居候ギャル。
ひとまず家に連れて帰った。
名前も、こうなった経緯すら知らずに連れて帰った。
…らしくないな。
「わー!着いたー!部屋小さー」
「うるせぇ。」
一人暮らし用の小さなアパートだ。そりゃあ2人で寝泊まりするには小さいだろう。
「ねぇねぇ。お腹すいた」
こいつ…っ
半強制的に泊まらせるようにお願いして、しかも図々しく飯を要求する。遠慮というものを知らんのか。
…まぁ。いいや。俺も腹減ったし。
「はぁ…。わかったよ。俺も腹減ったし。パスタでいいか?」
「えー。煮物がいいー」
「煮物が好きなのか?」
「うん。大好きだよ」
渋い。
ギャルが好きなもののイメージじゃないな…。煮物って。
って…飯をねだっておまけに自分が好きなものを要求。どうなってんだ…。
「…野菜ない。肉も。」
「…なんもないじゃん。声掛ける相手間違えたかも。」
後悔の色を見せ、そっぽを向くギャル。
「あ」
何かを思い出したのか、ギャルは急に俺の方を向く。
「なんだ?」
「名前…聞いてなかったや」
今更だな。
「俺の名前は彩水歩風。これでいいか?」
少し考える素振りを見せ、薄い笑みを見せるギャル。
「歩風…ほかぜねぇ…。いい名前じゃん。名付けた人、センスあるよ!」
にっこり笑顔で俺の方を向く。
悪い気はしない。
「オレの名前は
「悪楽…?それ、本名か?」
「いや?本名なわけ無いでしょ?あ、あくらって…本名だったら怖いわ…笑」
くすくすと笑いながら、「あくら…」と、繰り返す。
…バカにされてるな。こりゃ。
「もういい。飯作る。パスタでいいよな?」
「え、煮物…」
「パスタでいいよな?」
「…今度煮物作ってくれる?」
「いつか作ってやるよ」
どこまで長居させる気はない。
煮物を作れるかどうかは自分のモチベ次第だな。
よっしゃ。パスタ作るぞー。
鍋に水を入れて、コンロの上に乗せる。
ほうれん草を袋から取り出し、半分に切る。残りは袋の中に入れて、野菜室に入れる。
ついでにベーコンを何枚か取り出す。
ほうれん草は食べやすい大きさに切り、ベーコンは2cmくらい切る。
「ほー手際いいねぇー」
テレビを見ながらオレの方をチラチラ見ながらコメントを付ける。うるさい。
次はしめじ。こちらも袋から半分取り出し、ほぐす。
「キラー。にんにくっているかー?」
「いらなーい」
よし。にんにくはいらない…と。
沸騰した鍋の中に、スパゲティ麺を入れる。
5分ほど待って、スパゲティをお湯から上げて、水分を切る。
フライパンの中にバターを入れて、先ほど切った食材を入れる。
しっかり炒めたら、スパゲティと、茹で汁、コンソメと醤油を入れて混ぜる。
最後にバターを加えて混ぜたら完成!!
「おらよ。パスタだ。」
「うおー!!すげー!!ダイエット中の体には少々つらいな…笑」
ダイエット中だったのか。だったらそういえばよかったのに。めっちゃバター入れちゃったじゃん。
「…バター。いっぱい入れたけど…大丈夫か…?」
「うん。大丈夫。チートデイだよ。チートデイ!」
大丈夫かな…。
「「いただきます!」」
もぐもぐと食べる。我ながら上出来だ。
「はぁ!!」
奇声を上げるキラ。
「え、なに。どうした?」
「美味しい…!!」
目をキラキラと輝かせて、食べる。すごく食べる。めっちゃ食べる。
「おかわりある!?」
「え、あぁ。少しある」
「全部ちょうだい!」
明日のお昼に食べようと取っておいたものをすべてお皿に入れて爆食する。
「あーお腹いっぱい!今日はいい日だー!」
満面の笑みを見せ、ドサッと後ろに倒れ込む。
「なら良かった。」
ほっと胸をなでおろし、キラの方を見る。
目をつぶっている。
ゆっくりと目を開き、
「はて…今、何を食べたかのぅ…?」
そう言った。
「おい、キラ?今、なんて…」
「キラ…?わしの名前はホタルじゃよ?」
なんだ…口調が急に…
こいつ…まさか…
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