引きこもりとちょっとえっちぃギャルが織り成す、同居ラブコメ的何か。
美澪久瑠
序章
捨てギャル。
春、それは出会いと別れの季節。
…と、言われているが、俺は悲しい別れなんて体験したことない。
むしろ嬉しい別れしかない。黒い?しょうがないだろう。
俺は人嫌いなんだから。
昔からどうにも馬が合わない人としか関わらない。
つまり、人を見定める目がなく、運に見放されている。ということだ。
唯一仲良くしている友達は近くに住んでいて、孤独だと感じたことはない。
よって、俺は別れなんて経験したことはない!!
そんな文章をパソコンに打ち込んだ。
自分が思っていることを文章にするのは最高だ。
ちょっと休憩にしよう。パソコンの画面を見続けるのも目に悪いからな。
ちょっと外の空気にあたってこよう。
俺が椅子から立った時、デスクの上に置いてあるプレートが落ちた。
と書かれた5×7の厚さ3mmカードだ。
彩水歩風。俺の名前だ。
母親がつけてくれた大切な名前だ。
「っと…これを落としたら生きていけないからな。大切にしねーとな…。」
このプレートは家の鍵兼ポイントカードのようなものだ。
家から半径3km以内だったらポイントが貯められ、そのポイントでまた商品を買えることができるというものだ。
このカードはうちの自治体だけが行っていて、人口を減らさないようにする政策だ。
シャットダウンしているパソコンの画面に反射して俺の顔が見える。
黒髪ボサボサ、今でも閉じかけてしまいそうな瞼。その中には無気力な黒い瞳がある。決してイケメンではなく、間抜けな顔に思わず笑ってしまいそうだ。
白いシャツはヨレヨレで、外に出るような服装ではないのは明らかだ。
ここまで説明すると分かるが、俺は引きこもりだ。
髪の毛とかちゃんとすれば垢抜けるのだろうが、俺にはそんな意志は甚だないので身なりに気を使うことはない。
ただ…コンビニに行くときに着る服がないのは困る。
買い物に行きたい→着る服がない→金がない→服が買えない
の、悪循環に陥っている。
ま、外の空気にあたりに行くだけだから気にしなくても…
いや、腹減った。
先にご飯を食べてから行くとするか。
「ご飯〜ご飯〜!」
己の欲望を満たすため、ウッキウキで夜ご飯を作るためにキッチンへ向かう。
昔から料理をしていたため、料理の腕には自身がある。
冷蔵庫の中をパカリとあけ、ご飯を作ろうとする。が…
「は?」
冷蔵庫の中は空っぽだ。
この前買い物に行ったはず…
カレンダーを見ると、最後に買い物に行ったのは3週間前。
…買いに行くしかないのか…。
よそ行きの少しヨレヨレのTシャツは洗濯中だ。
しかもついさっき洗い始めたばっかりなので、洗濯が終わるのは少しかかってしまう。
なにやってんだ…前の俺…。
後悔しても遅い。
このままじゃ腹が減って倒れる。
よし、行こう。
最寄りのスーパーに行く。
5分ほど歩いてついたスーパーは、まぁまぁ広く、大抵のものは手に入れることができる。
柵には犬がリードに繋がれてこちらを見ている。飼い主は…多分スーパーの中か。
捨て犬という単語が頭をよぎったが、愛されているのであろう。毛並みがとても綺麗で、人懐っこそうだ。
そんなことはどうでもいい。さっさと買い物を済ませて家に帰ろう。
パスタ麺を一袋、ほうれん草をお買い得だったので、二袋。そして、しめじを一袋、
ベーコンを一袋。ついでにパンや卵もかごの中にいれる。
その他もろもろ必要なものをかごの中にinする。
レジへ向かい、会計を済ませる。周りの目なんて気にしないもん!き、気にしない…から…ホントだよ…ウン。
外に出ると、さっきの犬は居なくなっていた。
捨て犬じゃなくてよかったね。うんうん。
ただ…そのかわり、犬が居た場所に、ギャルが居た。
明るい茶髪を右側にまとめ、ネイルバチバチ。世間一般的に言う「清楚系ギャル」ってやつだ。
服装は制服。
しかし、近所の学校の生徒ではないらしい。
見た目的に高校生か?
そんなことを考えていたら、いつの間にか深い青色をした瞳に囚われていた。
助けを求めるようにこちらを見ている。
思わず声をかけそうになるが、面倒事に首を突っ込みたくない。
そんな考えが頭をよぎった。
こんな感じで生きてきた。
面倒ごとから目を背けるばかりの。
…だから人からの信頼がなかったんだろうな。
嫌な考えを頭から消し、ギャルを無視して家に帰ろうとする。
「うおっ!?」
足を誰かに引っ張られた。って…誰か、じゃなくて、絶対にあのギャルだよな。
「ねぇ。」
低くも高くもない、よく通る声が俺を引き止める。
「なんだよ…。」
極力嫌そうな顔をして返事をする。
「オレを見てなにか思うことないの?」
「は?」
このギャル、一人称「オレ」なのか?
見た目に反してだいぶ奇抜な一人称だ。
「だーかーらー!オレを見てなにか思うことないのー?可愛そうだなーとか、何しているんだろーとか…。」
「あぁ…思うこと…面倒事に首を突っ込みたくないなーって思った。これで答えになったか?じゃあな。」
さっさと帰ろう。腹減った。
ぐいっと、ヨレヨレTシャツの袖を引っ張られた。
「待って、オレ、帰るところないの。だからさ…」
帰るところがないって…しかも、この後の展開がとても見える。
どうせ…家にあなたの家に泊まらせてーみたいなことを言うのだろう。
「おにーさんの家に泊まらせてくれない?」
あたってほしくない予想は見事に的中。
残念。
「は?無理だわ。第一、なんで俺なんだよ。」
「だって…今の時間帯、オレを泊めてくれる人が居なくて…もう適当に声をかけていこう!って思って…」
つまり、適当。特に理由もないのか。なんか悲しい。
「はぁ…もし俺がここで、お前を家に泊まらせることを拒否ったらどうするつもりだ?」
「どうするもこうするも、野宿するだけだよ?」
つえー…ギャル、強すぎだろ…。
いくら春だからって、可愛いギャルが野宿なんて夢が壊される。
「流石に野宿はダメだ。必要最低限のものしかお前に貸すことはできないが、それでもいいなら家に来い。」
「え!?いいの!?」
キラキラとした瞳で俺を見つめる。
ここでやっぱりダメ。は人間としての尊厳を失いかねない。
困っている人には手を差し伸べてしまう。
悲しいかな。これがお人好しなのだ。
「あぁ。本当に必要最低限だがな。」
「マジで感謝!行く!行きます!!!」
満面の笑みを浮かべ、俺についてくる。
どうしてギャルが捨てられているのかが不明だ。
一体誰が捨てた?
親は?
しかも、まだ学生のようだし、通行人に助けを求めるってことは、頼れる友人も居ないってことか。
疑問符が頭の中に生まれてくるが、俺の隣で今にもスキップで俺の前を行こうとするギャルの姿を見て思ったことは…
不気味なギャルだ。
ただ、それだけ。
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