第21話 大躍進

Side:マニーマイン

 大躍進が止まらない。

 今日はAランクでもSランクに近いと言われているグリフォン討伐よ。


「とにかく魔道具を撃ちまくれ」

「おう」

「はい」

「了解」

「ですね」


 グリフォンに火球を撃つ。

 なかなか当たらない。

 さすがに20個ほどでは足りないみたい。


 グリフォンは羽を打ち返してきた。

 あれに当たると大変なのよ。

 鎧を貫通した記録もあるぐらい。

 魔力がこもっているの。

 ほとんど魔法ね。

 必死で避ける。


 魔道具は1回充填すると1回の使用しか出来ない。

 だから、数を撃つにはかなりの数の魔道具が必要。


 クールエルが水球の魔道具を撃ち始めた。

 火球の魔道具がもう撃てないから仕方ないけど。

 グリフォンは羽が濡れるのを嫌った。

 グリフォンが焦れているのが分かる。


 私達に時間を与えたのが間違いね。

 私達は20個はある火球の魔道具の充填を終えた。


「撃ちまくれ」


 楽勝ね。

 あっ、魔道具が壊れた。

 遠くに捨てないと。

 持っていると間違って使ってしまうから。


 何度も攻撃。

 グリフォンは火だるまになって落ちた。

 落ちればもうこっちのものよ。


「鳥野郎、死ね。【身体強化】【鋭刃】」

「【俊足】からの【斬撃】止めは【火炎剣】」

「うらぁ【盾撃】」

「【火炎魔法】、火炎竜巻」

「【回復】、疲労回復。みんな頑張って」


 地上に落ちたグリフォンはあっけなく死んだ。

 それほど防御力はないから。

 所詮鳥ということね。


 亜空間収納の魔道具にグリフォンの死骸を収納する。


「グリフォンの羽で飾りを作ろうぜ」

「お揃いのが良いわね」

「私のは赤く染めて」

「なら私は青かな」

「白く脱色が良いです」

「色なんか何でも良いぜ」


 モールス様の噂を聞いた。

 殲滅とパーティを組んでエルダードラゴンを倒したらしい。

 ただ、モールス様の顔は誰も知らないって不思議よね。

 一瞬でSランクに上り詰めるその実力に敬意しか出て来ない。

 嫉妬など出来ない。

 きっと、モールス様はSSSランクに登り上がるのね。


 グリフォンの羽の飾りをモールス様に贈ろうかと思ったけどやめた。

 だってエルダードラゴンの素材と比べたら見劣りするに違いない。

 それに、飾りは実用品じゃない。

 私だったら、そんなの邪魔、要らないというに決まっている。


 核石を贈ろうかと思って手紙に書いたけど要らないと返事が返ってきた。

 きっと、モールス様は1級品しか求めてないような気がする。

 モールス様に相応しい素材が手に入ったら贈りましょう。


Side:シナグル・シングルキー


「よう来たぜ」


 ソルが遊びにきた。


「それは?」


 ソルは木の皮に包まれた物を持っていた。

 俺は何なのか尋ねた。


「オーク肉だよ。宝石箱のお礼だ。一緒に食おうぜ」


 ちょうど良い飯にするか。


「師匠、今から肉焼くんで、飯にするよ」

「おう」


「ちぇ、二人だけだと思ったのに」

「悪いな。師匠って飯を用意しないと平気で抜くからさ」

「まあいいか。飯はみんなで食う方が美味い」

「だよな」


 焼き肉とパンの食事は美味かった。

 良い部位の肉何だろう。


「へえ、ソルの両親は2年前に亡くなったのか」

「おう」

「大変だったな」

「まあな、ちび共の面倒見るのが大変だったぜ。冒険者の方は幸いにも才能があったし」

「何か欲しい物はない」

「色々とあるぜ。だが、まず一番にあんたが欲しい」

「えっ」

「冗談だよ。本気にしたか」


 専属の魔道具職人として欲しいってことだよな。


「冗談は別にして、まだ誰かの物になる気はない」

「まあ、お貴族様だからな。仕方ない」


「それで欲しいのは?」

「ぐっすり眠れるのが良いな。遮音の魔道具は問題ないけどよ。良く眠れない夜ってのがあるだろう」

「まあね。安眠魔道具か。案外と良いかもね」


 うん、まずは温度と湿度だな。

 これが快適なだけでだいぶ違う。


 マニーマインにも作って送ってやろう。

 野営では遮音はないな。

 音が聞こえないと命取りだ。

 温度と湿度から始めるのが良いだろう。


 ええと。


「聞いてる?」

「悪い。聞いてなかった」

「シナグル、お前も俺のことを笑えないな。いま仕事のことを考えてただろう」

「ええ」


「安眠魔道具、良いのができたら高く買うぜ」

「うん、その時は、友人価格にしておくよ」

「ありがとな。仕事の邪魔すると悪いからそろそろ行くぜ」

「オーク肉ごちそう様」

「ああ、また持って来る」


 ええと、温度と湿度だったな。

 『Keep temperature and humidity constant』で良いか。

 歌は『ラーララー♪ラ♪ラ♪ララーラーラ♪、ラー♪ラ♪ラーラー♪ララーラーラ♪ラ♪ララーラ♪ララー♪ラー♪ラララー♪ララーラ♪ラ♪、ララー♪ラーラ♪ラーララ♪、ララララ♪ラララー♪ラーラー♪ララ♪ラーララ♪ララ♪ラー♪ラーララーラー♪、ラーララーラ♪ラーラーラー♪ラーラ♪ラララ♪ラー♪ララー♪ラーラ♪ラー♪』だな。

 これを作るのは大変だ。

 きっとタイプミスするな。


 まあ何度か挑戦すればできるだろう。

 力作の温度湿度を保つ魔道具ができ上がった。


 マニーマインに送る。

 野営だと殺虫とか必要だな。

 ソルもそういうのがあった方が良く眠れるに違いない。


 『insecticide』かな。

 歌は『ララ♪ラーラ♪ラララ♪ラ♪ラーララーラ♪ラー♪ララ♪ラーララーラ♪ララ♪ラーララ♪ラ♪』だな。

 こっちは楽にできそうだ。


 また何か考えついたら作ろう。

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