョコ、好きだったろ?」

「え、はい。好きなんです」

 確かに好きだけど、私、そんなこと課長に言ったことあったかな? チョコが好きだなんて、子供っぽいと思われそう。

 焦る私の横から、高塚さんが口をはさんできた。


「わあ、リンドールですね! 私も好きなんです、チョコレート」

「もらってきたのはそれしかないんだ。じゃあ、水無瀬さん、よろしく」

 そう言って課長は席に戻っていった。ふてくされた顔になった高塚さんを置いて、私もそそくさとフロアをでた。


  ☆


「そういえばこないだ聞いたんだけどさ」

 別の課に行くと言って留美が一緒にフロアを出てきた。

「何?」

「あんた、秘書課に異動になるの?」

「私? 聞いてないけど」

 異動の希望も出していないし。


「秘書課の課長があんたのこと、ぜひうちに欲しいって言ってたって聞いたわよ?」

「えええ? 知らないわよ」

 秘書課と言えば、エリートの集まる課で優秀な人ばかりいるところだ。


 私は、さっきもらったリンドールを一個、留美に渡した。ありがと、と笑顔になって留美が受け取る。

「んー、来年度に大規模な人事異動があるって噂じゃん? だから、そんな話になったのかな。でも、華だったら、仕事できるしその可能性もあるわよね。そんな伊達眼鏡しなくたって、十分頼りがいがあると思うけどな」

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