第2話:阿須迦童子(あすかどうじ)
蔵の中の仏壇の仏様の後ろにあった古い布に包まれた何か?
その何かの正体が知りたくて、真夜中に時乃は蔵の中に入った。
仏様を傷つけないようそっと移動して布に包まれた物を探した。
それは今でも、薄く光っていた。
時乃はその物を手にとって、全体を触ってみた。
布はすごく古もので、朽ちかけた部分もあったが中の物にぴったり
へばりついているようで、そのままでは剥がれそうになかった。
案外好奇心が旺盛な時乃はどうしても布の中身を確かめたくて
布に包まれた物を蔵から持ち出して、勝手口の横の炊事場で洗ってみる
ことにした。
水を含んだ布は少しづつ剥がれて、中から、異様な形をした硬い
物が現れた。
どうやら金属の細工された物のようだったので形をよく触って想像してみた。
この形どこかで・・・これって仏像なんかが手に持ってる法具の一種だ。
その時はっ時乃にはその法具の名前はわからなかったが、それは実は
用いられる法具だった。
それは何もなければ普通の法具だったが、時乃は布を洗い流した時
布に下に貼ってあった護符まで洗い落としてしまった。
護符って言うことは、その金剛杵には何かが封印されていたことになる。
時乃はなにも知らずにしたこと。
でも、それから何かが起こるわけでもなく、それがただの法具だと知って、
時乃は少し落胆した。
だからそのまま元の場所に置いておこうと思って蔵の中に戻った。
そして仏様の後ろに戻そうとした時だった。
持っていた金剛杵が光はじめたのだ。
それが徐々に光を増していった。
目に見えない時乃にもその眩しさが伝わってきた。
鳥肌が立つくらいの恐ろしいばかりのオーラに時乃は金剛杵を床に置いて
目を伏せた。
しばらくすると光は収まって何事もまかったように静かになった。
「なんだったの?・・今の光は?」
「おい・・・俺を封印から解いたのはお前か?」
時乃はその声に驚いて声のした方を見た。
なんとなく、じゃなく、さっき感じた光と同じくらいのオーラを声がした
ほうから感じられた。
「ここにはおまえしかいないんだから、俺を解き放ったのはおまえだろ?」
なにか異様なものの気配と獣の匂いがした。
「あの・・・あたたは誰ですか?・・・なにが起きたんでしょう」
「俺は見てのとおり鬼だ」
「鬼?・・・鬼ってあの鬼なんですか?・・・」
「おまえ、俺を見ても驚かないのか?」
「たいがいのやつは俺を見たらビビって、逃げ出すぞ」
「私、目が見えないんです・・・あたなを感じることはできますけど
肉眼では見えません・・・オーラで感じることはできます」
「おまえ、目が見えないのか?」
「それじゃ〜生活に支障を来すだろうが・・・」
「大丈夫です、人の補助がなくても自分のことは自分でできますから」
「そうか・・・まあ、見えねえほうがいいかもな」
「あの私を食べちゃうんですか」
「食べるかよ」
「よかった食べられちゃうのかと思った」
「人間なんか食うか」
「じゃ〜私は間違って封印から鬼を解き放っちゃったの?」
「そうだよ・・・・それだよ」
「間違ったかどうかは知らねえが、おまえはそう言う運命を背負った女だって
ことだろうよ」
「人は定められた運命からは逆らえないもんさ」
「どうしよう」
「もうどうにもならねえよ・・・俺はまたこの世で生きていくだけのことさ」
「で、あなた、なんて方なんですか?」
「俺か?・・・俺は
「しゅてんどうじ?」
「あすか?」
「そうだ、それが俺の名前・・・正式には「阿須迦童子(あすかどうじ)」って言う」
「以後よろしくな・・・え〜と」
「
「そうか・・・よろしくな時乃」
「さ〜てと・・・このままじゃいけねよな・・・」
「まあ、なんとかするか・・・」
「そのままじゃ、なにかと支障をきたすだろうからな・・・鬼のままでなんか
いたら、マズいことになるな」
さて、なんで自分が封印なんかされることになったか、阿須迦はその訳を封印を
解いた時乃に説明しはじめた。
「ただ封印を解いておいて、なにも知らないでは、おまえも納得できんだろ?
それに、おまえにはことの詳細を知る権利があるからな」
つづく。
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