天翔ける鬼皇子と盲目の少女。

猫野 尻尾

第1話:古い布に包まれた物。

私の名前は・・・から始まります。

名前は「坂田 時乃さかた ときの」って言います・・・女子校に入学したばかりの一年生。

住まいは京都の大江山のもふもとにある「坂田」の本家。

私はその坂田家の次女。


私は生まれながらにして目が不自由だった。

だけど、私には不思議な能力、神通力があって目が見えないぶん五感が人より

すぐれていた。

目が見る人以上に周りの状況を感じ取ることができた。

だから誰かのケアが必要ってことはなかった。


私の家は昔はそれなりの富豪だったらしい。

今は衰退してしまってるけど坂田家と言えばその昔、お殿様の命で酒呑童子

って鬼を倒した坂田 公時「金太郎」の末裔だって聞いたことがある。


遠い昔の話だし・・・本当にあった話かどうか信憑生にかける。

だいいち鬼なんているはずないもん。

人が想像した伝説の生き物でしょ?


そしてこの話はここからはじまる。


私の家から10キロほど降りたところに父の弟が一人で暮らしていた分家がある。

でも叔父は病気で近年、天国に召された。

だから誰も住んでない相続者のいない古ぼけた屋敷が残っているだけ。


いずれは取り壊しになるんだろうけど・・・それでも叔父さんが残した物は

一応、貴重なものもあるので整理しようかってことになった。

使えるものは残して、使えないものは廃棄処分にする。


そこでお母さんとお姉ちゃん、で私・・・分家の片付けに駆り出された。

なんせ古い屋敷だから整理整頓、片付けにはずいぶん時間がかかりそうだった。


最終的に開けた試しのなさそうな蔵の片付けだけが残った。


でも蔵の鍵なんかどこにあるのか分からない・・・。

そこで合鍵屋さんを読んで蔵の鍵を開けてもらった。


叔父は案外、こまめだったらしく蔵の中にはいろんな物が整理されていて、

掛け軸やツボなど骨董品がたくさんあったらしい。

これだけあれば、いくつかはお宝があるかもしれないと母と姉が相談していた。

蔵の中の物のものは整理して貴重そうな品物だけきちんと棚に並べ直した。


目の見えない私だけど、その情景が手に取るように感じられた。

目の見える人には理解できない感覚。


そして蔵の奥には小ぶりの仏壇があって高さ30センチくらいに仏様が祀って

あり叔父は時々仏様を拝みに来てたようだ。


「時乃。もうそろそろ上がりましょう・・・」


母がそう言った。


「大方片付いたから・・・あとはまた明日にしようよ」

「私、使れたわ・・・先に行くわね」


姉と母は私一人蔵の中に残して、母屋にさっさと引き上げて行った。


叔父は信仰深かったのね・・・。

私にしか感じられないオーラがその仏様から出ていた。

私は凝った彫りの仏様を、しっかり確かめたくて仏様に近ずいた。


「穏やかなお顔・・・優しさと思いやりのオーラが漂ってる」


別に仏様を触ったわけじゃない・・・なのに今までずっと立っていたはずの

仏様が私の前に倒れてきた。

私はびっくりして倒れそうになった仏様を受け止めて元の場所に戻そうとした。


そしたら仏様が立っていた後ろに、立てかけてあるった何かが光って見えた。

それに触ってみると古ぼけた布に包まれてるようだった。


「なんだろう?・・・」

「と好奇心にかられたけど、訳の分からないものは触らないほうがいいわよね」


私は仏様だけ元に戻して、蔵を出た。

でも、その夜・・・あの布に包まれたものの正体が気になって眠れなかった。

だから、夜中に蔵に戻って布に包まれたものを確かめてみることにした。


つづく。

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