本当にギャル?

「ふぅ。今日は良い日だー!」


キラが伸びをしながらそう言う。


逆に俺は朝から嫌な気分だ。救われない気持ちを胸に、うるふから貰った5000円札束をどこに保管するかを考える。


銀行でもいいのだが、もう外に出かける気力がない。ひとまず自分の机の引き出しの中にでも入れておこう。

飯を食べ終わったうるふは満足そうに帰ってしまった。


「そういえばさ、」


何かを思い出したようにキラは俺を見ながら言葉を紡ぐ。


「うるふくんのことについてなにか言おうとしたよね?」


あぁ…たしかに言おうとしたな。ただ…


「まぁ、たしかに言おうとしたが…このことに関してはいずれか見えるだろう。」

「えぇ〜ケチー」


ぽかぽかと俺の肩を叩く。

…うん。普通に気持ちい。


「…あ、気持ちよさそうだねぇ。」

「俺、そんなに顔に出てたか?」

「うん。なんか、ほわーんって顔してた。」


うん。語彙力どこ行ったんだ?こいつ。

まぁ、分かるからいいんだが。


「だから…」


…嫌な予感がする。このまま、この調子で肩を叩いてくれたらいいんだが…


「歩風くんにダメージを与えるために!これの3倍くらいの強さで叩いてやるー!」


予想通りだったー!めっちゃ痛いー!


「いってぇ!?あ、ちょ、ま、マジでそこは…痛い痛い痛い!!」


はぁ…はぁ…こんなに忙しい朝は初めてだ…。


「フフーン日頃の恨みを晴らせた!満足!」


日頃の恨みって…昨日会ったばかりの人に日頃も恨みもないだろ。

しかもこっちは宿恩人なのに。

…ってなんだ。宿恩人って。

1人ツッコミに夢中になっている間、キラは皿を片付けてしまっていた。

意外とやることはやるんだな。


ふと、キラの服装を見た。

昨日と同じどこかの高校の制服だ。


「…キラ、制服を着ているが、学校はどうした?」

「え?学校なんて楽しくないところ、行かないよ。」


さも当たり前のように言う。


「あ、そう。」


俺はキラの親でもなんでもないので、無理やりにでも学校に行かせようとはしない。


「…なんも言わないんだね。前はめちゃくちゃ言ってたのに。」

「は?前って…昨日会ったばかりだぞ。」


キラは、一瞬だけ俺の顔を見て、


「…ごめん。人違いだったかも。」


俺は妙に悲しい声をしたキラに違和感を抱いたが、昨日あった人間だ。

たった一晩過ごした相手のことを詮索するのはよくない。

そう思った俺は、結局この件を問い詰めることはせず、無言のひとときが訪れた。


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