仕事をしたニート。

おでこに貼った冷えピタが剥がれて、手に落ちてきて目が冷めた。


「ん…あえ?」


正直何をしたか、全く覚えていない。

たしか…キラといっしょに小説を書きまくった気がする。


「くぅ…んー…。」


俺の膝で寝息が聞こえる。


「あ、おはよ。」

「おはよ…って、は?」


なんでキラが俺の膝に…?

いや、その前に小説の出来栄え見ないと…。

そう思い、パソコンを立ち上げる。


「起きてすぐにパソコン…目が悪くなってしまうのぉ…気をつけなさいなー。」


キラの二重人格…ホタルが出てきて、お母さんみたいなことを言う。


「はいはい…わかったわかった。」


適当にあしらい、小説ページに行く。


ホタルが出てくるのって決まっているのかな…?

まぁ、そんな事を考えていてもしょうがない。あとで本人に聞けばいいや。


「うお…」


思わず声を出してしまうほど、完璧な小説に仕上がっていた。

すごく新しい小説になって帰ってきた。


話の内容は、いつも一人ぼっちの少女が、人間になることを目指して頑張る機械たちを嘲笑いながらも、心を揺さぶりまくられる。という話だ。


最初は、長編小説みたいな感じだったが、リメイクされたのは、短編小説で、主人公が機械を妬み、心を揺さぶりまくられ、プライドがそれを許さない。

この一コマを綺麗に一話にまとめて、気軽に読めるものとなっていた。


「ホタル?」


後ろに居るであろうホタルに話しかける。


「今はキラだよー。」

「すまん。」

「声かけなかったオレも悪いから大丈夫。で、何?」

「これすげーな!?」

「えぇ?急になに…?」


若干引いた様子でパソコンを覗き込む。


「あー。いや、元が良かっただけだよ!」


サラッと褒めてくれる。普通に嬉しい。


「そうか?ありがとう。これ、再共有してもいいか?」

「そりゃもちろん!帆風くんの役に立てて嬉しい!」


キラキラとした笑顔を俺に向けてくる。


ピーンポーン

ふんわり、いちゃいちゃした雰囲気に似つかわしくない音が家中に響き渡る。


「あ、うるふが来ること忘れてた。」

「朝ご飯食べに来るんだっけ?朝ご飯用意した?」


なんにも準備していない。当たり前だ。

徹夜で作業して、ご飯を作る時間がなかった。


「はぁ…今日はお引き取りを願おうかな…。」


ガチャッ

ドアを開けて、満面の笑みを貼り付けたうるふに、申し訳無さそうに言う。


「すまん。うるふ。今日は色々あって朝ご飯を作れていないんだ…。」

「ありゃま。それって歩風とキラちゃんの分も?」

「まぁな。なんなら夜ご飯も食べていない。」


すると、少しだけ目を見開き、信じられない。という様子で言葉を紡ぐ。


「大変だねぇ。よかったら、僕が近くにあるカフェで朝食セット2個買ってこようか?」

「お、それはめちゃくちゃ助かる。代金は後で払うわ。」

「いや、いいよ。明日、暇?」

「それ本気で聞いているのか?俺が忙しいわけ無いだろ。」


こいつは俺をからかっているのか、本気なのか。

真意が全くわからない。


「あははっ。歩風だもんねー忙しいわけないもんねー?」


煽るように言うと、目を開き、

「んじゃ、明日、1日中歩風の家に居るわ。拒否権なしな。」

と、低い声で言った。


「んー。了解。」


OKを出すと、うるふはにこっと笑い、


「じゃ、朝食セット買ってるねー!キラちゃんによろしく!」


そう言い、手を振ってカフェに行った。

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